一般的なスーパーマーケットでも農薬や化学肥料を使用していない有機食品のコーナーを設け、販売されているのをよく見かけるようになりました。徐々に有機食品コーナーが広くなってもおり、消費者の食材の品質に対する関心が高くなってきているように感じます。

農薬を使用しないことは私たちの健康だけでなく、土壌や河川、海洋の汚染を防いで生物多様性を保つなど、地球にとっても優しい取り組みです。

そんな地球に優しい有機野菜の提供を長年続けている企業があります。ミートソースパスタを看板メニューとする「TOSCANA」を始めとしたイタリアン業態を関東を中心に展開している株式会社イタリアンイノベーションクッチーナです。今回は、SDGs(※1)にも関連する食材へのこだわりなどについて代表取締役会長 四家公明氏に伺います。

(※1)SDGsとは、貧困や飢餓、環境問題など、国際的に取り組む必要がある課題について定められた国際目標。

 

※以前、株式会社イタリアンイノベーションクッチーナの代表取締役会長  四家公明氏(冒頭写真)に当サイトでインタビューをさせていただきました。
インタビュー記事はこちら⇒名物メニューを外販商品化して、お客との信頼を強くする

―貴社の飲食店では有機野菜のみを使用しているのでしょうか?
はい、22年ほど前から有機野菜を使用しています。きっかけは、お客様から有機食材を薦められて食べたことです。そのおいしさに驚きました。

当時、高齢化社会の中で健康志向の高まりを感じていたこともあり、有機食材の使用を本格的に開始しました。食材だけでなく、無添加調味料など「無添加」にもこだわった料理を提供しています。

 

実は、私自身子どものころに添加物たっぷりの食品を食べたときに、体調不良になった経験があり、添加物の怖さを実感していました。そのため、お客様には体にいいものを食べてほしいと思い、添加物の使用を避けるようにしました。

 

また、化学調味料を摂らず、有機食材を中心に食べることはとても健康にいいです。私が事あるごとに有機食材が健康にいいと伝えるため、社員も同様の食生活を行っているのですが、入社後花粉症などのアレルギーの緩和や健康診断の数値の改善がみられたというスタッフが多々います。

一般的な野菜などと比較すると有機野菜は倍以上の仕入れ値になることもありますが、お客様の健康に貢献したいので、身体にいい食材を使用し続けたいです。

 

―高いコストの食材を提供し続けるの大変ではないですか?

確かに安いものを販売した方が利益は大きいかもしれません。ですが、私は金儲けの前にお客様に当店を通じて健康に、幸せになってほしいと考えています。この考えを店舗運営に反映すると同時に、社員に周知できるように社訓として制定しています。

 

当社の社訓は、

社員の幸せを通して社会貢献する
一、自分たちの利益だけを目的とせず社会に貢献できる企業であります!
二、会社の規模拡大と共に幸せの規模を拡大できる強い企業を目指します!
三、そのために目の前の一皿を真剣に取り組みます!

です。

健康であることは、幸せにつながります。体調が良好だと考え方も前向きになり、反対に体調不良のときには気持ちが沈んでしまうという経験は誰にでもあるでしょう。お客様の健康を第一に、「料理を通して多くの人を幸せにする」という社是も制定しています。

 

―徹底的にお客様の健康に貢献したいとお考えなのですね。先ほど、有機野菜だけでなく無添加にもこだわっているということでしたが、料理を提供する上でほかにも心掛けていることはありますか?

当店で食事することでお客様に感動してもらいたいと考えているため、食材そのものの魅力を最大限引き出すようにしています。有機野菜はそれ自体が本当においしいので、しっかり味付けする方が食材の魅力を十分に味わえなくなります。

私は、料理人は技術と手間暇をかけてでも、お客様が一口食べるだけで感動するような料理を提供する必要があると考えています。化学調味料を一切使用せず、一番おいしい状態で料理を提供することを常に心がけています。

例えば、ある地域の特産品や旬の食材、有機野菜・肉(無農薬の牧草を食べて育った家畜など)を使用したメニューの場合は、それらの特徴、体への影響、生産することの大切さといった情報をお客様に説明して、意識してもらうようにしています。

生産地についての説明は、現在実施しているSDGsに関連した取り組みにもつながっています。

 

―どのようなSDGsに関連した取り組みを行っているのですか?

