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  3. 街場から商業施設と多様に出店、事業拡大の種がそろう

一つ飲食店はみな街中からスタートする。それが飲食店街に出店すると、その街に仲間入りしたような印象をもたらす。そして、商業施設のレストラン街に出店すると「選ばれた」というイメージをもたらし、街中で人気を博していたことを知る人は「ついにここまで来たか」と感じる。商業施設の中に出店しないことを主義としている店もあるが、一般的に街中の繁盛店が商業施設に出店するとこのようなイメージを抱かれるのではないだろうか。

 

「なかめのてっぺん」をメインの屋号とする株式会社MUGEN(本社/東京都目黒区、代表/内山正宏)は、同社が展開する16店舗のうち6店舗が商業施設内で営業している。

代表の内山正宏氏は、居酒屋の独立道場として多くの経営者を輩出している「てっぺん」の創業メンバーで、その方針通りに独立第1号となった人物だ。2006年4月、東京・中目黒に創業の店「なかめのてっぺん」をオープンした。

 

同社が商業施設内に初めて出店したのは2012年3月、丸の内永楽ビルの地下レストラン街「iiyo!!」である。きっかけは日ごろ内山氏がHUGE代表の新川義弘氏をリスペクトしていて、同社が2007年4月東京駅前の新丸ビル内に「RIGORETTO WINE AND BAR」をオープンしたことに触発されたことだ。

商業施設の中で「絶対に勝てる」と確信

その後、MUGENに丸ビルから出店のオファーがあったことから出店意欲が高まり、コンペの最終2店に残ることができた。しかしながら、ここでは出店することができなかった。その後、「iiyo!!」の物件がドタキャンとなったということで、デベロッパーから再び出店のオファーがあった。条件は「2カ月で内装をつくることができるのなら……」。そこでエネルギーを集中し速攻で出店した。

 

内山氏は商業施設出店に着眼した背景をこう語る。

 

「今から7年前の当時、大手のデベロッパーは『個店を入れよう』という発想よりは、

商業施設出店に慣れているチェーンに出店を依頼していました。そこで、どこの商業施設を見ても飲食店は似たような顔ぶれとなり、従業員は『お客さんが来るのは当たり前』という感覚で接していて、『ラストオーダーが終わった』とか『予約で席がいっぱいで』ということを平気で言って、簡単にお客さまを帰してしまう」

 

「僕らは一組一組のお客さまを大切にして営業をしてきた。ラストオーダーが終わってからお客さまがいらしたら、『すみませんが、油物はできないのですが、他のものだったらできますのでいかがですか?』という感じで頑張ってきた。そこで、僕たちは商業施設の中で『絶対に勝てる』と思うようになり、『商業施設の中に必要とされている』と確信するようになった」

 

出店場所を丸の内に定めるようになったのは、東京駅の近くにあり、千葉、埼玉、神奈川に帰る人々が立ち寄る場所であるからだ。ここに仲間が集まれば、ここで食事をすることになる。そこに元気な店があれば「自分の地元でもこんな店が欲しいな」と思うはずだと考えた。つまり、丸の内に出店することは「なかめのてっぺん」のショールームをつくる感覚であった。

名古屋駅のJRゲートタワー12階で営業する「なかめのてっぺん名古屋」は、第14回居酒屋甲子園東海地区大会で優勝した
商業施設内の店舗でも目配りが行き届き、それがリピーターをもたらしている

「自分たちで売上をつくる」原点に回帰

こうして「なかめのてっぺん」は、創業して間もないながらも丸の内で営業をスタートすることができた。当時としては珍しいことだった。そして、オープンして1年後に同店は同レストラン街の中で坪売上高1位となった。その後、横浜ランドマークタワー地下2階に出店することのオファーがあった。内山氏はこの時「勝ったー!」と思ったと言う。

 

商業施設に出店するメリットは、出店が決まってからそれに向けた人材採用など営業体制を長期で考えられることだという。街場の場合は契約を結んでから3カ月後あたりに出店することになり、特にこの人材面で手薄になることが多い。

 

このように商業施設出店のメリットを述べる内山氏であるが、「見直す時期にきている」と言う。丸の内に初めて出店してから7年が経過して6店舗が商業施設内にある同社は常連と言える存在だ。ここに内山氏がかつて「商業施設の店に勝てる」と思っていた当時のように、従業員が連日多くのお客さまが訪れる商業施設の中で仕事をすることに慣れてきてしまっているのではないか、と感じることが多くなったという。

 

そこで「自分たちで売上をつくるという姿勢を持ち続けるようにするために、商業施設内への出店を休止する」(内山氏)という。

 

同社の店舗は、街場も商業施設もみな元気がいい。いつも満席状態の創業の店では営業中に「競り」を行う。Tボーンステーキやタラバガニの脚など高級食材を取り上げて、従業員が鼓舞してこれらをお客さまが競り落とす。最終的に金額が1万円を超えることは珍しくない。この時間は5分ほどだが、満席の店内に強烈な一体感が生まれる。同店は27坪で月商1200万円から1300万円、利益率は35%、家賃比率は3%という。「出店を休止する」という商業施設内の店舗も利益率25%を維持している。

