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  3. 「お客さまを守り、従業員を守る」姿勢で信頼を培う

 

一都三県にもつ焼き居酒屋「串屋横丁」が約50店舗存在する。これはいわゆるホルモン料理の専門店で、「頑固おやじが営む個人店」のような店だ。看板商品のスーパーホルモンロール」はピンポン玉のようなホルモンボールが串に通されて1本130円(税別)、他の商品もフレッシュで価格が低く、客単価は2200~2300円前後となっている。

 

同チェーンを展開しているのは千葉県茂原市に本拠を置くドリーマーズ株式会社(代表/中村正利)。「串屋横丁」のほかに、肉料理の「小松屋」を2店舗展開している。冒頭で展開エリアを一都三県と述べたが、実際には東京と千葉がほとんどだ。その理由は千葉県茂原市の工場を中心にして展開エリアを想定しているからだ。

 

「串屋横丁」約50店舗のうち直営は18店舗、このほかは加盟店だがみな同社の卒業生である。各店舗の繁盛ぶりを見ると商売を営む人は誰しも加盟店になりたいと思うであろう。しかしながら「串屋横丁」の展開姿勢は一貫している。まず、エリアは千葉県茂原市の工場から配送できる範囲であること。そして、オーナーは直営店の卒業生であること。こうして店を運営するマインドとクオリティは高度に保たれて、各店舗はお客さまを裏切ることはない。

「串屋横丁」の看板商品「スーパーホルモンロール」(手前)と「赤モツMIX」どちらの130円(税別)

 

ドリーマーズ代表の中村正利氏は1968年9月生まれ。ドリーマーズを創業し「串屋横丁」を軌道に乗せるまでの人生は多岐にわたっている。ドリーマーズの前はIT企業を営んでいたが2001年に事実上の倒産状態となる。2003年に「串屋横丁」を立ち上げ、4年間で4000万円の借金を完済し、以来「串屋横丁」独自の仕組みをつくり上げた。

 

さて「串屋横丁」では飲食業界に先駆けて1月30日より新型コロナウイルス対策に取り組んでいる。代表の中村氏が1月29日にfacebook上でこの取り組みを公表したところ大きな反響を呼んだ。そのポイントは「お客さまを守り、従業員を守る」という姿勢である。現在、新型コロナウイルス対策の在り方についてさまざまな声が寄せられるが、最も重要なことは事業者側が俊敏な行動をとることによって「安心感」をもたらすことではないだろうか。

ドリーマーズ株式会社、代表取締役の中村正利氏

飲食店の生産性にこだわり「仕組み」を整える

筆者は中村氏に15年ほど前から取材をしてきたが、中村氏のこのような考え方で一貫している。

「お客さまも取引先さまも社員もアルバイトさんも、当社にかかわる全ての人の幸せに貢献する。そして社員には大きな夢を持ち、そしてその夢を実現する人生を歩んで欲しい。そのために入社後の人生設計に夢を持てる仕組みをつくった」

「ドリーマーズ(夢を追う人々)」という社名の由来もここにある。

 

これまで最も力を注いだものは「理念教育により高いモチベーションを持ったチームづくり」、続いて「トレンドに左右されない業態づくり」ということだ。業態寿命という言葉とは無縁の「もつ焼き屋」を徹底的に磨き上げて個人店にもチェーン店にも負けないクオリティをつくり上げた

 

そして「業界平均の何倍も利益が出る仕組みづくり」を行った。それは以下の通り。

① 養豚農家からの直接仕入れにより中間マージンを劇的に削減

② 工場を作ったことにより店舗での仕込み人件費の大幅削減(労働時間も削減)

③ メニュー数の削減によるロスと人件費の大幅削減

④ 専門業態化により厨房面積を小さくし、坪当たり席数の大幅増→1席当たり家賃の低減

⑤ 同規模のチェーン店では3000万円とも言われる建築費の大幅な削減

⑥ ドリンクパスポートにより無駄な宣伝広告費の全廃

⑦ 商品力とドリンクパスポートにより、2等、3等立地での集客を可能にし、物件取得費及び家賃の大幅削減

さらに、メニュー変更をしない、宣伝をしない、社内のイベントはしない、等々――これらの施策により、これまで支払っていた経費を劇的に削減した。

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「お客さま本位」に基軸を置いた高い給与制度

これを原資として非常識とも言えるような「串屋横丁」の給与制度をつくり上げた。

まず、店長の給与制度。固定給は月24万円で変わらない。しかし、これに歩合給制度が加わる。店長が受け持つ店の規模(席数など)によって歩合の条件は決まってくる。

一番大きな店は歩合給が80万円、一番小さい店の場合45万円程度。一番大きな店の店長は固定給+歩合給に残業代などがついて月の給料は110万円程度、一方の店長は75万円程度になる。

