アイキャッチの人物は株式会社フードサプライ(本社/東京都大田区)代表の竹川敦史氏である。同社は野菜卸業で全国の生産者、市場から野菜を仕入れるほか、自社農場も保有し、その野菜を関東圏が中心の5000の飲食業者に供給している。2020年の緊急事態宣言下でこれらの野菜が行き場を失い、同社ではB to Cの発想で「ドライブスルー八百屋」を手掛けた。この活動は「生産者支援」という側面もあり全国に広がり社会現象となった。そして同社では2021年12月に「肉野菜炒め ベジ郎」(ベジ郎)という飲食店をオープン、「生産者支援」の“八百屋が営む野菜炒め専門店”はたちまち行列ができる店となった。

渋谷の東急百貨店本店の向かい側にある店舗にはランチタイムになるとウエーティングができる

“飲食店に提案する八百屋”をつくる

フードサプライ代表の竹川敦史氏は1979年生まれ。大学卒業後、冷凍食品の製造・販売の会社に就職し同社外食事業の新業態開発に携わった。その後外食企業に転職。独立して焼肉店を手掛けた。さらに飲食店のコンサルティングを行うようになり、ビッグビジネスを志向して、飲食業に関わる流通業に進出することを考えた。

 

その業種として割り出したのが「八百屋」であった。その理由は、飲食店の「野菜の仕入れ先は?」と考えたときに、すぐに思い浮かべることができないという経験があったから。

「八百屋の顔が見えないということは、飲食店に対する八百屋からの提案がないからだ」と考えた竹川氏は、コンサルティングの営業手法を野菜の流通に持ち込むことによって「八百屋の業界が変わる」と考えた。こうして2009年にフードサプライを立ち上げた。

 

同社のスキームはこうだ。

一般的に飲食業者(外食、中食、介護食)が使用する野菜は卸売業者が市場から買い付けたもの。一方で、近年の消費者は「新鮮」「無農薬」「有機栽培」といった野菜を求めている。このニーズを満たすためには生産者と直接契約する業者が存在し、その業者が飲食業者に直送することが適している。そこで同社では、生産者と長期間の定期購買契約を結び新鮮野菜を仕入れて、飲食店に供給する仕組みをつくり上げた。さらに市場からも仕入れ、自社農園も営むようになった。

 

コロナ禍で「ドライブスルー八百屋」が大盛況

フードサプライがコロナ禍による飲食業界の変化を感じ取ったのは2020年の3月上旬から。同社の売上げが目減りするようになり「何とかしなければ」とその対策を模索した。同社では飲食業者から野菜を受注してそれを生産者に発注する形ではなく、生産者と定期購買契約を結び、さらに自社農園を営んでいることから、野菜はセンターに次々に送り込まれて在庫が増え続ける状態となった。4月7日、7都道府県に「緊急事態宣言」が発出。飲食店は休業・時短営業を余儀なくされ、同社の野菜は行き場を失った。

 

そして同社では4月9日、非接触の販売方法「ドライブスルー八百屋」を立ち上げた。代表の竹川氏はこう語る。

「この頃、スーパーはめちゃくちゃ売れていました。だからといってわれわれがすぐに参入できるという甘い世界ではありません。しかし、この状況はB to Cが活発になっているということ。マクドナルドを見ると店内はガラガラですが、ドライブスルーは大渋滞です。そこでドライブスルーの八百屋をやることをひらめいた」

2020年のコロナ禍にあってB to Cで野菜を販売した「ドライブスルー八百屋」の活動は全国に広がった

この野菜販売は「5000円」一本を考えた。社内では「高いのでは」とか「コロナ禍で外出を控えているのでは」という声もあった。

こうして飲食業向けの野菜を一般消費者に販売する「ドライブスルー八百屋」は2020年4月9日、同社の京浜島センターでスタート。ピークの時には1200人が来店した。「5000円」と「3500円」の野菜の詰め合わせをラインアップし、7時間営業で日商500万円を売り上げた。

 

そして「生産者応援」という意義が付加された「ドライブスルー八百屋」をフードサプライでは全国の事業者に働きかけ最大で30カ所で展開、累計で6万人が来場した。

 

