「和牛A5」を使用している店には「高級」なイメージが伴うが、同時に高いクオリティのサービスが伴っていることも想定される。また、それをポピュラーな価格で提供している場合は、何かDX(※1)によって工夫されているのではないかと想像する。今日の顧客は、例えばタッチパネルの使い方に慣れ親しんでいて、人的サービスとDXのそれぞれの存在意義を理解している。高級店ではロボットではなくサービスの見識が高く所作も備わった人が接客するものと認識している。

 

このような前書きをしたが、ここで紹介する株式会社将泰庵(本社/千葉県船橋市、代表/木原徹=冒頭写真)は「和牛A5」を商品の基軸として焼肉、しゃぶしゃぶ、レストランなどの高級店から、客単価1300~1400円あたりの一人焼肉という具合にさまざまな業態を展開している。ブランドとしては国内では「肉の匠 将泰庵」「肉バルSHOUTAIAN」「将泰庵DINER」「MY YAKINIKU STYLE 将泰庵」「しゃぶしゃぶ将泰庵」と計11店舗、タイ・バンコクに「TOKYO YAKINIKU将泰庵」「YAKINIKU将泰庵 2nd Rich」の2店舗を展開している。

(※1)編集部注:DXとは、Digtal Transformationの略で、ITを活用して業務の効率化や変革を行うこと。

業態は異なっても、強く印象に残る「将泰庵」のロゴは同じものを使用している

前書きでDXのことを言及したが、同社の店では業態ごとにDXが絶妙に生かされている。

同社の高級業態は「肉の匠 将泰庵」でディナーの客単価1万円。ここではご注文の伺いからサービスの全体を和服の女性が行っている。肉を焼くのは接客担当者が行う。

客単価5000円の「しゃぶしゃぶ将泰庵」では、注文がタッチパネルで会計はレジ前の対面で行う。

一人焼肉の「MY YAKINIKU STYLE 将泰庵」の場合、注文はタッチパネルで会計はセルフレジで行う。

どの業態も「和牛A5」であり、客単価の違いを人的サービスとDX導入の比重によって表現している。最近、飲食店におけるDX導入の議論が活発になっているが、このような同社の取り組みは大いに参考となるものだ。

 

「和牛A5」にこだわることでリピーターを生む

将泰庵の代表である木原氏は1983年10月生まれ、千葉県津田沼市の出身。起業したのは2011年6月。現在の「肉の匠 船橋本店」である。この1号店から「和牛、未経産雌、A5」にこだわった。居抜き物件に出店し、駅から徒歩で7~8分と離れていて苦戦したがテレビのバラエティ番組に紹介されてからブレークするようになり、一度訪れた顧客がことごとくリピーターとなっていった。

 

同店で想定していた客単価は5500円だったが、たちまち7000円となった。客単価が高くなった理由はコース(当時6000円~9000円)で食事をするお客様が増えたからという。同時に原価率も下がった。このコースは定番となっていき、現在は8000~1万3000円となっている。

「肉の匠」業態の「将泰庵 特別コース」お一人様1万890円(二人~)、13品が提供される

2店目が翌年で東京・渋谷。最初は「肉割烹 将泰庵」と高級路線をとっていたが1年後にカジュアル路線である現在の「肉バル 将泰庵」に変えた。その途端に同店は軌道に乗るようになった。この後、船橋でドミナント出店を行うようになり現在はここで5店舗を展開している。

 

同社には焼肉・しゃぶしゃぶといった牛肉の食べ方以外に、「飲めるハンバーグ」というメニューもある。焼肉店にとってハンバーグは牛肉の端材を使用できることから利益をもたらす商品であり、この研究を重ねてきた。一般的にハンバーグは粗挽きが多く噛み応えをアピールするものだが、同社の場合は逆張りで、肉を二度引きして柔らかいハンバーグをつくった。ネーミングを現在のものにしてから大層売れるようになった。このハンバーグは箸で切れる柔らかさで、肉汁が出て口の中に和牛のうま味が広がる。各店では定番となっていて、客層が年々高齢化していく中で有効な商品となっている。

 

「飲めるハンバーグ」はコロナ禍にあって大いに役立った。これまでECで月商300万円を売り上げていたが、2.5倍に拡大した。それまでは原料とレシピを渡してOEM(※2)でつくっていたが、今年4月にセントラルキッチンを増築し、ハンバーグの包餡機を導入したところ製造のスピードがアップしハンバーグ自体のクオリティも高くなった。ちなみにECでは精肉も取り扱っている。

