池袋駅西口より大塚方向へ徒歩15分程度のところに“パワースポット居酒屋”を冠とする「魚串炙縁」という店がある。池袋も駅からこれほどの距離があると完璧に住宅街である。そのような立地にあっても同店の雰囲気は冠の通りにポジティブだ。近隣の人だけではなく、遠くから目的来店でやってくる人が多い。それほどの魅力が同店に存在しているということだ。

池袋駅から徒歩15分、ほとんど住宅街の中に「魚串 炙縁」が店を構えている(左)

同店を営んでいるのは株式会社for you company(本社/東京・池袋、代表取締役/松本仁志)である。同店は株式会社絶好調の店舗を運営受託しているものであり、同店から5分ほど離れたところに直営で“さ~どぷれいす”「和ビストロほたる」を経営している。

毎日テーマを変えて行うイベントが店の存在感を増す

同社のスローガンは「SWING THE BAT!!」――「結果は三振でも、積極的にバットを振らなければホームランは打てない‼」――なるほど、と思う。「NEVER GIVE UP」に通じるものであろう。そして「1.FOR YOU 理念を伝える」「2.さーどぷれいすの創造」「3、スペシャリティーな鳥料理とクラフトなお酒」「4.八紘一宇」「5.★KEEP IKEBUKURO WEIRD!!」という項目を挙げている。

株式会社for you company代表取締役の松本仁志氏

そもそも“パワースポット居酒屋”という冠はどのような趣旨で付けられたのだろうか。代表取締役の松本仁志氏はこう語る。
「ここを運営受託するに際して、たくさんの人々が永続的に訪れているところはどこかと考えた時に、それは伊勢神宮だとひらめきました。ここではさまざまな形で年間1600回に及ぶお祭りを開催されているとのことです。そこで、この店で毎日さまざまな趣旨のイベントを行うようにして、パワースポットとしての力を植え付けて行こうと考えました」

 

「魚串炙縁」「和ビストロほたる」共に店内に毎日開催されるイベントの内容が記されたカレンダーが置かれている。例えば「まぐろ」「馬ナイト」「俺のすし」など、それぞれの食材や料理がお得に食べられたり、通常のグランドメニューにないものを提供するという趣旨であったり、また、同店のお客さまやその伝手で「セミナーをやらせてほしい」「オフ会をしたい」という要望があれば、それをイベントのカレンダーに組み込んでいる。

定例化しているイベントとして象徴的なものは、「地元応援ナイト」というもの。これは同店のメニューを地元の商店街で購入したものでつくるというものだ。地元のご縁をつなぐという松本氏の発想が活かされている。

一月のカレンダーの中に毎日のイベントが記されていて、リピーターはそれを楽しみに来店する

「てっぺん」の世界に魅入られて人生観が変わる

松本氏は1978年8月生まれ。東京出身。大学を卒業後、アパレル業界に進んで横浜・関内の店舗に勤務していた。

飲食業界に入るきっかけは、自由が丘の「てっぺん」と出合ったことだ。
当時松本氏は、「良い本を読んで学ぼう」という趣旨で、本を読むことによる自己啓発を行う読書普及協会の会員であった。そして、「本の登場人物に会いに行く」ということをしていて、「『てっぺん』というすごい居酒屋がある」ということを知った。

関内の勤務先から「てっぺん」のある自由が丘までは電車一本で気軽に行くことができるということで、仕事が終了してから訪ねてみた。そこで同店で行っていたハッピーバースデーの様子に圧倒され、「てっぺん」が放つ世界観に魅入られた。

その後、松本氏は「てっぺん」の中での「夢を語り応援する会」という集いを主催するようになった。いわば異業種交流会であるが、さまざまな業界の人が集まり、またてっぺんの店長はじめ従業員がコラボする形で自分が思い描いている夢を語り合うというものである。

月1回の開催で毎回30人前後が集まった。そこで「てっぺん」の総店長をしていた吉田将紀氏と出会い、吉田氏が「株式会社絶好調」を立ち上げることを知り、松本氏は「絶好調を立ち上げたら私を入社させてください」と申し出た。

松本氏が「てっぺん」に通うようになってから、松本氏が勤めるアパレルの店の業績がすこぶる良くなり、松本氏が退社を申し出ても会社が松本氏を引き留めるようになった。絶好調が新宿・歌舞伎町にオープンしたのは2007年11月であったが、このような理由で松本氏が絶好調に合流するのはオープンから半年間遅れることになった。28歳であった。