さらに、夜営業ができなくなった居酒屋の事業者に日中「八百屋営業」を行うことをアドバイスして、賛同した事業者に野菜を供給した。また「もったいない野菜セット」1500円をつくり、飲食店の店頭で販売してもらうようにした。

 

「野菜の大盛無料」の野菜炒め専門店

しかしながら、緊急事態宣言が明けると同社は再び厳しい状況にさらされた。そこで「自分たちで野菜をコントロールできる事業」を模索するようになった。

「野菜がたくさん売れる商売は何か」を考えていき、「野菜炒め」に行き着いた。町中華で4~5人で食事をすると大抵誰かが「野菜炒め」を注文する。定食にA、B、Cがあればその中に「野菜炒め」が存在する。「ご飯大盛無料」はあるが「野菜の大盛無料」は見たことがない。こうして“八百屋が営む野菜炒め専門店”の「ベジ郎」が誕生した。

 

「ベジ郎」は東京・渋谷、東急百貨店本店の向かい側に出店。老若男女さまざまな人々が行き交う立地だ。店舗規模は12坪、14席。カウンター越しにオープンキッチンとなっている。

 

同店のメニューはずばり「野菜炒め」(500円)一本。具体的にはこうなっている。

味付けは「醤油」「ぽん酢」「味噌」の3種類で同価格。野菜の量は「普通」が400g、「少なめ」300g(+0円)、「マシ」500g(+0円)、「マシマシ」600g(+50円)となっている。成人の野菜摂取目標量は350gと提唱されていて(厚生労働省)、日本人の平均摂取量は270g、20代・30代では7割弱しか摂れていないという(同『国民健康・栄養調査』令和元年)。

 

「ベジ郎」の野菜炒めの「普通」は400gで、成人の野菜摂取目標量を優に上回る。ご飯とスープのセットは100円で、野菜定食として食べる場合はこれらの価格に100円プラスとなる。

 

野菜炒めに“こってり感”を加えるために「背脂」を選べるようになっている(基本は「なし」)。「中油」20g(+0円)、「大油」40g(+0円)、「鬼油」80g(+50円)で中と大は無料だ。

 

早期にFCによる全国展開を目指す

肉野菜炒めの場合は肉の量で価格が変わる。肉は鶏肉の唐揚げを使用。メニューの試作段階で豚肉などを使用したが、豚肉よりもから揚げの方がボリューム感を演出できたことから、このような組み合わせにした。こうして「肉中盛り(100g)野菜炒め」700円、「肉大盛り(150g)野菜炒め」800円、「肉特盛り(200g)野菜炒め」900円となっている。

これらの他に「追加パクチー」(+50円)、「追加バター」(+50円)がある。

「肉中盛り(100g)野菜炒め定食」800円、400gの野菜のボリュームが圧倒的に見える

 

ドリンクの「生ビール」「本搾りレモン」「黒ウーロン茶」はいずれも「+200円」となっている。竹川氏はこう語る。

「ビール、レモンサワーは通常のジョッキと同じサイズでこの価格。これは宣伝・広告の位置付けにしたから。お客は料理が出来上がる前にこれらを飲み干す、という趣向」

このように、定食セット、肉、ドリンクはすべてお客の好みで「+」して、お客がカスタマイズしていく。

 

お客は入店してまず、注文をセルフレジのタッチパネルで行う。最初に「ご飯の有無」から選択することになり、カロリーオフや糖質オフにも対応できる。

 

野菜炒めの“味変”として「酢」「カレー粉」「ベジの素」(鷹の爪を漬けたもの)をテーブルに用意し、野菜炒めをこれらの味付けに変化させることで飽きることなく食事ができるようにしている。

店頭のお品書きに遊び心があり、どのようなメニューになっているのか期待感を掻き立てる

 

今後の展開は、早期に直営で3店舗出店し、その後はFC展開に進む意向だ。

同社では全国の飲食業をネットワークする物流を持っている。そして、コロナ禍にあって全国の事業者とのパイプができて、さらに飲食事業者を応援するスタンスで歩んできた。今後「ベジ郎」が展開していく上で、これらの結び付きは力強いバックボーンとなっていくことであろう。

 

店舗情報

店舗名 肉野菜炒め ベジ郎
エリア 渋谷
URL https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000134.000055809.html

運営企業情報

企業名 株式会社フードサプライ
URL https://www.foodsupply.co.jp/

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