「なかめのてっぺん」で行われる「競り」。店内に一体感が生まれ、大いに盛り上がる

客単価2万円超の高級店を2店オープン

MUGENは現在社員100人、アルバイト150人。来年4月で創業から14年だが、同社では象徴的な出来事が次々と起こっている。それぞれに、これから同社を発展させていく要素が感じられる。

 

まず、「鮨つきうだ」(2016年9月オープン)、「天婦羅みやしろ」(2018年5月オープン)といった客単価が2万円を超える高級業態を出店したこと。

 

それぞれ出店したきっかけは、「鮨つきうだ」の場合、ある人物から有能なすし職人を紹介されたこと。「天婦羅みやしろ」は、このすし職人の後輩が内山氏の料理人修業時代の先輩と同じ職場であるということからその先輩と久しぶりに出会ったことだ。

 

二人とも同社の居酒屋店舗で従業員が生き生きと働いていることに感銘を受けたと言い、1年間ほど居酒屋で働くという条件を快諾して同社に入社した。内山氏もこの二人の仕事ぶりを見ていて「高級店路線に進みたくて高級店をオープンする」という発想ではなく、「高度な技術を持つ人たちが活躍できる場面をつくりたい」と考えるようになり、高級店を出店することを決意した。

 

これらの店の集客やブランディングを同社の従業員が行った。これにかかわった人にとってはこれまでの居酒屋とは異なる新しい経験である。

 

それぞれ店に自分の名前が付けられた月生田光彦氏は48歳、宮代直亮氏は51歳。これから同社が業態のポートフォリオを考え、また料理技術の継承を図る上で重要な立場を担う存在となる。

また二つの店とも同社がドミナント出店を進める中目黒にあり、ここでの基盤を固める上でも有力な存在である。

国内からイタリアへ産地交流が発展

次に、M&A。一つは、鮮魚をメインとした居酒屋を多店化している飲食企業をグループ企業とすること。もう一つは、とんかつ専門店で創業者が高齢となり後継ぎが不在で、その店を継承することになった。同店ではかつてカツサンドも売っていて評判となったことから、この商品を再現することも検討している。

 

そして、外部との交流が活発になっていること。

これまで、取引のある地方の漁港に従業員を連れて産地を見学する機会は幾度となく行ってきたが、近年福井県美浜町との交流が生まれ、現地の生産者のところで収穫体験をしたり、現地の農産物を商品化することも行っている。現地で就労体験をした従業員は、これらの商品をお客さまにお薦めする時に情熱を持って語るという。

 

今年に入り、イタリアの生産者との交流ができた。きっかけは、和食店に販路を広げたいと考えていたイタリアワインのインポーターが、客単価3000円の居酒屋から客単価2万円を超えるすし、てんぷらの店を展開しているMUGENに興味を抱いたことから。

 

そこで、てんぷらの職人をはじめ幹部7人でイタリアを訪問し、現地の生産者の産品をてんぷらにして生産者にイタリアワインとのペアリングを楽しむ食事会を行った。ここで現地の人たちから多くの称賛を得たという。

 

「もったいない」の視点で事業に加えていく

さらに、同社が推進している「もったいないプロジェクト」が進化していること。

これは、「競りで売れ残った」「サイズが規格外」「一般的な魚ではない」などの理由で廃棄されてきた魚を有効利用するというもので、同社ではこれらをメニュー化した「魚治」という店を営業していて、またこれらの販路開拓も行っている。

「もったいないプロジェクト」の一環で自社で居酒屋も営んでいる

 

このプロジェクトの進化とは、「もったいない」ということによりフォーカスを当てるということ。「『もったいない』をモノだけではなく、社会のおけるココロの齟齬に目を向けて、これらをなくしていきたい」(内山氏)と言う。前述した、高度な技術を持ちながら活躍の場がない料理人に加わってもらうとか、後継者がいないことから廃業を検討している有名店を継承するなどはその一例である。

 

「時代的に、これから新規にガンガン出店するということは正しいことなのでしょうか。そうではなく、人材も店も引き継ぐという形で事業拡大ができるのではないかと考えています。例えば、引き継いだ専門店の大将が70歳まで働いていたとすると、その店は『70歳まで働くことができるモデル』ということになる。これによって、当社の元気のいい居酒屋で働いていた人が高齢になった時に、『次にこのポジションがあるぞ』ということを示すことができる」(内山氏)

 

また、AI及びテクノロジーはどんどん活用していくという。ちなみに昨年度は「スキルチェックシート」「給与明細」「契約書」のクラウド化を行った。この一方で、「人間でなければできないこと」をよりブラッシュアップして「MUGENはあらゆる分野に長けている、と言われる存在でありたい」と内山氏は語る。社名に託された「無限」の展望が拓かれている。

 

 

 

店舗情報

店舗名 なかめのてっぺん
エリア 中目黒

運営企業情報

企業名 株式会社MUGEN
URL http://www.mugen-c.jp/

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