(※2)編集部注:OEMとは、メーカーが他社発注製品をその企業のブランドで製造すること。

「肉の匠」業態のランチメニューでラインアップされている「飲めるハンバーグ御膳(和風おろしポン酢/200g)」1400円

 

百貨店の上顧客があるべき姿を教えてくれる

このセントラルキッチンは船橋市内のファミリーレストランが連なるロードサイドに確保した400坪の敷地に構えてあり(船橋市夏見3丁目)、隣に一人焼肉の「MY YAKINIKU STYLE 将泰庵」を出店した。この業態は2019年10月にJR海浜幕張駅前の商業施設に1号店を出店していて、周辺のオフィスワーカーの需要や幕張メッセなどのイベントによって大いに繁盛している。今回の2号店は40坪50席の規模で初月に1350万円を売り上げた。現在は800万円となっていて、ロードサイドにおいて一人焼肉の需要が高いことをつかみ取っている。

「MY YAKINIKU STYLE」(一人焼肉)業態の「A5ランク黒毛和牛 すき焼き肉御膳(140g)」1738円

さらに2021年は百貨店の中にしゃぶしゃぶ業態を2店舗出店した。一つは5月西武池袋本店内、もう一つは9月そごう千葉店内である。

これらの物件は、両方とも以前鍋料理店が営業していたところで、各テーブルに一人鍋用のIH(電磁誘導加熱)機能が付いていたことから、その機能をそのまま生かそうと焼肉ではなく「しゃぶしゃぶ」を考え出した。

 

しかしながら、しゃぶしゃぶは同社にとって初めての試みで、池袋店の開業当初は苦戦したという。木原氏はこのように振り返る。

「当社が得意としている焼肉の肉の厚さとしゃぶしゃぶの肉の厚さは違っていたのです。焼肉は1.6㎜ですが、しゃぶしゃぶは1.4㎜があるべき厚さです。まさに0.1㎜単位の違いですが、このようなことを百貨店のお客様が教えてくださったのです。『これはしゃぶしゃぶではありません』という具合に」

伝統ある百貨店の上顧客の商売人に対する優しい心遣いを感じたという。これらの指摘通りに肉の厚さを修正したところ、店の営業は安定するようになった。

「しゃぶしゃぶ」業態の「A5ランク特選黒毛和牛のしゃぶしゃぶ御膳(160ℊ)」4378円。百貨店の上顧客からのアドバイスで商品が磨かれていった

タイに拠点をつくりアジア市場を見据える

ちなみに同社では和牛を扱う飲食業の他に同業他社への卸業を行っている。これらの事業は海外にも広げていて、現状は、タイ、香港、マカオで行っている。タイでは焼肉店を2店舗展開していてそれぞれ「和牛A5」を提供しているプレミアムな焼肉店として人気を博している。また、これらでは人材の送出し機関となっていて、能力が認められた従業員は日本の将泰庵で働くことができる。この制度によって現地でのモチベーションが高く、憧れの職場となっている。

 

このようにタイではビジネスの基盤が整っていて、さらに広げるために木原氏は2022年3月にタイのバンコクに家族で移住する。日本の経営は4人の役員が役割分担をして管理・運営を行い、木原氏は3カ月に1度のペースで渡日する予定である。

 

今後バンコクでは店舗展開や卸事業を進めるほか、アジア地区の拠点として育てていく意向だ。現地では平均人口が若く経済成長が見込めるほか、「和牛」の料理は憧れの食事でありこれらでの展望は大きく開かれることであろう。

 

日本での展開は今後フードコートへの出店を検討している。商品はハンバーグ、和牛鉄火丼、ユッケ丼、焼肉丼を想定している。当然、「和牛A5」を使用したものだ。

 

将泰庵は創業10年で10店舗強と着実に業容を拡大しているが、「和牛A5」を基軸としたぶれない業態展開と、木原氏の時代の趨勢を読み取る力と機を見るに敏の習いが、店舗の一つ一つを顧客にとって価値のあるものに育て上げているのであろう。

タブレットでは「和牛A5」を使用しているグループ店舗の紹介を行い、シナジーを図っている

 

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店舗情報

店舗名 肉の匠 将泰庵
エリア 船橋
URL http://shoutaian.co.jp/

運営企業情報

企業名 株式会社将泰庵
URL http://shoutaian.co.jp/