東京メトロ東西線・神楽坂駅から徒歩2分、出版社の新潮社ビルの斜め向かいに、立ち飲み居酒屋「魚匠」がある。正面がガラス張りで、店頭に筆文字で「魚匠」と小さく描かれた看板にセンスの良さを感じられる。

 

同店を経営するのは株式会社ロスジェネ・マネジメント(本社/東京都新宿区、代表/長谷川勉(冒頭写真左))で、2020年7月にオープンした。代表の長谷川氏は1970年10月生まれで、飲食業界のさまざまな業種で経験を積み、その後コンサルタント活動をしてきた。つけ麺ブームの時には1日700杯を売るラーメン店をプロデュースした。

 

長谷川氏がこれまでの飲食業経験の中で考えを巡らせたことは、「飲食店が失敗しないロジック」というものであった。そこで到達したものは「類似品を扱わない」ということだった。50歳になる目前に「飲食店を再び立ち上げよう」と決意して、現在同社の取締役料理長を務める笠原章太氏(冒頭写真右)がパートナーとなり、起業するための物件を探し求めた。

 

2020年1月から探し始め、候補地は原宿、代官山、表参道、北参道、北千住、南千住、阿佐ヶ谷、南阿佐ヶ谷と、高級住宅街から、繁華街、下町など多種多様であったが、最終的に現在の神楽坂に決めた。そのポイントは、「街と住民が一体化している」(長谷川氏)と感じたからだ。ここにとても貴重な「神楽坂ブランド」が存在していると確信した。

さりげないアプローチが成熟した雰囲気の神楽坂になじんでいる。

 

看板メニューを「青魚」として個性を際立たせる

立ち飲みとして看板メニューを「青魚」「なめろう」とした。神楽坂で店を構えるに際して、知人の経営者も「神楽坂のお客様は青魚の価値を理解してくれる」と後押ししてくれた。

 

なめろうと言えば「アジ」が一般的であるが、これは長谷川氏の「類似品を扱わないこと」に反することから、新鮮な「イワシ」のなめろうを提供することにした。また、梅たたき、オイルサーデン、フライ、天ぷら、梅しそ揚げ、冷製トマト煮とバリエーションを広げて600円台で設定した。この特徴のはっきりとしたラインアップによって、周辺の飲食店とは明らかに差別化され、それを体験した顧客に印象深く記憶に刻まれてリピーターとなった。客単価は4000円前後となっている。

 

青魚の品ぞろえでは「生サバ」「〆サバ」も打ち出した。このように青魚を看板商品にすることで、「毎日試食して、自分の肌つやが日に日に良くなっていくことを実感している」と長谷川氏が語るように、常連客も同様の効果を感じ取っているようだ。

 

酒はビール、ワイン、焼酎などあらゆるものをそろえていて、日本酒に関しては青魚にマッチする辛口を6種類、90㎖800円、1合1300円で提供している。

 

店舗設計は、新国立競技場を設計したことで話題の隈研吾建築都市設計事務所に在籍していた人物を紹介された。長谷川氏が伝えたイメージは、「清潔感」「女性が入りたくなる雰囲気」ということだった。「立ち飲みのイメージや店構えから〝おやじくさい″というものを払拭したかった」(長谷川氏)という。カウンターの高さも一般的な110㎝のものに対して、女性をターゲットにして105㎝にした。店舗規模は10坪で、マックスで25人が利用できる。天井が高いことから、解放感があって心地よい。

「立ち飲み」という呼び名から連想されがちな旧来の感覚は全く感じられない

 

オープンしてから、狙い通りに女性客が多く来店するようになった。5割を下回ることがないという。年齢層は20代から50代あたり、一人で来店するパターンもある。若いカップル、中高年の夫婦も来店、また乳母車を押した顧客が来店することもある。これも長谷川氏が神楽坂に当初感じ取った「街と住民が一体化している」ことの現れだと確信している。「魚匠」に来店する顧客は皆、クオリティがしっかりとした飲食店をカジュアルに利用する術を心得ている。

 

「魚匠」では2021年1月5日より、11時45分から14時まででランチラーメンを営業している。新型コロナ禍の時短営業要請によって夜の営業が20時までとなったことから、小規模の居酒屋でランチラーメンを導入する事例が増えてきている。その点「魚匠」は同年1月の緊急事態宣言が発出される以前からのことで、立ち飲みの経営効率という点では先験的な取り組みと言えるだろう。

 

ランチタイムを有効活用するためにラーメンを導入

ランチラーメンに関しては、かねてどのような業者に依頼するべきか検討を重ねていたが、2020年の年末に日本居酒屋協会の忘年会に参加したところ、長谷川氏が座った席の近くに、ラーメンプロデュースを手掛ける株式会社テイクユー代表の大澤武氏がいて、そこでかつて長谷川氏がつけ麺をプロデュースしたことなどを話したことがきっかけとなり意気投合した。

「貝だし 味玉醤油らぁめん」950円、2種類のチャーシューで満足感を高めている

テイクユーでは、鶏白湯をはじめさまざまなラーメンのレシピをストックしていて、長谷川氏が大澤氏と打ち合わせを重ねていった結果「貝だし」を採用することにした。これであれば、「魚匠」のメイン営業の看板商品とストーリーが一貫していて、お客様に分かりやすく浸透する。こうして、麺、スープをはじめとしたラーメンの商品をワンストップで供給するテイクユーに依頼することにした。

 

ラーメンは「貝だしらぁめん」として「醤油」「塩」、「貝まぜそば」の3種類をラインアップ、それぞれ850円、950円、1100円の価格設定をしている。また「ごはんもの」としてあさりの炊き込みご飯を、普通が250円、小サイズ150円をラインアップしている。

 

ランチラーメンの告知は現状SNSのみで1日20食以上(客単価950円)となっている。一人で来店する女性客も定着してきていて、立ち飲み営業と同様に狙い通りとなっていることを確信している。

 

ランチラーメンを行うのは火曜日から土曜日までで、立ち飲み営業は同日の16時~20時(現状)。日曜日は15時~20時の営業でランチラーメンを行わない。これは、ランチラーメンでの目的来店にもつなげていきたいと考えているからだ。これからは販促を拡大してランチラーメンと立ち飲みの二毛作を定番化していくという。

 

長谷川氏は、神楽坂を「街と住民が一体化している」という感覚を抱いているが、「魚匠」そのものも神楽坂と一体化してきているようだ。

品ぞろえはシンプルだが、ラーメンを目的に来店する顧客が定着してきた。

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店舗情報

店舗名 魚匠
エリア 神楽坂
URL https://uosho-kagurazaka.owst.jp/

運営企業情報

企業名 株式会社ロスジェネ・マネジメント
URL https://uosho-kagurazaka.owst.jp/

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