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  3. 川崎エリアで地元密着を徹底し「中食」にも参入

川崎エリアで和食居酒屋を4店舗展開する「すずやグループ」のことを知ったのは2年前のこと。筆者の仕事仲間と新しい事業を立ち上げようと画策するべく集合したのは武蔵中原駅近くの「鈴や」であった。開店前であったが、店主らしい風格の人物が快く招き入れて開店準備と共にわれわれの酒や食事を用意してくれた。料理は刺し身や魚の煮つけなど大衆居酒屋にしてはクオリティが高度であった。その店主らしい人は、すずやグループ代表の蟹江脩礼氏であることを紹介された。ぽっちゃりとした表情にモヒカン刈りの金髪が非常によく似合っていて、忘れることのないキャラクターだ。

 

今回このシリーズで蟹江氏に取材をすることになったことから、事前に東急田園都市線溝の口駅南口にある「すずや溝の口本店」で食事をした。魚料理をベースに日本酒が豊富な和風居酒屋である。

食事の途中に店の奥の壁に筆文字で名前が書かれた半紙がたくさん並べてあるのを見つけて、これは何かと従業員に尋ねたところ、「店の全従業員の名前」ということだった。女将、店長からアルバイトまでこの店に従事する人たちの名前を掲出することで、モチベーションがとても高まるという。

 

居酒屋経営者の間にはさまざまなコミュニティがあるが、その一つに「駒八おやじ会」というものがある。ここでは東京・田町に本拠を置く和食居酒屋「駒八」の代表、通称「駒八おやじ」の八百坂仁氏をリーダーとして、飲食店の若手経営者が交流している。「駒八」は伝統的な和風居酒屋の業態を踏襲し、刺身、揚げ物、食事といった基本的メニューをクオリティ高く提供する。「すずや溝の口本店」にこの「駒八」に似た空気を感じた。

蟹江氏はこの会の幹事役を務めているということだから、「駒八」の経営姿勢が浸透しているのであろう。本店の客単価は現在4000円で推移している。

風格のある「すずや溝の口本店」の看板

「紹介」「人脈」を大切にして事業内容を深める

蟹江氏は1975年生まれ、東京出身。高校卒業後、配管工事の会社に勤めていた。父親が機械部品のメーカーを経営していてその跡取りとして期待され、その会社に転職した。転職したばかりの頃、居酒屋で働く知人から誘われて、その店を手伝うようになり、昼は父の会社、夜は居酒屋でアルバイトという生活を続けた。

その後両親が離婚することになり、蟹江氏は母と妹と生計を立てることにした。元々来客が多い家で、お客さまをお招きすることや、人と関わることのリテラシーが高いことから、「居酒屋でもやろうか」と話がまとまった。そこで1999年、蟹江氏が23歳の時に、母親と妹の3人で現在の本店を立ち上げた。ビルの2階で当初2つの店舗スペースがあり、その一つで14坪27席であった。

株式会社すずや、代表取締役の蟹江脩礼氏

 

蟹江氏は料理を学んだことはないが、器用であることには自信があった。そこにいとこの友人である料理人が加わり、4人で喧々諤々メニュー開発を行った。最初の料理人は海外で働くことを志して1年後に辞めて、その後新しい料理人に入ってもらい、さらにメニューを磨いていった。こうして蟹江氏は開業してから従業員より調理を教えてもらう形で調理技術を身に付けていった。

1号店をオープンした翌年には武蔵中原の物件が紹介され2001年にオープン。また、本店の隣の店舗が撤退したことからその店をつなげて、現在の27坪47席の店舗に増床するなど、店舗展開は好調に推移した。

現在の「すずやグループ」は、居酒屋4店舗に中食事業の店舗1つ(溝の口2店舗、武蔵中原2店舗、自由が丘1店舗)となっている。

 

蟹江氏はご近所の同業の人やお客さまからとても愛されている。老舗の居酒屋の女将さんから「良い魚屋さんがあるよ」と紹介され、その鮮魚店に赴いて店を手伝い、取引を深めるようになって、すずや自身も魚という食材を極めるようになっていった。

 

日本酒の品揃えにもこだわっている。これは営業を開始した当初、お客さまが「日本酒の品揃えがいい酒屋さんがあるよ」ということで現在のお取引先である業務用酒販店を教えてくれた。

この酒販店のご主人は蔵元から飲み口のアドバイスを仰がれるほどの重鎮で、蟹江氏は日本酒や焼酎の品揃えを良くしていくための行動の仕方について薫陶を受けた。

こうして蟹江氏自身が日本酒に魅入られて蔵元を訪ねるようになり、これまで80蔵ほど訪ねているという。現在蔵元巡りはすずやの社員研修の定番となっている。

 

