2020年4月にバーを間借りという形で、デリバリー専門店としてオープンしたサラダショップ「GRIT TODAY(グリットトゥデイ)」(運営/GRIT株式会社、代表/田丸 寛仁氏)。オープン後すぐに人気を博し、同年8月には店内飲食やテイクアウトにも対応する実店舗を恵比寿に出店しました。「健康をもっと、身近に。」をテーマに、無農薬水耕栽培のレタスなどを使用した栄養価の高いサラダを提供しています。

健康に気遣うだけでなく、環境への配慮も行っており、料理の提供時にはプラスチック容器ではなく、バガスモールド容器(環境に優しいバイオ容器)を使用しています。

 

実は、このバガスモールド容器の採用は気候問題や貧困など国際的な課題について定めた国際目標、SDGsにも貢献する取り組みです。SDGsは全部で17個の目標がありますが、中でもバガスモールド容器に最も関係するのが、自然環境に負荷をかけない生活に関する「目標12.つくる責任つかう責任」です。今回は、SDGs達成に寄与する同社の取り組みについて、創業メンバーの椿本晶子氏に伺いました。

目標12について詳しくはこちら→「SDGs達成にむけて飲食業界ができること-目標12.つくる責任つかう責任-」

 

「GRIT TODAY」から始めるプラスチック削減

―「GRIT TODAY」を出店した理由を教えてください。

創業チームは3人いるのですが、私も含めて全員が前職で働き過ぎにより体調を崩した経験がありました。そこから、「毎日、忙しく働く人に健康を与えよう」というテーマのもと、忙しい人でも手軽に栄養補給できるエネルギースタンドのようなものを作りたいと考えました。

創業メンバーのうちの一人が無農薬レタスの水耕栽培を行う生産者でもあったので、シャキシャキ感が特徴のこのレタスを使用して、食べることで健康的になれるメニューを開発しました。

福井県の工場「NOUMANN」で栽培される無農薬水耕栽培のレタス

 

―環境問題に取り組もうと思ったきっかけを伺えますか?

私は前職でリユース商品に関わっていたことなどから環境問題に関心がありました。2020年7月からプラスチック袋の有料化が義務付けられ、プラスチック廃棄量の削減が声高にうたわれていたこともあり、環境への配慮として、開業当初から紙袋で商品の提供を行っています。紙袋は、プラスチック袋よりもおしゃれなデザインにできることもポイントでした。

私を含めて創業メンバーは全員、飲食店に初挑戦だったため、実際に運営を開始したところ、日々出るごみの量がとても多いことに非常に驚きました。地球へ配慮することの必要性を、これまで以上に強く感じるようになったきっかけでした。

 

―地球への配慮という観点から、どのようなことをされたのでしょうか?

サラダボウルなどの料理を提供するためにプラスチック容器を使用していたのですが、より地球に優しいものを導入しようとリサーチを開始しました。デリバリーでの開業を開始した4月には既に当社の商品に適した容器を探し始め、そこから数カ月で計100種類近くのカタログを取り寄せました。選定の際には、見た目や当社のサラダの味を一番おいしい状態でお届けできることなどを重要視して行いました。

フタがきちんと閉まるか、時間がたっても野菜のシャキシャキ感や新鮮さが保たれるか、持ち運びやデリバリーの際に容器が崩れないかなどを確かめながら、サンプルを取り寄せ数多く試してみました。その中で見つけたのがバガスモールド容器でした。

スープやサラダの提供にはバガスモールド容器を使用している

―バガスモールド容器はどのような容器なのでしょうか?

バガスモールド容器はサトウキビの絞りカスである「バガス」を再利用して作られたエコ容器です。素材はバガスから作られた紙で、特徴はいくつかあるのですが、中でも最大のポイントとなったのがおいしさをキープできることです。素材や表面の耐水加工などによって、ドレッシングが容器に染み込んでしまうのですが、染み込み量が少なく野菜としっかり混ざるか、当社の売りであるレタスのシャキシャキ感を維持できるか、と多角的に試した結果、バガスモールド容器が最適だと判断しました。

もう一つのポイントが、電子レンジを利用できる点です。サラダ以外にスープの販売も行っているため、器を変更することなく電子レンジで温められます。また、紙なので、食後は簡単にコンパクトに折りたたんで捨てられます。通常のサラダボウルサイズでも、携帯電話くらい小さくたためます。

 

―いいことづくめの容器ですが、導入はスムーズに決まったのでしょうか?

コスト面がハードルとなり、導入までは紆余曲折ありました。バイオ容器は通常のプラスチック容器と比較すると、コストがかさみます。実際にバガスモールド容器を導入した場合の試算をすると、想像以上にコストが上がるため即決という訳にはいきませんでした。当時、バガスモールド容器は日本国内で生産しておらず、大量ロットで購入する必要があったため、必然としてコストが跳ね上がりました。

社内で何度も何度もミーティングを繰り返し、最終的には「地球に住んでいる以上、地球を傷つけて生きていくのはおかしい。地球に優しい生活をする必要がある」という私の強い主張に他のメンバーが同調してくれた形で導入が決まりました。もちろん、飲食店を営業するからには、利益を上げることは最重要事項です。ただ、「健康をもっと、身近に。」を届ける上で、地球環境を考えずに健康を届けることは違うのではないかという考えに至りました。

 

―実際に導入してみていかがでしょうか?お客様への影響なども感じますか?

プラスチックを使わないという選択が、環境問題を発信することにつながっていると考えています。これまで意識したことがなかったというお客様にも、当店を利用することで環境問題について考え、プラスチックの使用を削減するというを選択肢を持っていただけるようになると思います。当店以外の場所でも、環境に配慮していただけるようになるとうれしいですね。

今後は世界の環境問題、社会問題にアプローチし得る取り組みを考えています。例えば、容器を毎回使い捨てのものにするのではなく、繰り返し使用できる“マイボウル”を販売するという構想です。シリコン製でロゴが入ったようなボウルを考えているのですが、こちらは感染症防止対策の部分などをクリアできれば、すぐにでも開始したいと考えています。

また、お客様の声からビーガンメニューの導入を開始しました。多様性を受け入れる社会への一歩につながることを期待しています。プラントミート(植物由来の原料でつくられた肉)を使用したメニューも開発中です。動物性たんぱく質(牛肉や豚肉など)は飼料や加工後の肉の搬送、牛や豚の成長に必要な水や飼料など、その生産過程で資源やエネルギーを大量消費しているため、資源保護という観点からプラントミートのサラダを提供したいと考えています。

「GRIT TODAY」の運営を通して、環境問題にさまざまな角度からアプローチしていきます。

恵比寿に店舗を構え、人気を博している「GRIT TODAY」

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