店長には異動がなく、日報もない。営業に差支えがなければ店に出勤するのは何時でもいい。ただし店長としての業務を全うしないと解任となる。全うすることを極めるときちんとした報酬が得られる。

 

このような店長の下には店長を目指す人がたくさんいる。固定給は店長よりも高く設定されて年間340万~350万円。これに加えて会社が決めた利益目標をクリアすると毎月10万円が給付される。さらに残業代が加わって年収500万円程度になる。

 

 

「全ての経費はお客さまのために」――これがドリーマーズの経営方針である。

これによって、「無駄なことの全てはお客さまのためにならない」という考え方に至っている。イベント、ルール、組織、中間管理職等々、例えばスパーバイザーが店舗を回って歩くということも無駄なものと考えている。そこで、評価制度や組織を撤廃した。それは、「当社の社員を評価するのはお客さまです。お客さまの『良かったよ』という評価が『売上』に結び付いてくる」(中村氏)と考えているからだ。

「お客さま本位」であらゆるコストを抑えることで、いわゆる二等地・三等地での出店を可能にしている

「FLコストを下げてはいけない!」

このような前提から、中村氏はいくつかの「串屋横丁哲学」を披露してくれた。

まず、「飲食店経営にとってFLコスト(原価率+人件費)は高いほうがいいか、低い方がいいか?」――ドリーマーズの場合は、「高いほうがいい」というスタンスだ。「FLコストが高い」という店のイメージは、店の中に時給が高くて気の利いた従業員がたくさんいて、高くて良質の食材を使用していること。「FLコストが低い」とはこの真逆である。「FLコストが高い」ほうがお客さまの満足度が高まり利益をもたらすと考えている。

 

儲かる店をつくるために「原価率を下げてはいけない」という哲学について。

例えば、月商500万円の店がある。この店で「月間粗利益額を25万円増やそう」とする。まず考えられることは「原価率を5%下げる」こと。この場合は食材の仕入れ値がこれまでよりも5%低いものを使うということだ。

これに対して「串屋横丁」では、ずばり「原価率は下げるな!」ということを徹底している。

「串屋横丁」の客単価は2200~2300円、原価率は30%後半から40%。そこでお客さま1人当たりの粗利益額は1600~1700円程度となる。そこで、1日当たり1人のお客さまが増えると粗利益額は月間で5万円増える。つまり「月間粗利益額を25万円増やそう」とする場合、1日当たり5人のお客さまを増やすということだ。そこで、FLを下げずにお客さまの満足度を高めて、にぎやかで楽しい店をつくり上げて「店の満席率を増やすことの方が重要だ」と考えている。ちなみに「串屋横丁」の中で一番売っている店は門前仲町店で、38坪で1200万~1300万円。これで店舗利益は430万~440万円となっている。

「老舗繁盛店」をモデルに地域密着を貫く

「串屋横丁」のモデルは「老舗繁盛店」である。これらの店は販促をしない、メニュー変更をしない、お客さまアンケートを取らない。「店の実権を店が握り、お客さまに左右されない店が、長く営業を続けることができる秘訣」と中村氏は確信している。

「メニューを増やす、キャンぺーンを行うということは全て経費です。このようなことをやらないことが正しい経営。『スーパーホルモンロールを食べたくなったから串屋横丁に行こう!』というお客さまが安心してやって来られるように、常に店を磨いているのです」

 

この考え方は会社経営の在り方でもある。中村氏はこう語る。

「上場している企業にとって『経常利益』はとても重要な項目です。それは銀行と株主さんのためだから。それが未上場で、上場する気もない企業にとってはほとんど不要。未上場企業にとって大事なものは粗利益です。粗利益をしっかりと獲得し一生懸命働いているみんなと利益を分け合うことが重要です」

 

「串屋横丁」は、これから1000店舗2000店舗つくるといったビジョンと持たない。あくまでも「個人店」志向である。現状、千葉県茂原市の工場の機能は100店舗が限界という。そこで100店舗までは「良い物件があって、店長候補の社員がいる場合」に出店する。だから、「新規出店計画」や「新入社員採用計画」という発想を持たない。

 

その一方で力を傾けていることは「地域密着」であり「顧客を尊重する」ことだ。「全ての経費はお客さまのために」という経営姿勢で、「お客さまを守り、従業員を守る」という在り方を貫いている。

「串屋横丁」の姉妹店「小松屋」は肉バルの草分け的存在

店舗情報

店舗名 串屋横丁 人形町店
エリア 人形町
URL http://dreamersgroup.jp/shop/

運営企業情報

企業名 ドリーマーズ株式会社
URL http://dreamersgroup.jp/company/index.html

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