ゴーストレストラン、バーチャルレストラン(以下、業態表記の場合はGR・VRと略す)はコロナ禍で大きく躍進した事業である。この伏線はUber Eatsが2016年にサービスを開始したことにあるが、コロナ禍でリアル店舗の顧客が減少したことから、「顧客に料理を届ける」ということを飲食店が次々と行うようになったからだ。

 

ここで紹介する株式会社バーチャルレストラン(本部/東京都江戸川区、代表/牧本天増(冒頭写真。以下、会社名表記はカタカナで記載)は、GR・VRの直営店を営む傍ら、現在加盟店を続々と増やしている。同社が設立したのは2020年6月のこと。筆者は牧本氏の話を聞いて、ビジネスを切り拓く事業家としてのポテンシャルの高さを実感した。

 

2年前のタピオカブームで手応えつかむ

牧本氏は1997年5月生まれ、中国・北京出身。高校1年生の時に日本にやってきて、日本に帰化した。現在は中央大学商学部の4年生。

 

牧本氏は学生起業家である。最初は2018年のこと。ジモティーというサイトで不用品を集めて、それを転売することを行った。次に中国人留学生の進学塾を立ち上げて、1年たってバイアウトした。その後、タピオカドリンクがブームになると予感しリアル店舗を立ち上げようと考えた。

さまざまな物件を見て回り東京・明大前の物件に的を絞った。そこには12~13社ほどの申し込みがあったが、牧本氏はオーナーを探し出して、直接数回交渉して獲得することができた。内装はDIYでつくった。こうして後に同社のGR・VRのブランドとなる「OWL TEA」は2019年3月にオープンした。

牧本氏が予感した通り、タピオカドリンクのブームがやってきた。同店は3坪で月商1000万円を超える勢いがあった。DIYで店を作ったので1カ月たたずに回収ができた。その後リアル店舗を拡大していった。FC展開は同年10月に開始した。

タピオカドリンクのリアル店舗を展開してから、ゴーストレストラン・バーチャルレストランに移行した

そして、2020年6月にバーチャルレストランを立ち上げた。コロナ禍でGR・VRが成長すると考えたからだ。これに向けてデリバリープラットホームを利用する客層のライフスタイルを調べ上げた。そこで必要とされる業種を研究して、ブランドを増やしていった。

ブランドは現在約20。台湾や韓国で展開する会社からレシピを購入して自社ブランドとしている場合もあれば、自社開発では前述のタピオカドリンクの他、サラダチキンなどがあり、それぞれは半々だ。

「自社開発のブランドも、外で食事をしていて『おいしい』と思ったときにそちらのオーナーさんにレシピ開発をお願いしたり。飲食のプロの領域はプロの人たちに任せて、私たちは一緒にブランドをつくるようにしています。さまざまなつながりの中からご縁が生まれているといった状況です」(牧本氏)

 

現在、直営店は7拠点、リアル店舗で加盟しているのは全国に100店舗強、GR・VRのブランドは全体250店舗を超えている(2021年5月末)。

 

デリバリーの商品を「軽飲食」にしている理由

バーチャルレストランのGR・VRの特徴は、商品がドリンク、スープ、ワッフル、サラダといった「軽飲食」であること。牧本氏によると、その理由は「加盟店の利益を上げるため」だ。例えば、「OWL TEA新宿店」のメニューをみると、タピオカドリンクが550~702円、ピッツァ1296~1512円、などとなっている。一般的に外食をする価格と変わらない。1200円以上の注文に対して配達手数料を無料としている。一般的に軽飲食は重飲食に対して原価率が低いが、軽飲食に特化して利益を確保し、配達手数料を吸収している。

 

同時にローコストオペレーションにしている。本部指定で加盟店に送られる材料はOEM(他の工場で製造されたもの)で、ポーションコントロールがなされ、キッチンでの作業のほとんどは盛り付けるだけだ。そこでキッチンの中では一人で複数のブランドのオペレーションが可能となる。

本部から送られる商品は、本部の利益をのせることなく原価のまま。容器は、本部がまとめて購入しているので、加盟店が自分で調達するよりも安いという。加盟店が独自に調達していい材料もある。例えば、牛乳は乳脂肪分が3.6%以上のものであればメーカーを問わない。冷凍のフルーツは業務用スーパーの商品で構わない。

 

こうして、デリバリー商品の原価率は容器代を含めて20%に抑えている。

加盟店のロイヤリティはブランドによって異なるが、売上の5~10%となっている。加盟店が望めば、同社のブランドをいくつ展開しても構わない。

 

