2022年1月19日、虎ノ門に飲食店の集合体「小虎小路」がオープンした。広いスペースを活用したいわゆる「横丁」。しかしながら、この横丁はこれまでの事例とは異なる高いポテンシャルを秘めている。

 

まず、立地にダイナミックな特徴がある。この横丁は森ビルが開発を進める虎ノ門ヒルズの谷間にある。このエリアには2014年「虎ノ門ヒルズ 森タワー」、2020年に「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」が誕生しているが、これから「虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー」および東京メトロ日比谷線・虎ノ門ヒルズ駅と一体開発する「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー(仮称)」が加わり、区域面積約7.5ha、延床面積約80万㎡となる計画で、2003年に誕生した六本木ヒルズ(区画面積約8.5ha、延床面積約72万5000㎡)に匹敵するオフィス・商業施設・住宅の国際都市が形成される。既に、ここから羽田空港までのバス直行便が運行していて、国内・世界からのアクセスが整っている。これからの就労人口や居住者の増加を見込むと未曽有の市場拡大が想定される。

地下1階にある「小虎小路」へ誘う鳥居。神聖な場所であり、祭りの聖地をイメージさせてわくわく感がある

 

人望の厚い高橋英樹氏がプロデュース

立地に関しては外的要因に過ぎないが、横丁としてのつくり込みが丁寧に行われていることにここの市場性をフルに享受する可能性が感じられる。以前、地元の居酒屋が営業していたという地下1階約130坪の敷地の中に12店舗で構成、各店舗が歩道側に客席を構成していることから横丁全体の賑わいが十二分に醸し出される。総席数は248におよぶ。

 

「小虎小路」をプロデュースしたのは高橋英樹氏(冒頭写真の人物)。「居酒屋甲子園」の2代目理事長を務めた人物で、昨年11月に誕生した「日本飲食業経営審議会」の事務局長に就任している。居酒屋甲子園は「共に学び、共に成長し、共に勝つ」を理念として、「居酒屋から日本を、世界を元気にする」を目的とする全国的な学びの組織。日本飲食業経営審議会とは、全国の飲食業者が集まって飲食業の全国的な発信型組織をつくり、国や地方自治体との対話と提案を行うことを目的としている。ずばり高橋氏は飲食業界での人望がとても厚い人物なのである。

 

入居する店舗には高橋氏がそれぞれ直接アタックした。基本的にフードメニュー、ドリンクメニューのクオリティがしっかりしているところに出店をお願いした。出店している店舗名(業種は店舗名の冠)、運営会社、本社所在地をそれぞれ紹介しよう。

 

・小籠包「蒸川点心」(有限会社ac:鹿児島県鹿屋市)

・沖縄料理「美ら酔シャングリラ」(Seebun合同会社:東京都渋谷区)

・たこ焼き「タコとハイボール」(株式会社フラバーダイニング:長野県塩尻市)

・地方創生アンテナショップ「浜焼き真鶴」(G-FACTORY株式会社:東京都新宿区)

・イタリアン「寅の日」(合同会社Accoglienza:栃木県栃木市)

・焼肉「DATEYA」(株式会社D.P.T.FACTORY:群馬県伊勢崎市)

・肉巻料理「ベジつつむ」(株式会社YM商店:東京都足立区)

・海鮮居酒屋「酒と魚とオトコマエ食堂」(株式会社すぎうら:京都府京都市)

・フレンチビストロ「大衆酒場 フレンチマン」(有限会社らくちん:京都府京都市)

・ジンギスカン「ジンギスカンいしい」(株式会社P-FUNCTION:東京都葛飾区)

・焼鳥「串酒場 バンビ」(合同会社MAKI:鹿児島県鹿児島市)

・餃子・鉄板焼「とり鉄板と京都餃子 べっぴんや」(株式会社すぎうら:京都府京都市)

客席は各店舗ともに歩道側に設けられていてにぎわうイメージが演出されている

このように全国各地から集まっていて、業種がかぶることなく、既存の業種であっても特徴がはっきりとしたメニューを打ち出している。高橋氏は地元の広島県福山市内で横丁をプロデュースしていて、そのノウハウがここに十二分に生かされている。高橋氏によると、横丁運営にとって重要なポイントとは「いつもお客様がパンパンに入っていること」。その状態を保つことができないと、いつの間にか横丁の中に「勝ち組」「負け組」が生ずることになるという。そのようなことから、ここが常ににぎわうような仕掛けをつくるという。

 

コミュニケーションのきっかけをつくる仕組み

各店舗共通のルールとして、ビールとハイボールの価格を統一していて、ここでの価格競争をしないこと。また、同じ店内にいるお客と会話をするきっかけをつくる「あちらの方からレモンサワー」というレモンサワーをサービスする仕組み(拒否されたら自分で飲む)や、一緒にシーシャしませんか?」というタイミングを演出するために「一緒にシーシャ」という呼称でシーシャ(水たばこ)を各店舗で販売している。シャンパンをボトルで注文して、近くにいるお客にグラスでシャンパンを振舞う「みんなでシャンパン」という仕掛けもある。

コミュニケーションをとる仕掛けをさまざま設けていて、目的来店の重要を演出している

 

ここではランチ営業も行う。ご飯のメニューもあるが看板となる「ヌードル」のメニューを設けることを条件としている。そこで「琉球まぜそば」「牛骨の塩生姜ラーメン」「自家製ボロネーゼのスパゲティ」「海鮮塩やきそば」など、各店はそれぞれの強みを託したヌードルメニューをラインアップしている。

 

 

高橋氏によると、「お客様は、横丁の店舗のはしごを平均1.7店舗で楽しんでいただき、客単価は4000~5000円を想定している」という。月商目標を6000万円としている。

 

「小虎小路」の最大の強みは「居酒屋甲子園公認」となっていることだろう。これらのメンバーの学びに基づいた結束は固い。また地方から東京に訪れる機会が多く、勉強会などの活動をした後にはここで打ち上げを行うといったシーンは容易に想定できる。

 

オープン初日の1月19日は、17時オープンとともに店内は満席となった。居酒屋甲子園の関係者はもとより、これらの活動を支えるメーカーなどさまざまなサポーターが詰めかけて「居酒屋」「横丁」を楽しむ一体感があった。何より、フードメニュー、ドリンクメニュー共にクオリティが高いことが、これまでの「横丁」とは一線を画した感動があり、繁盛スポットとして定着していくことであろう。

フードメニュー、ドリンクメニューのクオリティの高さによって、これまでの横丁のイメージとは一線を画している

店舗情報

店舗名 小虎小路
エリア 虎ノ門
URL https://kotora.info/

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