『e店舗media』で執筆している千葉哲幸が、コロナ禍の中で新しい試みを行っている飲食業の事例を見てきている。テイクアウト・デリバリーだけではなく異業種を手掛けたことで、中小も大手も事業領域を豊かにしている。そこで連載の形で、「コロナ禍での新しい取り組みによって、飲食業はどう変わるか」ということを述べていく。

新規顧客を通常営業につなげていく発想

今連載の第2回で紹介した(株)ゴールデンマジック(本社/東京都港区、代表/山本勇太、以下GM)の動向をここで詳しく紹介しよう。

同社ではフードサプライと提携し、「博多かわ串・高知餃子 酒場フタマタ」等の店舗で野菜や総菜の販売を「ハーフタイム八百屋」という名称で期間限定で行っている。実施店舗は「酒場フタマタ」の小岩店(4月24日~)と西池袋店(4月25日~)、さらに「九州熱中屋」は、〝旬の野菜とお惣菜″「熱中八百屋」をうたって営業を開始した。実施店舗は木場店、浦和店、五反田店、駒込店である。木場店、浦和店、五反田店は路面にあり物品の販売に適しているが、駒込店は地下にある。そこで、同店では軽トラックに野菜を積んで行った。

同社代表の山本勇太氏はこう語る。

「野菜の販売をしている店は店舗売上を含めて一日10万~15万円になる。駒込での取り組みがうまくいったら、『熱中八百屋』はいろいろなところで可能となるだろう。また、コロナが鎮まったら、フルーツだけを残して販売を継続することも考えられる。人と箱を動かすということを、やるとやらないとでは大きな違いがある」

筆者は5月12日の11時30分ごろに「熱中八百屋」五反田店を訪れた。JR五反田駅東口より徒歩3分ほどの路地裏にあり、地元住民と思われる中高年女性が常に数名買い物をしていた。平時では存在しなかった「八百屋」が突然にぎやかに営業していることを新鮮な思いで受け止めているようだ。

「日中に野菜を販売することによって、新しいお客さまとの接点ができた。これから通常営業になって、これらのお客さまに飲食店を利用していただくためのメニューをつくることも必要になるのでは」(山本氏)

GMにおける野菜販売は、新規顧客の発想をもたらしたようだ。「熱中八百屋」はこれから関西でも行う予定とのこと。

通常営業になってからも商品を絞り込んで継続することも想定されている

「家庭での時間の過ごし方を楽しむ」商品を提供

さてGMでは、5月7日(木)よりECサイト(通販)を開設した。「地場めし」という名称で、「もつ鍋」「高知餃子」「牛鍋」をはじめとする同社の各業態の看板メニューをラインアップした。その背景について、「飲食店の休業や時短営業が相次ぐ中、休校や在宅ワークにより自宅での時間が増えて、テイクアウトやデリバリー、また自炊中心の生活へとシフトしてきた。そこで各家庭の食卓を彩り、オンライン飲み会での肴としても楽しんでもらえるグルメサイトを立ち上げた」という。

商品名と価格はそれぞれ次の通り。〝博多の街からやってきた″「博多もつ鍋」塩スープ 中/3280円 大(4~5人前)/4250円、「博多もつ鍋 醤油スープ」同上、「博多もつ鍋」味噌スープ 中/3520円 大/4480円。〝高知人が愛してやまない屋台の味″「高知餃子」50個セット/1860円、100個セット/3600円。〝本場博多では、お一人様10本は当たり前“「博多かわ串」10本/1860円、30本/4980円。〝連日予約で満席の名店″『牛弁慶』の「牛鍋」2人前セット/6200円。この他〝いつもの食卓に通な1品″「しそ明太鯖寿司」1400円、〝丸ごとだからふっくら!肉厚‼″「サバの味噌煮」1400円をラインアップしている。

ゴールデンマジックで展開している業態の人気メニューを集めた

さらに、5月15日より第二弾として〝1日かけてゼロからつくる″をうたった、「自分でつくる本格ラーメンセット」の販売を開始した。「自家製豚骨ラーメンセット」4食分/3840円、「自家製鶏がらラーメンセット」(同上)の二種類である。これは第一弾の手作りの「高知餃子」が人気を博したことからメニューしたもので、「自家製豚骨ラーメン」の場合は8時間かけてスープを炊くというものだ。

家庭での時間の過ごし方を楽しむという商品は、飲食業の常識にはなかったものだ。

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