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  3. 女性中心のほのぼのとした飲食店を育て上げ次のステージに挑戦

 

石井ふく子プロデューサーと言えば、かつてTBSで数々の人気ホームドラマを生み出した人物である。『肝っ玉母さん』『渡る世間は鬼ばかり』といった代表作があるが、これらの作品のパターンは、家族経営の飲食店が舞台となって、家族の切実な問題を描いている場合もあるが、ほのぼのとした雰囲気を醸し出していた。

 

東京・銀座8丁目のソニー通りに面した小さなビルの中に「つばき食堂」という店が2階と3階で営業していて、同店の雰囲気はまさに石井ふく子プロデューサーの世界である。2年ほど前の寒い季節に女性の友人から食事に誘われて、「何が食べたいか」と聞かれたので、冗談で「手料理」と答えたらこの店で落ち合うことになった。

 

同店でオープンキッチンを構える2階は10席ほどのカウンター席が主で、カウンターの中の壁には手書きのメニューがずらりと並んでいる。最近のものは「本日のお出汁たっぷり玉子焼き」800円、「肉じゃが」750円、「真さば味噌煮」850円、「つばき特製ハンバーグ」1000円という具合。カウンターの上にはおばんざいが並べられ、その奥にはおでんの鍋もある。

お馴染みのお客さまが自分の食卓のように食事をしているランチタイムの風景

 

このメニュー表だけを見れば普通の大衆食堂であるが、同店の最大の特徴は25人在籍する従業員のほとんどが女性であること。作務衣に割烹着姿がユニフォームで、19歳から75歳まで、年齢層に偏りがなく存在している。そして、みなフレンドリーに語りかけてくれる。

同店を経営するのは合同会社つばき(本社/東京都渋谷区、代表/峯崎淳子)。銀座店の営業時間は11時から23時で、本店が東京・広尾にある。

 

卓越した行動力で飲食業を育て上げる

同社代表の峯﨑淳子氏は細面のきりりとした表情で、“女手一つ”で「つばき食堂」を育て上げてきたという風格がある。しかし、「つばき食堂」は峯﨑氏が立ち上げた店ではなく、峯﨑氏がアルバイトとして入社した店であった。それが、今日の「つばき食堂」に至る峯﨑氏のバイタリティに溢れたプロフィールをざっと紹介しよう。

合同会社つばき、代表の峯崎淳子氏。実にバイタリティがあふれている

峯﨑氏の出身は東京・墨田区。都内でフリーターをしていたが、20歳のときに長野・蓼科のスキー場近くにあるホテルでアルバイトをした。働きぶりが評価されてそのホテルに就職。その後上諏訪市に移り、マクドナルドに勤務し、すぐにアルバイトマネージャーを任された。3年ほど勤務した後、上諏訪市内の飲食店に入り、取締役として采配を振るう。小さな割烹を1店舗営んでいたところを5店舗に拡大した。ここには7年間勤務した。

 

その後上諏訪市内で起業し、1戸建ての物件を借り、1階にダインニングバー、2階にエステサロンを開業した。そこが見事に失敗した。そこで東京に戻ってきたところ、2011年の3・11を経験する。

そこから峯﨑氏は、飲食業でのアルバイト生活に奮闘した。

 

「つばき食堂」の広尾本店は株式会社ムジャキフーズ(本社/東京都渋谷区、代表取締役社長/田代隼朗)が2011年12月にオープンした店だ。峯﨑氏は2012年5月、同店にアルバイトとして入社した。

ムジャキフーズでは「トラスト方式」という業務委託方式によって飲食店を展開していて、峯﨑氏は後に「つばき食堂」をこの形態で運営することになる。

 

ホスピタリティを大切にして繁盛店に育てる

峯崎氏は「つばき食堂」でアルバイトながら店長を務めていた。入社した当初の「つばき食堂」はメニュー数も少なく現在のようなコンセプトではなかった。

「アルバイトでも、店長という肩書である以上、店長会議に出なければならない。そこで売上が低いということで叩かれる。そこで『絶対に繁盛させてやろう』と考えるようになりました」

 

そこでメニュー構成を変更して、従業員にも自分の峯崎氏が描く飲食業の仲間に入ってもらうようにした。

峯﨑氏が広尾店の立て直しのために取り組んだことは「ホスピタリティを大切にする」ということ。そこで峯﨑氏は率先してお客さまに話しかけるようにした。

 

初めて来店したお客さまに「お名前はなんとおっしゃるんですか」と尋ねて、「〇〇です」と言われたら、「私は淳子と言います。これから″淳ちゃん“と呼んでください」と語りかけることを心掛けた。すると、これらのお客さまが週3回のペースで来店するようになった。さらに仲間を連れてくるようになった。

