リーダーにとって最も重要となる資質とは、「この人についていきたい」と思わせる動機ではないか。そのきっかけとなるのはリーダーが現状に問題意識を抱き、それを解決しようとするビジョンが明確で、それに向けて力強く動いていることを目の当たりにした瞬間である。

 

このようなことをひらめいたのは、この度、ヒカリッチアソシエイツ代表の高橋夕佳氏(冒頭写真)に初めて取材をする機会を得てのこと。まさにリーダーの資質を感じた。高橋氏は美形であるがサバサバとしていて、自身が考えていることをよどみなく述べてくれた。何となく「兄貴」に似た雰囲気があった。

 

新潟で生まれ育ち、大学も地元の教育学部を卒業し教員免許を取得していたが、日本の中心の東京で、活気あふれるビジネス社会で奮闘することに憧れ大手不動産会社に入社した。しかしながら、入社して間もなく妊娠したことがきっかけで恋人のいる新潟に戻り子育てに専念することになった。これが起業の充電期間となった。

 

3人の子供を出産した後、28歳で起業

ヒカリッチアソシエイツは2011年4月に会社設立、高橋氏は28歳であった。2012年7月、夫と共に東京・茗荷谷の居抜き物件でラーメン店を開業した。

 

筆者が「このバイタリティの根源にあったものは何か」と尋ねたところ、高橋氏は明確に3つを挙げてくれた。

 

まず、20代の時に早くして結婚、子供を3人出産したことでこの間社会に出て活躍をすることが出来なかった。同世代と比べるとどんどん取り残されているような劣等感を抱いていた。

次に、新潟で生まれ育ち、ご当地ラーメンの焼きあご出汁に慣れ親しんでいたが、これが東京にないということが分かり、「これを東京でやれば絶対に喜んでいただけるだろう」と考えた。

そして、当時ラーメンブームで、ラーメン業界のスター店主たちがさまざまなテレビ番組に出ていて、そのような華やかな世界に憧れていた。

 

「そこで、この20代のブランクを埋めるためには、自分はジャンプしても起業するしかない。そのコンテンツは自分が好きだった味を東京に持っていけばいい。そしてラーメン業界に夢を抱いていた。今自分がここに立つことができているのも、この当時のスター店主の方々のおかげです。そして今、皆さんと交流をさせていただいています」

 

同社が大きく転換したのは2015年のこと。茗荷谷で育てた焼きあご出汁ラーメンに手応えを感じるようになり、「世界で展開するために、都心に出て自分たちの立ち位置をつくりたい」と考えるようになった。そこで茗荷谷の店は閉店し、新宿の歌舞伎町に出店した。店名も「焼きあご塩らー麺 たかはし」(以下、たかはし)とした。西武新宿駅近くで営業するこの店は11坪で、11時から翌5時までの営業でたちまち1400万円を売り上げる伝説の繁盛店となった。

「焼きあご塩らー麺 たかはし」のスタンダードなラーメンは焼きあごの出汁が濃厚で塩味と共に記憶に残る。

従業員教育を充実させて資産価値を高める

現在、ヒカリッチアソシエイツでは東京と神奈川に同ブランドの直営店を8店舗展開している。これらの店で感じることは従業員のチームワークがきちんと取れていることだ。そのような雰囲気の中にいると食事をすることが楽しくなる。

 

「たかはし」が歌舞伎町に出店して以来、QSCが安定したラーメン店を6年間で8店舗を展開している背景には、同社が従業員教育に傾注していることが挙げられる。高橋氏はこう語る。

「ラーメンは国民食として不動のものですが、個人店の集合体であるということが業界としての課題。ラーメン市場は個人店の集合体であることが、国民食として不動のものにした要因ですが、一方で課題もあります。従業員を採用しても定着しにくい。これは個人店ほどキャリアパスが見えにくいからです。当社では従業員が当社を経験することによって、そのスキルはどこに行っても通用する市場価値の高い人材にしていくということをミッションとしていて、この間教育カリキュラムはかなり作り込んできました」

 

ここで目指しているイメージとして「星野リゾート」を挙げてくれた。

「会社がその事業体を所有していなくても、そこにオペレーターとして参画することによって事業体の資産価値を上げていく。これが星野リゾートの成長モデルです。飲食店も、運営力・教育力が強ければ、業態が変わってもそのブランド価値を上げ続けることは可能だと思っています。」

 