店舗で「直接クラファン」というのを開始しました。これは店舗に専用ケースを用意し、クラウドファンディングとして資金を集めるというものです。
直接クラファンの目的は、大きく分けて二つあります。

 

一つ目は当社が有機野菜を仕入れている「子供たちの未来農園」という生産者さんの応援です。

同農園では化学肥料を一切使わないなど、土壌作りからこだわり、安心・安全な野菜を育てています。農薬は土地を化学物質で汚染し、地中の微生物などの多様性を脅かす恐れもあるため、無農薬での栽培は土地の持続可能性が高いです。

 

また、同農園ではひきこもりの若者などを中心に、農業を通じて社会で活躍するための支援を行っています。地球に優しい有機野菜の生産を続けていただきたいと思うと同時に、若者支援への取り組みに共感しました。

当社でも何か協力できないかと考えたときに、同農園の取り組みの認知度が高まるようお客様にお伝えしたり、クラウドファンディングで資金を調達したりすることを思いつきました。集まった資金で必要な農機具などを購入いただければと思っています。店内の専用ケースにはこの農園について説明したポップをつけて、取り組みを紹介しています。

株式会社イタリアンイノベーションクッチーナ代表取締役会長四家公明氏。SDGsについての知識を深める

-二つ目についても詳しく教えてください。

海を守る活動への支援です。当社スタッフが実際に海岸に行き、ごみ拾いなど海の清掃を行う活動をしています。

現在、海の汚染は大きな問題となっており、海洋資源にも悪影響を与えています。魚がマイクロプラスチックという極小プラスチックを飲み込んでしまい、それを人間が食べると体内にプラスチックが蓄積され健康被害をもたらすと言われています。海を守る活動は、私たちがおいしい安全な魚を食べ続けるために必要不可欠な取り組みなのです。

各取り組みへの資金集めとして、それぞれ専用の「直接クラファン」ケースを用意しています。賛同していただいたお客様が、ケースにお金を入れていってくれます。農場が整備されて、おいしい野菜をたくさんつくれるようになったり、海洋のごみが減り汚染が少しでも改善されたりすることで、応援してくれたお客様のもとに、素材の味が濃い、安全な食材となって還元されるという良いサイクルを生んでいきたいです。

店頭に直接クラファンのケースを並べている

「直接クラファン」のアイディアは、どのように思いついたのでしょうか?

もともとは従業員にお客様からチップを渡せるようにケースを設置しようと考え、スタッフごとに名刺を付けた専用のチップケースを作ったのが始まりです。

店舗で働くスタッフにとって、お客様の「おいしい」や「ありがとう」はもちろんうれしいですが、より従業員の満足度の向上を図りたいと考えたものでした。

ただハードワークなだけでは、モチベーションは上がらないですよね。お客様が喜んでくれた事実が形になれば、やりがいにつながります。オンラインで同様のことができるシステムも導入しており、お客様には、どちらでもお好きな方をご利用いただけるようにしています。
定量的に見れるので、各スタッフを適切に評価することもできます。

このチップケースの名刺を生産者さんの紹介ポップにすれば、直接クラファンができると思いつきました。

 

働き方に関してはSDGsでも「目標8」で定められています。「目標8」について詳しくはこちら→SDGs目標達成にむけて飲食業界ができること-目標8.働きがいも経済成長もー

 

―SDGsにご関心を持たれたのはどうしてですか?

当社の幹部からSDGsについて聞いたからです。それまで意識したことはなかったのですが、企業として無視することはできない、重要な考え方だと感じました。

例えば、採用面接などで「SDGsに向けて取り組んでいることはありますか?」と聞かれて、答えられないと恥ずかしいですよね。そこで、SDGsに関してのリサーチを進めました。調べていくと、すでに当社が取り組んでいることの中でも有機野菜の推進などはSDGsと関係があり、当社の考え方と通ずる部分があると感じています。これらの取り組みは、今後も積極的に進めていくつもりです。

 

―今後の展開はどのようにお考えですか?

これまでは当店にご来店いただくお客様に対する取り組みが中心でしたが、より多くの方の健康や幸せに貢献したいと考えています。そこで、当店の人気メニューである「日本一おいしいミートソース」のインターネット販売を開始しました。

 

化学調味料は使用しておりませんし、麺も健康にこだわった食材を使用しています。
麺はオーガニックの古代小麦の全粒粉を使用して作っています。古代小麦は品種改良がされておらず、多量に摂取すると大腸に負担がかかると言われているグルテン(※2)の含有量が一般的な小麦の数十分の1という特徴があります。また、全粒粉は玄米のように表皮と胚芽を削っていないため、小麦本来の栄養をそのまま取ることができます。

 

現在は日本国内のみでの販売ですが、より保存期間が長いものを開発することで、輸送に時間がかかる海外へも送ることができるようになります。世界中に健康を届けるために、生活に困っている方々への配布なども考えています。

(※2)グルテンとは、小麦粉などの穀物に含まれるたんぱく質。

日持ちがするよう開発された麺とミートソース

 

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店舗情報

店舗名 TOSCANA
URL https://italian-innovation-cucina.jp/shop-toscana

運営企業情報

企業名 株式会社 イタリアンイノベーションクッチーナ
URL https://italian-innovation-cucina.jp/

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