同社の本部はJR小岩駅から徒歩10分ほどの場所にあり、デリバリーのキッチンを兼ねたテストキッチンと倉庫を備えている。キッチンでは同社の8ブランドを営んでいて、それを一人で回している。1回のデリバリー単価は1800円あたりで日商20万円を売り上げている。

人気のブランドの一つ「サラダチキン研究所」。鶏の胸肉とブロッコリーが主な食材

同社の商品を軽飲食にしている理由はほかにもある。

まず、デリバリーは注文があってから届けるまで30分の時間がかかる。そこで軽飲食は重飲食と比べると経時劣化のリスクが少なくクオリティを担保できる。

デリバリーは重飲食が多く競合が激しい。一方、軽飲食は少ない。また、軽飲食のブランドがたくさんあることによって加盟店が地域特性に合わせてブランドを組み立てやすい。

 

加盟店の中には、漫画喫茶が同社のブランドで月商80万円、ナイトビジネスの店が空いている昼の時間帯を利用して180万円を売り上げている事例もある。この他、社員食堂しかり、同社のブランドを活用している業態は多岐に及ぶようになっている。

テストキッチンを兼ねた本部のキッチンでは8ブランドを一人で運営し、日商20万円になることもある

「飲食店を営業するということは、あくまでも飲食ビジネスのスタートに過ぎません。飲食の事業者の皆さんには余っている時間とスペースを有効活用して、デリバリーの価値を最大化していただきたい」(牧本氏)

 

加盟店にとっての戦略的なITの組立については、同社がすべてをまかなっている。売上管理も同社が行って、売上が不振の場合は、ブランド構成を変えるなどのアドバイスを適宜行う。またデリバリープラットホームのレビューが上に上がるための工夫をデリバリープラットホームとともに行っている。

加盟店のIT関連はすべて本部が担っている

次々と生み出す革命的なアイデア

牧野氏のアイデアマンとして秀逸な事例をいくつか紹介しよう。

バーチャルレストランはフードサービスのデリバリーをメインとしているが、ペットフードも行っている。それは「犬のご馳走便」。飼い主が愛犬と一緒に食事ができるペットフードで、トッピングなどによって栄養バランスのケアも行う。単品価格は1500円が中心だが、1デリバリーあたりの単価は4000~5000円となる。この商品のメーカーは既存のペットフードメーカーで、牧野氏のインスタグラムによって知己を得た。

 

これを発案したきっかけは、富裕層が多い街のコンビニで品ぞろえを見ている時であった。その店ではペットフードがレジ近くに分かりやすく陳列されていて、とても需要が多いことを察知した。

 

2021年3月、新規事業としてフードデリバリーに特化した総合情報メディア「ゴーストレストランの教科書」を立ち上げた。

このメインのコンテンツは「新着!FC募集中ゴーストレストラン一覧」というもの。全国のGR・VRの事業者がそれぞれのブランドの内容、開業資金の総額、サポート体制、収益モデルなどを発信。GR・VRを手掛けたい事業者とマッチングさせるというものだ。月額で掲載している。開始して3カ月と間もないが、現状1日に2~3件が成約しているという。

この他「ゴーストレストランの始め方」「説明会」「最新ニュース」など、GR・VRの開業に関するさまざまなコンテンツが網羅されている。この分野のビジネスを広げていくためには大いに参考となるだろう。

 

最近の話題としては、「タイミー」と業務提携を行うことを6月2日にリリースした。「タイミー」は、すぐに働くことができてお金がすぐに支払われる“スキマバイトアプリ”で、ベンチャー企業であるタイミーが開拓してきた。現在、このサービスの導入店舗数が4万カ所、利用者数200万人(2021年5月末)という規模となっている。今回のリリースはこれらの利用者が同社の加盟店の配達要員として働くことができる仕組みで、既存のデリバリープラットホームとの契約に至る煩雑さを解消し、なおかつ加盟店ではこれらの配達要員を“業者”ではなく「自社便」として位置付けることになり、デリバリーのクオリティが向上する。さらに、バーチャルレストランの加盟店は24時間営業を行っているので、これを導入することで売上が伸びる可能性は高い。

 

牧本氏は同社のGR・VRのビジネスが広がってきた経緯について、「さまざまなつながりの中からご縁が生まれているといった状況」と前述したが、それは次々と生み出すアイデアがさまざまなつながりを必要として、共に大きなメリットを実感しているからではないだろうか。

 

店舗情報

店舗名 OWL TEA
エリア 小岩
URL https://www.virtual-restaurant.co.jp/

運営企業情報

企業名 株式会社バーチャルレストラン
URL https://www.virtual-restaurant.co.jp/