2021年の幕開け早々、1都3県に緊急事態宣言が発令され、13日には大阪・京都・兵庫の3府県に拡大しました。飲食店には20時までの営業時間短縮と、酒類の提供は19時までと要請され、厳しい状況が続いています。そんな現状を打破すべく、飲食業界は新型コロナウイルスの感染拡大以降、高まるテイクアウト・デリバリー需要へのアプローチを強化してきましたが、まだまだ終わりの見えない「巣ごもり消費」や「おうちご飯」に対して、さらなる取り組みが求められているのも事実です。今回は収益を生み続けるために、”巣ごもり”を余儀なくされている消費者に画期的な視点からアプローチしている事例をご紹介します。

 

まずご紹介するのが、京都で30年以上続くオムライスの名店「ザ・洋食屋・キチ・キチ」(オーナーシェフ:幸村元吉氏)です。こちらでは、ふわふわとろとろのオムライスを素人でも作れるように、フライパンの開発を行いました。

同店は、国内のみならず海外の観光客からも「予約の取れない名店」として知られており、そのオムライスは「黄色いドレスをまとった女王様」と形容されるほどの美しさです。当然、素人が作るのは困難な代物ですが、同店のふわとろオムライスを家庭で再現できるフライパンをオーナー自らがプロデュースしてくれました。一般的なフライパンよりも先端に深さと丸みを持たせたことで、無理なくひっくり返すことができると言います。

2020年11月から先行発売しましたが、目標の約4倍の予約がありました。「極上のふわとろオムライスを食べたいけれど、外出を控える必要のある現状では難しい。なんとか自宅で作れないか」と考えているユーザーがいかに多かったかが伺えます。新型コロナの流行以前からフライパンを作る構想はあったと思われますが、“おうちごはん”の需要が急激に伸びている「今」に先行発売したのは、戦略としては絶妙です。

 

次に紹介するのは、プロの料理人の技・レシピを動画で販売している取り組みです。株式会社BNF(代表取締役:赤沼和哉氏)が運営するレシピサイト「スターシェフのレシピ」では、ミシュラン一つ星獲得店舗から暖簾分けした蕎麦店「銀座 sasuga 琳」(東京都中央区)のオーナーシェフや、岩手県のブランド牛を独自の熟成方法でうま味を凝縮させた熟成肉が好評の「格之進」(東京都港区他10店舗)の商品開発担当者など、有名店のシェフのレシピ動画を販売しています。 

同サイトではレシピはもちろん、料理人の最大のアドバンテージである、調理の際のちょっとした工夫やコツなどの調理技術を惜しみなく披露してくれています。とはいえ、焼き加減などの微妙な差異で味は変わってしまうため、なかなか名店の味を自宅で再現するのは難しいのではと考えがちですが、そのような微妙なニュアンスやタイミングも動画でしっかり確認できます。

レシピ配信は、国内ユーザーに向けてだけではありません。
海外のユーザー向けに、日本食のレシピを多言語化して配信しているサイトもあります。それが、
株式会社Fun Japan communications(代表取締役社長:藤井大輔氏)の運営するサイト「Fun!JAPAN」です。天ぷらや寿司といった海外での日本食の定番から、煮物、コロッケといった家庭料理まで、さまざまなレシピを繁体字、タイ語、インドネシア語、ベトナム語、英語にて配信しています。

レシピ動画だけでなく、会員限定でオンライン料理教室も開催しています。日本好きの外国人の中には、日本食をきっかけとして日本に興味を持った方が多いこともあり好評でした。海外旅行が難しい情勢だからこそ、自国にいながらも日本食を楽しみたいというユーザーに注目されていると思われます。海外との自由往来が再開されたあかつきには、ぜひ来日して本格的な味を堪能していただきたいものです。そのための配信サービスとも言えそうです。

近年のグローバル化や新型コロナの流行など、飲食業界も時代の変化にあわせて、ユーザーにさまざまな方法でアプローチする必要に迫られてきました。今回紹介した例を含め、その動きは今後、加速度を増していくと思われます。従来通り、おいしい料理を提供していれば客が来店してくれるという戦略だけでは、利益を上げ続けるのは難しくなっていきそうです。常に新しい戦略を考え、アイディアを生み出し、挑戦することが必要になるでしょう。

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