絶好調では店舗の立ち上げや不振店のてこ入れといったコンサルティングの業務を担当していたが、2011年1月に「魚串炙縁」(15坪45席)を業務受託することになった。2015年7月に「和ビストロ ほたる」(12坪27席)を直営でオープンした。株式会社for you companyを2016年5月に設立した。

松本氏が池袋にこだわる理由は、「ご縁があるから」という。「魚串炙縁」は絶好調にとって3号店で、池袋の同店を担当することになったことが「ご縁」という。だから、「池袋のご縁をつないでいこう」という思いを強く抱いている。

ハイボールに込めた地元密着の姿勢

「一日一日を大切に生きていこう」と盛り上がることを実践

3年前に会社を設立して基盤を固めて、これからどのように進めていこうとしているのか。

「『類のないものを』行っていきたい。世の中の人気メニューをリサーチして、それをわれわれがお客様に提供するとすれば、どのような形にするか。例えば、ほたるではそれぞれのメニューにテーマ曲があります。ラクレットチーズを提供する時には『アルプスの少女ハイジ』が流れます。そうするとお客様はその音楽に手拍子を取ってくれて店内に一体感が醸し出されます。堀江貴文さんは『これから遊びが仕事にな  る』と言っているように、既存のものにシャレとなるものを付け足していきたい」

そもそも「和ビストロほたる」の店名の「ほたる」の由来は、鹿児島の知覧から飛び立つ特攻隊員たちが、その前日に特攻隊の母と呼ばれた鳥濱トメさんが営む富屋食堂に行って「ほたるになって帰って来る」という話がベースとなっている。

「特攻に行く人たちは、きっと『同期の桜』などを合唱して盛り上がったことだと推察します。現代の私たちとしても明日どのようなことが起きるか分からない。そこで、何かのご縁で店の中にいる人たちで盛り上げよう、一日一日を大切に生きて行こう、そのようなきっかけをつくって差し上げようという意味を込めて店名にしました」

「予祝」のマインドがポジティブな環境をつくる

近年「予祝(よしゅく)」という言葉を耳にする機会が多くなった。この意味は「あらかじめ祝うこと。前祝い」ということだが、これは昔から存在した行為を示している。それは豊作や多産を祈って、一年間の農作業や秋の豊作を模擬実演する呪術行事。農耕儀礼の一つとして予祝行事が行われることが多い。あらかじめ期待する結果を模擬的に表現すると、そのとおりの結果が得られるという俗言に基づいて行われる(コトバンクより)。

『予祝(よしゅく)のススメ 前祝いの法則』という本の中で、同店のことがこのように紹介されている。
――同店は赤字続きで閉店する寸前にあった。それは外的要因となるが立地の分かりにくさが挙げられる。
そこで当時のスタッフ5人で温泉に出かけ、その旅館で、こんな遊びを始めたのです。
「僕らの居酒屋はいま倒産寸前だけど、そこから一発逆転、大人気の居酒屋になって、本も出版されて、1000名の前で講演しているという設定で講演しよう。まずは、この旅館の部屋が、1000名のお客さんがいる大ホールだと想定して、なんで成功したのか講演しよう」
そして、この講演会にテレビ局の取材も来ているという設定で、ホームカメラを回してインタビューし合ったのです。
「なんで倒産寸前のお店が大人気の居酒屋に復活できたんですか?」
この質問に、一人のスタッフがこう答えました。
「『俺たちはみな家族だろ!』のひと言にみんなのハートに火がついたんです。それで、いままでお店に来て名刺交換してくださったお客様に手紙を書いたんです。いかに僕たちがこのお店を大好きかって気持ちと感謝の気持ちを」――

この一文について、松本氏はこう語る。
「『俺たちはみな家族だろ!』なんて誰も言っていないんです。聞かれたら、即座に出まかせで答えなければいけないというのが予祝インタビューのルールなんです(笑)。ノリで適当に答える。すると場が盛り上がってきます。予祝のポイントは何を言うかではなく、未来に待っている喜びを想像し、先に味わうことにあります」

金曜日の夕方19時ごろ、満席の宴会のお客様を控えて「嵐の前の静けさ」(松本氏)

松本氏の発言にはスピリチュアルな印象も受けるが、自分が置かれている環境の中で全てポジティブに行動し、自分が関わり合う全てのご縁を大切にするという真摯な姿勢が感じられる。“パワースポット居酒屋”の精神は、立地条件を乗り越える強さがあると感じた。

店舗情報

店舗名 魚串炙縁
エリア 池袋

運営企業情報

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