手づくり感が漂う「つばき食堂」のロゴ

 

そして、「自分のファンをつくろう」と考えるようになった。「この人にはどのように語りかけたらいいか」という具合に、お客さまを観察した。

お客さまの好みのお酒を聞き出して、「では、今度〇〇を用意しておきますね」というと、お客さまが次回来店するときにそれをお土産で持ってきてくれたりするようになった。

 

経営者となり「地域密着」を心掛ける

広尾店にアルバイトとして入社した2012年5月から約半年が経過した12月に「トラスト契約の話」を持ち込まれた。3カ月後の2013年3月に峯﨑氏は独立してつばきを設立、ムジャキフーズとトラスト契約を結んだ。その4月にムジャキフーズが自由が丘に「つばき食堂」直営店を出店。峯﨑氏は広尾店の傍ら自由が丘店のオープンニングを手伝うことになった。その後、峯﨑氏は自由が丘店を引き継いだ(のちに、つばきの社員独立で姉妹店となる)。

銀座店は2014年6月にオープンした。最初は別の業種であったが1カ月でつばき食堂に転換した。このとき「自分の商売は『つばき食堂』だ」と決意したという。

銀座店ではさらに「つばき食堂」らしさが磨かれていった。

「それは、とにかく地域に密着するということです。銀座は人が住んでいる街ではなく、仕事でいらっしゃる町です。商店街の人、銀座だと黒服の人、クラブのお姉さんとか、このようなお客さまに愛されることを一生懸命考えました」

ランチタイムの「サバ塩焼き定食」910円。個店ならではの実質館がある

 

また、さまざまな年齢層で構成される女性従業員の結束も深まっていった。時季に応じて行う小旅行や、高級店での食事会などで親睦を深めている。シングルマザーの雇用も行い従業員の中にプライベートを助け合う機運も育っていった。このような環境が冒頭で述べたような雰囲気を醸し出しているのであろう。

これからは「自分の得意なこと」に集中する

さて、「つばき食堂」は今転換期を迎えようとしている。それは可能性を切り拓くための挑戦である。

飲食店の経営者であると共にさまざまな勉強会で研鑽を積んでいる峯崎氏であるが、ある勉強会でパートナーとなる会社と巡り合った。

きっかけは、そちらの代表から常日頃「峯崎さんは、自分にとって得意なことに専念したほうがいい」とアドバイスを受けていたことだ。

 

「自分にとって得意なものとは何か?」

このように自問自答するようになった峯崎氏は、「初対面の人とすぐに仲良くなることができる」ということに気付いた。これこそ広尾本店を立て直し、「つばき食堂」を繁盛店に育て上げる原動力である。

 

また、自分がこれまで現場に入ると従業員に任せることなく自分でやり切ってしまうという反省もあった。このようなことが度重なることによって峯崎氏が現場に入ると従業員が一歩引いてしまうきらいがあった。

 

このほかに峯崎氏にはさまざまなマネジメント業務があり、給与計算という実務もある。このように業務が山積していることから、これまで業容を拡大するチャンスを逸したり、またプライベートの時間を充実させることができないという悩みも抱えていた。

 

「深夜食堂」や「弁当販売」も画策

現在は、パートナーと業務改革を進めるソフトランディングの期間に相当するが、同社から男性の従業員もシフトに加わるようになり、例えば簡単な力仕事や店舗運営上の判断に新しい能力が備わったと感じ取っている。

 

これから新しい体制が整うことによって、これまでの11時から23時までの「つばき食堂」に「深夜食堂」の営業を加えていくことも想定するようになった。さらに、立地の利便性を捉えて弁当販売も想定している。

 

峯崎氏のこれからの役目は、自分が得意とする外交の中でさまざまな交流と情報収集に努めてそれを現場にフィードバックして売上オンにつなげていく。

そこで、峯崎氏が現場で陣頭指揮を執るのではなく、峯崎氏が現場で不在でも従業員の個々が目標を立てて、それぞれが達成感を感じ取り、これまで以上の環境を維持できる仕組みづくりを行っているところだ。

地域密着で夜の同業者の食事需要にも応えていて固定ファンが多い

 

筆者は2年前に峯崎氏にインタビューをしているが、今回の取材でこれからの「つばき食堂」の展望をよどみなく話す姿に、峯崎氏自身が新しいステージに立っていることを実感した。

店舗情報

店舗名 つばき食堂 銀座店
エリア 銀座
URL https://r.gnavi.co.jp/py50xtcm0000/

運営企業情報

企業名 合同会社つばき
URL https://r.gnavi.co.jp/2zafsr9zoooo/

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