今年の3月16日、東京・外苑前にバインミーの専門店「Banh Mi Tokyo」(バインミートーキョー)がオープンした。バインミーとはベトナムのサンドイッチで、柔らかいフランスパンにバターやマーガリンを塗って、野菜、肉などを挟んだものだ。日本では2016年あたりから食の新しいトレンドとして注目されるようになった。

「バインミートーキョー」のバインミーは、「グルテンフリー」と「ジャパニーズテイスト」に徹していることで特徴を打ち出している。

 

同店のオーナーは音仲紗良氏。肩書はフードコーディネーターとなっているが、ビジネスの領域は多岐に渡っている。音仲氏のブログを見ると、和装店の広報やモデル、食品メーカーのメニュー開発、PR等々。このような音仲氏の拠点となっているのが「バインミートーキョー」となっているという印象を受けた。

外苑前の路地裏にある閑静な佇まい

 

食のスタイリングに目覚めフードコーディネーターを志す

音仲氏は1987年8月生まれ。大学卒業後、教科書の出版社、大手流通系の主婦向け情報誌編集部とメディアの分野を歩んだ。情報誌編集部では、スーパーやコンビニなどでの商品の流れを学ぶことができた。ここでは当初美容を担当していたが、食も担当するようになった。食については幼少のころから人々をワクワクさせる世界であることに引かれていて、殊更の興味を抱いていた。

 

この情報誌編集部で食の担当になって感じたことは、食がビジュアルになったときに、おいしそうな様子やシズル感が重要であるということ。「良い企画」だと思っても、スタイリングにセンスがなければ読者は読み飛ばしてしまう。

 

そこで、自分で納得のいく企画を全うするためには、スタイリングもできなければならないと考えて26歳で独立。フードコーディネータースクールに通い、生計を立てるために飲食店でアルバイトを行いつつ、フードライター、エディターの仕事をしていた。

 

フードコーディネーターを目指す上で、26歳という年齢は、自分としては「遅い」という感覚があった。

スクールに通っている同級生たちは元料理人や管理栄養士の学校を出て、料理の見せ方、企画の提案について学びたいという人がほとんどだった。料理人としての下積みがなければこの世界を極めていくのは難しいのではないかと考えた。

 

そこで「自分の強みは何だろう」と考えた。出版社で編集の経験があってフードコーディネーターをやっているという人はまれなことだ。そこで、企画したものを形にして、新しい魅力を引き出すPR、プロモーションまでを一貫させようと考えた。

「自分はそれを全部できる」と思い立ち、自分の仕事のフィールドにしていこうと考えた。こうして音仲流のフードコーディネーターの道を歩みだすことができた。

 

「ナッツ」の店を立ち上げて一貫した仕事に取り組む

29歳のときに仕事の手伝いをしていた広尾の飲食店のオーナーが、当時の店をたたむことになった。しかしながら、その場所で商売を継続したいという想いがあり、音仲氏は業態づくりを依頼された。そこで音仲氏は「これからはやるもの」として「ナッツ」にフォーカスをあて「ナッツトーキョー」という店を立ち上げた。

 

まず、コンセプトをつくる。コンセプトに合わせたメニューを開発。メニューをつくって見た目の部分、フードスタイリングを行い、撮影し、プレスリリースを発表しPR。メディアに向けた訴求活動と取材対応を行う。商品はお店だけで売るにはもったいない。そこで、お店以外の売上を立てるための営業をした。百貨店の催事に出してもらえるように営業活動を行い、実際に催事に出店。――音仲氏が描いた「ワンストップサービス」を思う存分に発揮することができた。

 

具体的には、『東京カレンダー』をはじめ60以上の媒体に掲載。催事では、伊勢丹新宿店での開催が好評を得て、渋谷ヒカリエ、日本橋高島屋S.C.、マルイなど、都内の主要な会場で販売することができた。

 

