『e店舗media』で執筆している千葉哲幸が、コロナ禍の中で新しい試みを行っている飲食業の事例を見てきている。テイクアウト・デリバリーだけではなく異業種を手掛けたことで、中小も大手も事業領域を豊かにしている。そこで連載の形で、「コロナ禍での新しい取り組みによって、飲食業はどう変わるか」ということを述べていく。

 

新しいコミュニティの創出につながる

コロナ禍によって営業自粛要請がなされてから、「生産者を応援する」ということを旗印に店頭で野菜を販売する事例が散見された。これらの協力者として紹介されたのが「フードサプライ」という会社である。

筆者が同社のことをはじめて知ったのは、東京・中目黒に本拠を置く(株)MUGENの野菜販売であった。

同社は2006年4月、三軒茶屋に創業の店である「なかめのてっぺん」をオープン。現在、直営店18店舗、グループ店舗4店舗を擁しているが、この4月に入り、営業時間の変更ないし休業を余儀なくされた。以下、同社代表の内山正宏氏がfacebookに投稿した情報に基づくが、三軒茶屋の同社店舗の一つを「ドライブスルー八百屋で有名なフードサプライさんご協力の上、八百屋さん&お惣菜屋さんとして再スターを切った」(内山氏)という。4月14日に投稿したものには、たくさんのお客さまが買い物に詰めかけている画像が掲載されていた。この様子に内山氏の「今まで、店舗には足を運んでもくれたこともないような主婦層、お姉さま方とのつながりは新たなコミュニティの創出にもつながって面白い」というコメントが添えられていた。

次に「フードサプライ」を知ったのは(株)串カツ田中ホールディングス(本社/東京都品川区、代表/貫啓二、以下串カツ田中HD)の試みからだ。同社によると、4月21日から同社の取引先企業である(株)フードサプライ(本社/東京都大田区、代表/竹川敦史)と協力して、外出自粛要請の影響で使用されなくなった野菜を詰め合わせにした「もったいない野菜セット」(1500円)をパッケージにして、関東で営業中店舗での店頭販売を開始した。

4月26日の「串カツ田中」西池袋店の店頭。人通りはほとんどないが近隣の住民が立ち寄る

 

「地元密着」の中で新しい顧客層を発掘

筆者は4月26日に店頭で野菜の販売を始めた(株)ゴールデンマジックの「酒場フタマタ」西池袋店を訪ねたが、同店の野菜もフードサプライから仕入れたものだ。しかも、「串カツ田中」西池袋店と一軒隔てて隣り合わせである。野菜売場が一挙に2カ所できたことになる。

筆者は11時から14時ごろまで2つの店を行ったり来たりしたが、それぞれの野菜売場は13時ごろからにぎわうようになった。買い物に来るお客さまは近隣の人々、主に中高年や年配の主婦層だった。串カツ田中、酒場フタマタともに客単価が2000円代前半で、客層は地元で働く人ないし地元の人である。しかしながら、前述したMUGENの野菜販売にもあるように、日中野菜を買い求めにやってきたのは同じ商圏でありながら、既存の営業では巡り合うことができない人々であった。

「酒場フタマタ」の店頭でもフードサプライの野菜を販売、主に中高年の女性が買い求めていた

これらの店は平時より「地元密着」を標榜していて、この度の野菜販売をきっかけに地元密着の顧客層を広げることができた。

ちなみに、野菜販売の立役者であるフードサプライは2009年4月に会社設立。代表の竹川敦史氏は大手外食企業で業態開発やコンサルティング業務、物流バイヤー業務に携わった後、「日本一」を目指して焼肉店経営に挑み、後に食材流通に着眼し、野菜の流通に挑むことになった。以後、旧来の発想から抜け出して、独自の野菜流通をつくり上げた。4月上旬より「ドライブスルー八百屋」のサービスを開始し、この拠点を増やしている。

これらの動向から「野菜が新しい顧客を開拓する」ということが言えるのではないだろうか。

 

 

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