日本酒はフェアを行うことが恒例行事となっている。これはすずやの従業員がこれまで数多く尋ねた蔵元と交流を重ねていることから、蔵元それぞれの情熱に共感していて、その酒蔵の魅力を発信する想いが募る。蔵元にとってはすずやの従業員はトップセールスマンになっている。

従業員が蔵元のトップセールスマンとなり日本酒をアピール

ケータリングに加え仕出し事業と「中食」が好調

さて、武蔵中原には二つの店舗があるが、そのうちの一つを今年の1月20日より「仕出し割烹」を冠とした「しげよし川崎高津・中原店」として営業を開始した。

 

ここでは、仕出しに着手する以前からケータリングの基地となり、また、各店の仕込みをするなどセントラルキッチンの役割を果たしている。また、これから企業向けの弁当宅配を行う予定だ。

 

仕出しの事業については三重県津市に本拠を置く株式会社寿美家和久(代表/小清水丈久)との業務提携で始めたことだ。蟹江氏自身が以前より仕出し事業に取り組みたいと考えていたが、独自で始めるよりもノウハウを持つところと提携した方が安定するだろうと考えて提携する先を検討していた。

 

寿美家和久は仕出し事業の実績を持ち、全国にパートナーを求めている。仕出し事業のノウハウは、発注システム、メニューのバリエーション、新聞折り込みを始めとした販促などを供給する。メニューは「パックもの」と「器もの」があり、「パックもの」はワンウェイの商品で、「器もの」は配膳や容器回収の作業が必要になる。

「パックもの」は1350円(税別、以下同)から5500円、「器もの」は2950円から3650円の商品がラインアップされている。お子さまの「お食い初め祝い膳」4800円というものもある。

 

平日は企業従業員の弁当、ランチミーティング用、製薬会社からはドクターやナース向けの弁当を受注して、依頼先にすずやが届けている。

休日に需要が多いのが前述した「お食い初め祝い膳」である。武蔵小杉のタワーマンションをはじめ、配達エリアには若い家族が多く、また家族3世代が揃った時に仕出しを取って家で会食するというパターンが定番化してきている。この場合の注文単価は4~5万円になるという。

 

このほかにカスタマイズにも応じる。単価1万円のものが8人分という注文もある。取材をした日は2月27日で、事業を開始して1カ月と少しの日数であるが、蟹江氏が語るお届け先の話題がとても豊富で特に土日祝日の需要が多く、「中食」に有望性を感じ取っているようだ。

また、蟹江氏は行政とのつながりを大切にしている。川崎にこだわり、さまざまな交流会の理事や役員を務めている。これによってイベントや企業のパーティなどがあるとケータリングの担当を任されることが定着してきた。

このご縁で取り組んでいるものに「川崎ハーブソーセージ」がある。これは川崎の農商工連携による名産品に認定されている。商品の企画をすずやが立案し、それを農商工連携で名産品をつくり上げるというスキームだ。障がい者施設の畑で栽培されたハーブを使用してソーセージをつくるなど、さまざまな就労支援にも関与していている。また、地元の生産者から野菜を取り入れている。

溝の口にある「すずやはなれ」では地元の産地とこだわりの食材の写真を飾っている

 

すずやでは全店舗が「無休営業」を行っている。社員は現在12人、各店舗の店長のほかに店長クラスの遊軍が2人いて、彼らがそれぞれの店舗のシフトに入ることで無休営業を可能にしている。アルバイトスタッフは十分に集まっているという。同社ではアルバイト募集をここ3~4年行っていない。それは既存店アルバイトの紹介制度が機能しているからというが、アルバイトが働いていて楽しい職場だと実感しているからこそ、自分の友人を紹介してくれるものだ。

 

また、アルバイトスタッフに向けて就活支援のセミナーを行っている。蟹江氏が異業種交流で知己を得た経営者を招いて就職することの意義を語ってもらい、終了後は講演者の会社の社員を交えて懇親会を行う。

 

すずやグループの経営方針は明確に定まっている。ホームページには「旬・食文化の継承」「地域貢献・活性化の推進」「顧客満足の追求」「本物志向」「食の安心・安全」と掲げているが、これらの原点は「川崎エリアでの地元密着」である。それが地元の人々からの信頼を醸成しさまざまな事業を可能にしている。それらは常に謙虚で人懐こい蟹江氏の人徳に他ならない。

店舗情報

店舗名 すずや溝の口本店
エリア 溝の口
URL http://www.suzuya-group.com

運営企業情報

企業名 株式会社すずや
URL http://www.suzuya-group.com

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