ナッツトーキョーと同じタイミングの2017年、音仲氏は自身の会社である株式会社ぽかぽかてーぶるを立ち上げた。

その後、2019年にナッツトーキョーから音仲氏は離れることになり、自身の会社が活動の拠点となった。

「ベトナムの食文化」のプロジェクトに参画

その後、バインミートーキョーのプロジェクトに迎えられることになった。最初はコンサルティングとプロデューサーとして関わった。

そのプロジェクトは「ベトナムの食を日本で盛り上げたい」というコンセプトであった。

ベトナムで繁盛しているバインミーのキッチンカーがあって、それを日本で取り入れることができないかというプランから始まった。

開業に際して作成されたロゴは記憶に残る

 

リサーチのためにベトナムや日本の全国で食べ歩きを行なった。ベトナムは米文化だからパンは米粉100%だろうと思っていたが違っていた。マーガリンやラードがたくさん使われていて、1日に何食も食べ歩いていた時に体に負担を感じた。

そこで、「毎日食べ続けることができるバインミー」をコンセプトにして、さらにグルテンアレルギーの人が食べられるバインミーをつくってみたらどうかと考えた。これは時代のニーズにもかなっている。

 

そこで生み出された「バインミートーキョー」のメニューはこうなっている。

パンは米粉100%のものを開発。ベトナムでの具材の定番は、レバーパテ、ベトナムハム、なます、パクチー、万能ネギとなっていて、それにアレンジを施した。

レバーパテには通常、ラードやマーガリン、乳脂肪などがたっぷりと含まれているが、これらの代わりに米麹甘酒でコクや甘味を付けている。ラードの代わりにカシューナッツを使用して、コクや油分を補った。

「バインミートーキョー」のバインミーはすべて和風テイストとなっている。一般的に、ヌクマムという魚醤を使うが、その代わりに秋田のしょっつるを、バインミーの具材の味付けに使われるシーズニングの代わりに丸大豆100%の豆たまりを使用している。

エスニックよりも「和風」を感じさせる味わい

 

実店舗を持つことでよりリアルに食の未来を考える

「バインミートーキョー」の立地として想定したのは、インバウンドが多いとか観光地といった場所ではなく、オフィス街でありかつ高級住宅街でもあり、それなりに乗降客があるところであった。そこで、路面で10坪という現在の物件が上ってきた。バインミーを食べるシーンとして、神宮球場で観戦しながら、花火大会を観ながら、代々木公園でピクニックの気分で……などをすぐに思い描くことができた。

 

さて、オープンして以来8カ月が経過した同店は、商品の性格から目的来店のお客が多い。地元の人が8割を占めるが、グルテンフリーの商品を求めて、横浜から、埼玉からといった遠方からのお客も多い。テイクアウトは6割程度を占める。

 

営業時間はモーニング(平日のみ)8時30分~10時、ランチ/ブランチ平日11時30分~15時、土日祝10時~15時、カフェタイム平日14時~15時、土日祝16時~18時という具合に昼型の営業となっている。ディナー帯はシェアキッチンも想定している。

 

冒頭で述べた通り、音仲氏のビジネスは「バインミートーキョー」という実店舗がある一方で、さまざまなPR、広報の代行、食品会社のメニュー開発など多岐に渡っている。その中で実店舗が存在することによって、音仲氏は「仕事に広がりができた」と語り、クライアントからの信頼度は高まっているという。

 

そして、食に関わるビジネスマンとして、これからを読み解く力を蓄えてきた。

それらを筆者がインタビューした範囲で、箇条書きでまとめるとこのようになる。

・時代の変化、流れを読んで対応していくこと

・健康と食との関連性は無視できない

・お客様はリアルレストランのありがたみを改めて強く認識する

・店側は「営業している意味」というものを明確に打ち出すことが必要

 

フードコーディネーターとしての音仲氏が、たくさんの社会と関わり、それを「バインミートーキョー」にフィードバックすることによって、食ビジネスの未来をよりリアルに見通すことができているようだ。

イートインはカウンター席のみ。キッチンはテイクアウト需要等で忙しく稼働

店舗情報

店舗名 Banh Mi Tokyo
エリア 外苑前
URL https://banhmi-tokyo.com/

運営企業情報

企業名 株式会社ぽかぽかてーぶる
URL https://pocapocatable.com/

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