この考え方を大きく前進させる出来事が今年の年初に訪れた。

1月末にラーメン業界の経営者の集まりで、「らぁ麺 やまぐち」などラーメンファンから絶大な支持を得ているRaイノベーションの山口裕史氏と久々に親しく会話をしたことがきっかけとなった。

 

ラーメンの求道者をパートナーに迎える

山口氏の創業店舗は2013年1月にラーメン店の激戦地である東京・西早稲田にオープン。当時こってり系が全盛であったが、あっさり系の鶏清湯(とりちんたん)で参入。たちまち繁盛店となり、『ミシュラン』のビブグルマン(5000円以下のおすすめレストラン)に6年連続で選ばれている。同店に加えて「らぁ麺 辣式(らつしき)」「つけ麺 麦の香」と3業態3店舗を展開。芸術品のようなラーメンを提供する山口氏の店の中には凛とした空気が漂っている。高橋氏はそのような山口ワールドを日ごろからリスペクトしていた。

「らぁ麺 やまぐち」のスタンダード「鶏そば」は会津地鶏を使用した透き通ったスープが特徴。

さて、高橋氏が今年の新年会で山口氏から聞かされたことは「自分はオーナーシップにこだわっていなく、料理人として高みを目指したい」ということだった。高橋氏はその場では

他人事として受け答えていたが、山口氏の志向性は高橋氏が目指しているラーメン業界に革新をもたらすために必要なファクターだと考えるようになった。山口氏が目指しているものは料理としてのラーメンを高めていくことであり、高橋氏はラーメン業界における教育的環境の精度を高めることである。この両者がラーメン業界に抱く志の熱さは一致していて、大きなシナジーを見込むことができると判断した。

 

こうして今年の4月1日に、ヒカリッチアソシエイツはRaイノベーションの全株式を取得した。このビジョンを高橋氏はこう語る。

 

「店のオペレーションや従業員教育に力を注いできた当社が、Raイノベーションの店を山口さんの属人的な環境から長く続く店舗運営に移行させていく。一方、山口さんの素晴らしい商品開発力を『たかはし』の既存のメニューのブラッシュアップや新商品の開発にお力添えをいただく。お互いが強みを補い合うことによって、お互いの成長を加速させることができるのではないかと考えています」

Raイノベーションの3店舗のうち2店舗は東京・西早稲田にある。こちらは「らぁ麺 やまぐち」の向かい側のある「麦の香」のつけ麺で麺にこだわった。

大きく飛躍する「中期経営計画」を策定

さて、ヒカリッチアソシエイツは2021年4月より11期を迎え、中期経営計画を策定した。ここでの大きなポイントはFC展開に着手するということ。これによって、13期(2023年4月~)には売上高30億円、利益3億円を計上。14期(2024年4月~)では、直営累計43店舗、FC累計80店舗、そして株式公開を想定している。

 

これらの計画を社内で共有するために14ページにおよぶ小冊子を作製し、金融機関にも配布している。内容は「理念」「顧客体験価値」「社会的責任」にはじまり、前述の中期経営計画、創業時代に込めた想い、最高の一杯への取組み(商品づくりのこだわり)、3つの時間軸で考える人材育成論、持続的成長戦略、代表挨拶、沿革という具合に同社の芯となる部分をコンパクトにまとめている。

 

中でも「持続的成長戦略」では、「人財」「管理システム」「サプライチェーン」という3つの成長因子のそれぞれを強化することによって、相互のシナジーが増して、競争優位性のある企業体質を構築するということをアピールしている。ここのサプライチェーンでは、自社で焼きあごの製造を行い、品質の向上と仕入れコストの低減を図るとともに購買構造にイノベーションを起こすと掲げている。焼きあごの外部販売を中期経営計画のゴールに据えている。

 

高橋氏にとって、冒頭に掲げた3つの起業の原動力が焼きあごというアイデンティティと教育システムの高度化をもたらし、そして高い商品力をもたらすパートナーを迎え入れた。高橋氏が率いるヒカリッチアソシエイツはまさに新しいステージに立っている。

2015年の新宿本店に続き2018年に同じエリアにオープンした歌舞伎町店は、当時急増するインバウンドにも対応し、テーブル席でグループ客にも対応できるようにした。

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店舗情報

店舗名 焼きあご塩らーめん たかはし
エリア 新宿
URL https://takahashi-ramen.com/

運営企業情報

企業名 株式会社ヒカリッチアソシエイツ
URL https://hikarich-a.com/