「やきとり家すみれ」という焼鳥店のチェーンがある。同店を展開するのは株式会社すみれ(本社/東京都渋谷区、代表/湯澤忠則)。食材は大山どりにこだわり、「から揚げ」「チキン南蛮」「よだれ鶏」や「ひなトロ」「王様レバー」「生つくね」といったクオリティの高い看板商品をアピールしており、お勘定は3000円以内で収まる。メニューは他にカテゴリーとして「変わり串」「サラダ」「ご飯物・麺類」「スイーツ」など、バラエティに富んでいてファミリーも楽しむことができる。業種の固定概念を打ち破り、大衆的な客単価にして、客層を広げるという在り方は飲食業チェーンの王道と言っていい。
さて、飲食業のFCビジネスでは2000年あたりから瞬く間に1000店体制に成長したレインズインターナショナル(以下、レインズ)のことが神話のように存在する。

同社の原点は「牛角」で、ハレの日需要であった焼肉を客単価2800円の業態にすることで、大衆居酒屋の感覚で楽しむことができるようにした。

 

「牛角」が誕生する元となったのは西山知義氏(現、ダイニングイノベーション代表)が営んでいた不動産業のレインズホームである。すみれの代表、湯澤忠則氏はこの会社に入社した。それが、現在の「すみれ」を展開する原点となった。

 

西山氏は1996年に焼肉店を手掛け、後に「牛角」のFC店を誕生させてから本格的に飲食FCの道に進んでいった。湯澤氏は西山氏の参謀役として常に新規事業の最前線に立っていた。2006年にレインズがMBO(経営陣による自社買収)を行ったタイミングで高級業態を持って独立した。

 

湯澤氏は飲食業のFCビジネスを志向するようになり、2009年に祐天寺(東京都目黒区)で元々直営店として運営をしていたもつ鍋店の物件を業態変更して「すみれ」を立ち上げた。FCの仕組みを作るために検証を徹底的に行い、2号店となるFC店を明大前(東京都世田谷区)にオープン。ここまで2年10カ月の時間を費やした。2013年3月に株式会社すみれを設立。2020年11月現在で92店舗、うち直営店は2割を占めている。

 

新型コロナ禍でも法人が着実にFC店を展開

新型コロナ禍で出店計画を見直すところが多いが、「すみれ」では順調に出店をしてきた。

6月立川南口店(東京)、7月柏西口店(千葉)、10月長野駅前店(長野)、11月富士宮店(静岡)、これら4店ともすべてFC店で、すでにFC展開の実績のある法人が営んでいる。「すみれ」のFCは経営を最適化するフルサポートを行っていることから、FCを営んでいる経営者にとっては手掛けてみたいブランドである。

湯澤氏は今日の飲食FCの状況についてこのように語る。

「2000年代に飲食のFCが数多く誕生し、これらを手掛けたオーナーさんにとって15年ほどが経過している。回収も終わっていることから、今日はFC店舗の業態の代わり時ではないか」

 

「すみれ」が誕生したのはポスト飲食業FCブームといったタイミングだが、湯澤氏が「牛角」の展開で学んだことが十二分に生かされている。客層を幅広く想定したメニュー構成もさることながら、特に現在の客単価2800円をぶれないようにしている。客単価3000円を超えるとファミリーは来店しづらくなり、また「鳥貴族」や「串カツ田中」のような2300円あたりより500円高い空白マーケットになっている。「Go Toイート」によって客数は80%まで戻ってきた。土日はファミリーや仲間同士の来店で賑わい新型コロナ禍以前の状態になっている。「すみれ」の業態設計の強さが発揮されていると言えるだろう。

 

「冷凍唐揚げ」をはじめ新しい挑戦が奏功

新型コロナ禍対応の行動は俊敏であった。

まず、テイクアウトから始まり、7月にはグランドメニューを変更。9月に食品スーパーの「オオゼキ」で冷凍唐揚げを発売。店舗では半額セールを展開。10月1日から11月30日まで生ビールのサブスクリプションを行った。そして、11月2日からスタートした「90分ショートステイコース」が注目を浴びている。

新型コロナ禍では、まず店頭でのテイクアウト販売から手掛けた

 

