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  3. 東京ローカルで地域密着を深める大衆中華料理チェーン
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東京・池袋よりはじまり、主に東武東上線、西武池袋線、西武新宿線の沿線で展開している「福しん」という大衆中華料理店のチェーンがある。メニューを見ると麺類は「手もみラーメン」390円(税込、以下同)、「みそラーメン」550円、「もやしラーメン」490円、「国産野菜タンメン」490円、「みそ野菜タンメン」600円など、「ギョウザ」(6個)200円、「チャーハン スープ付き」450円、「レバニラ炒め定食」「回鍋肉定食」「野菜炒め定食」が640円等々、実に親しみやすい構成である。この安定感が地域社会と密着していることを感じさせる。
店舗数は現在直営店が33、同店を展開する株式会社福しん(本社/東京都豊島区、代表/高橋順)では同店の他にラーメン店への食材供給を事業としている。

現在同社の社長を務める高橋順氏は、父である高橋保次氏が1964年11月に創業した事業を引き継いで現在に至っている。先代はさまざまなジャンルの料理人としてキャリアを積み、池袋にあった大衆中華料理店「福新」でオーナーからの信頼が厚かったという。同店はオーナーの子息が継承したことから、先代は「福しん」という店名で展開するようなった。

創業者・父との葛藤を乗り越えて事業継承

高橋氏は1973年1月生まれ、東京出身。建設業で経理の仕事をしていたが、先代より「上場準備をするので、うちの会社で経理の能力を発揮してほしい」と請われて2000年7月に株式会社福しんに入社した。しかしなが、当時の福しんは上場どころではなかった。

株式会社福しん代表取締役の高橋順氏。創業者である父が大きくした会社の組織と運営の在り方を刷新した

高橋氏が入社した当時、会社は制度改革に奮闘していた。就業制度に着手したところ残業代はおろか人件費をきちんと支払っていないことが判明、有休も自由に取ることができる状態ではなかった。
また店長の上に明確なポジションが存在していなかった。部長という職種は存在していたが、店長の上司という職種ではなかった。
店舗数は三十数店舗で、赤字になろうが店の業績はさておき店を増やすことが優先されていた。出店して3カ月でクローズするという店もあった。
このような未整備の部分を改革していくことに、他業界の整備された状況を知る高橋氏が加わったことから、次第に会社の利益が上がっていった。

2007年4月に社長に就任した。先代は会長となるが、「決めるのは会長で、責任をとるのは社長」という状況が継続し、それに嫌気をさした高橋氏は2014年に退社した。退社してからは飲食業に詳しいコンサルタントとして活動をしていた。
先代としては、家業から抜け出した息子が意に反して事業を安定的に行っていたことから、きちんと事業継承を進めることを決意して社長として呼び戻した。また、自身が末期がんの状態であったこともその思いを強くさせた。

こうして高橋氏は2016年4月再び社長となるのだが、会社の運営は思いのほかスムーズに進行したという。その理由は、高橋氏が前回の社長時代に行った組織改革が定着していて、当時想定していた通りに会社が動いていたからだ。
しかしながら、店長教育が停滞していた。そこで、店長の再教育に努め、離職者の多い店舗では店長を入れ替えることも行った

出店は2016年に復帰して以来3店舗新規出店した。同時にドミナント出店によって自社競合が顕在化していたり、出店当時に対して立地環境が変化して、客数増が見込めなくなってきているところはスクラップ&ビルドを行った。これによって店舗数は変化していないが、それぞれの生産性は向上した。

親しみやすい価格と安定感がある「大衆中華料理」ならではメニュー構成
東京ローカルではファミリーやグループが多いことからテーブル席を多く配している

社員同士支え合いながら直営主義を充実させる

福しんの事業概要は冒頭で述べたが、工場は埼玉・鶴ヶ島、配送センターは埼玉・岩槻にある。株式会社福しんの月間売上高が2億円程度で、外販1500万円程度、全体売上の8%程度に相当する。

現状の外販商品はBtoBのみであるが今後BtoC化を進めていきたいという。現在の工場が老朽化していることとまた賃借工場であることから、鶴ヶ島の近くの坂戸に自社の工場を新しく建設して(2020年3月予定)、ここより売上の底上げを図っていきたいとしている。
高橋氏はこう語る。