食品スーパー「オオゼキ」で冷凍唐揚げを販売。「冷凍」を学んだことでさまざまな可能性が見えてきた

湯澤氏は、これらの試みの中でオオゼキで行った冷凍唐揚げは特に大きな学びを得ることができたという。この企画は新型コロナ禍になってから、オオゼキの担当者よりビールメーカー経由で提案があったもの。オオゼキの発想は「すみれ風の唐揚げ」ではなく、「すみれで出されている唐揚げ」を販売するということ。オオゼキの協力メーカーが調理・加工を行い「すみれ」の店舗と同じ価格(「大山どりのから揚げ むね肉」250g 638円、「大山どりのから揚げ もも肉」250g 778円)で販売した。

湯澤氏はこう語る。

「これまでわれわれには『食材を凍らせる』という発想はありましたが、『出来上がった商品を凍らせる』という発想はなかった。また、飲食店にとって『冷凍品を使う』ということを良しとしない風潮もあった。しかしながら、この商品は実によくできていたことから、さまざまなアイディアをもたらした」

 

ちなみに、主として東京都下の住宅街で展開するオオゼキは「すみれ」が出店するエリアとも重なり、「すみれ」の冷凍唐揚げをお客が購入することは、「すみれ」への来店にもつながった。この商品は、2万4000食をつくり、約2カ月間販売して売切れ終了した。

 

「冷凍唐揚げによって、テイクアウト、デリバリーやECも含めてプロダクトのチャネルが広がった。『冷凍』を勉強したことによって、商品の安定化やオペレーションの改革につなげることができた。新型コロナ禍だからこそチャレンジできたアウトプットだ」(湯澤氏)

 

中途半端ではなく思いっきり大きなインセンティブを

「半額セール」は、来てくれたお客のすべてが半額になるというフェアを1週間、LINEの友だち限定で期間延長等ということも別途行った。これによって客数が25%増えて、新しい客層を獲得できた。

「当初、新型コロナ禍で半額にする」というのはブランドイメージを損ねるのではないかと悩むこともあった。しかし、お客様にたくさん来ていただこうと考えると、中途半端にやるのではなく、思いっきり大きなインセンティブでやろうと振り切ったことが奏功した」(湯澤氏)

飲食業界は、新型コロナ禍でアルバイトがシフトに入れない場面が多々あったが、客数の増加をもたらしたこの企画はその一助になったようだ。

使用方法のルールを分かりやすくすることでリピーターを獲得した

生ビールのサブスクリプションは、1枚500円の定期券を購入すると、通常398円の生ビールをサービス期間中に何杯飲んでも、グループで飲んでも半額になるというもの。この企画はビールメーカーがアサヒビールに切り替わったタイミングであったこともきっかけとなった。この定期券は10月だけで1万1132枚を販売。このうち約30%の人がリピーターとなった。

 

「90分ショートスティコース」2000円が、にわかに注目を集めた

そして、今注目を集めているのが「90分ショートステイコース」一人2000円。新型コロナ禍で「短い時間で食事会を済ませたい」という要望を察知して、一般的には120分のものを90分にした。「Go To イート」を利用すると実質的に1000円で利用できるということから訴求効果は高い。

 

 

 

 

 

 

 

地方都市のロードサイド立地が好調

全店の動向を見ると、地方都市のロードサイドにある店舗は新型コロナ禍の影響が軽微で回復も早い。店によっては新型コロナ禍前に対して売上が100%を超えているところもある。

 

新型コロナ禍で飲食業における「適正立地」の概念が変わってきている。ターミナル立地や飲食店街にこだわる必要がなくなった。このような環境から、ロードサイドは「すみれ」にとって今後有望な立地と言えるだろう。

 

湯澤氏は新型コロナ禍で経験したことの中で、最も意義のあることだと捉えているのはFLコストの管理に対する考え方がシビアになったことだと言う。

「新型コロナ前よりも新型コロナ禍の方がFLコストは低くなっている。ぎりぎりの状態になったことでそれだけ管理の仕方に工夫が凝らされた。収益を上げるためにいかに『0.1%』という数字に執着することができるか、ということが重要。これからバックヤードのIT化を進めて自動発注なども検討していきたい」

 

「筋肉質の経営体質」という言い方があるが、「すみれ」はこの間挑戦する姿勢を崩さなかったことから、このような体質が備わってきたと思われる。

店舗情報

店舗名 やきとり家すみれ
URL https://y-smile.co.jp/

運営企業情報

企業名 株式会社すみれ
URL http://smile.y-smile.co.jp/

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