「現状の設備では余剰スペースを活用する100店舗に供給することは可能ですが、現在の方針では工場をフル稼働させるために店舗数を増やすことはありません。リスクのない設備投資にします」

店舗展開は直営主義である。その理由は、「直営店であれば会社として思い通りのことができて、クオリティをきちんと平準化することができるから」と高橋氏は語る。
以前は、社員独立制度としてFCの道を検討したが、社員が独立してリスクを背負うことよりも社員として支え合っている状態の方が得策だと考えるようになった。また、女性店長も育ってきており、さまざまな形での店長のキャリアップの道を示している。

そこで、全社的な交流の機会を充実させている。全社的に集まる機会は基本的に年2回、夏と冬に経営計画発表会を行う。冬に関しては、11月の最終木曜日に開催し、80~100人が集まり、永年勤続や優秀な人を表彰する。二部として懇親会も行う。

ビールの価格ではなく「料理の味」で競う

駅前や商店街で営業する大衆中華料理のチェーン店は「ちょい飲み」がすっかりと浸透している。高橋氏はそのようなトレンドをどのように見ているのだろうか。

「飲食店はアルコールで勝負をしてはいけない。例えば、当店のビールがA社、隣がB社という具合にビールで戦うと価格競争に陥るだけです。われわれが競争力としてお客様に示すことは料理の味をきちんと守り常に向上させているということ。さらに地元に密着することで十分に評価されることでしょう」

このような姿勢を貫いている事例して浅草店や上野店の動向を語るが、競合店がひしめく中で20坪強の店舗が坪月商で40万円から50万円で推移している。

浅草店では「朝生」を実施するなど、店舗ごとにオリジナルな対応が見られる

10月の増税に対してはどのような対策を取っているのだろうか。
「福しんという業態は税込表示であることが必要です。そこで価格は全品とも上げます。ただし、来年の2月ごろにはお客様は値上げ前の価格を忘れていることでしょう。そこで、10月1日以降に初めて来店したお客様に納得していただける価格なければなりません。つまり、今の価格を値上げするという発想ではなくて、10月1日からの福しんはこのような価格帯でメニューをそろえているという発想でのぞみます。食材の数を増やしたり、クオリティの高い食材を使用したりして、商品そのものの価値を高めます」

軽減税率への対策では、テイクアウトの利用を促しウーバーイーツを導入する方針だ。福しんではテイクアウトの実績があり、売上比率が高いところでは7%を占めるところもある。このノウハウを全社的に強化していく構えだ。
また、髙橋氏は「ウーバーイーツは都心や東京の西エリアの世界のものと思っていたが、福しんが展開するエリアでも目立って増えていることから導入することを考えた」という。商品に配送コストが上積みされてもウーバーイーツを利用するお客様が増えているということは、価格は高くなっても宅配の利便性に対するニーズが増えているということであろう。

「福しん」の得意とするものが見えてきた

新業態を検討することに備えているが、これはトップダウンで行うことではなく、社員のモチベーションを高める形で「社内ベンチャー」で取り組みたいとしている。
従業員採用は順調で、直近では外国人の応募が多くなる傾向が見られ、毎月12~13人を採用している。

商品の動向では、「回鍋肉」のフェアを行ったところ、通常に対して売上が150%となった。このフェアを行ったきっかけはweb上で回鍋肉が人気アイテムとして急浮上していることを察知したことだ。過去、類似商品の「レバニラ炒め」「麻婆豆腐」でフェアを行ったが、これほどの動きは見られなかった。

「回鍋肉」のフェアが好調なことから「福しん」が得意とすることが見えてきた

「振り返って“女性向け”を意識した商品を入れた時に売上につながりませんでした。一方で、男性向けの"がっつり系“にすると反響があります。福しんが得意とするメニューとはこのような分野だと思いました。お客様が“女性向け”とか“健康”を店に求めるのは、店の中で行うことではなく店選びの段階で行っているのです。福しんに求められていることではありません」

こう語る高橋氏であるが、地域密着の中にあって商品に対するお客様の反響を感じ取り、それを新たな取り組みにつなげることによって、福しんの顧客との距離感はますます近くなっていくことであろう。

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店舗情報

店舗名 福しん
エリア 池袋

運営企業情報

企業名 株式会社福しん
URL http://fuku-sin.co.jp

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