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  3. 「青森料理」に特化して八戸前沖さばでブランディング

「サバ」は近年人気が上昇している食材である。そのきっかけを探るためにwebで検索すると「おいしいから」という漠とした答えに行き着くのであるが、実際に脂ののったサバの肉は旨味を強く感じる。

サバの脂はいわゆる血液をさらさらにする多価不飽和脂肪酸DHA・EPA成分を含み、悪玉コレステロールを減らし善玉コレステロールを増やすということから、健康食として周知されてきていることが人気を後押ししているのであろう。

イベントで5000本を売り切る看板商品

このサバを看板商品にしている店として東京・北千住の「ごっつり」が挙げられる。経営は株式会社ごっつり(代表/西村直剛)。北千住駅西口に「炭火焼ごっつり」、東口に「ごっつり」本店、隣駅の南千住に「ごっつり」南千住店と計3店を展開している。青森県の八戸前沖さばを使用していて、「八戸前沖さば県外PRショップ」にもなっている。代表の西村直剛氏は青森県八戸市出身で、八戸の名産品でお客様に喜んでいただいていることから常にアイデンティティを感じ取っていることであろう。

株式会社ごっつり、代表取締役の西村直剛氏

 

看板商品の中でも、同店を代表するものは「サバの串焼き」430円(税別)である。八戸前沖さばの半身を5つに分けて串に刺しているのだが、食べてみるとその串の刺し方に工夫が施されていることに気づく。串のトップには腹の部分を刺していて食べたとたんに旨さと甘さが口の中に広がる。続いて腹、さらに背、腹、背と続く。この順番はハーモニーであり食べる楽しさがある。

 

毎年1月に東京ドームで開催される大規模な全国各地の物産展「ふるさと祭り東京」は飲食業界の人にとってアイデアがひらめくチャンスが満載のお祭りである。ごっつりでは2011年から「サバの串焼き」の販売で参加していて、今年は会期中の10日間で5000本を販売した。参加当初1日100本程度しか売れなかったことを振り返ると、すっかりとメジャーになった手応えを感じている。

すっかりメジャーな存在となった「サバの串焼き」430円(税別、以下同)

「サバの串焼き」とは、八戸を代表する食材を使用しているが、伝統料理として存在したものではない。西村氏の知人である料理人が考案したものだ。

 

ある年、西村氏が八戸に帰省した時に旧知であるこの人物と偶然再会、この時この料理を活用することを盛んに勧められた。八戸で生まれ育った西村氏にとって「今更サバ?」という感覚だったが、これを食べた瞬間、感動した。西村氏にとってサバはあまりにも身近にあり過ぎた。子供のころは「またサバかよ」という感覚で食べていたという。

そこで西村氏は、そのレシピを教えてもらい2号店がオープンした際に導入した。

八戸前沖さばをフルに味わうことができる「三種盛り」1280円

 

ちなみに、店名の「ごっつり」とは青森県南部地方の方言。語感からは荒々しいイメージがあるが、実際の意味は「一人ほくそ笑んでいる」、ないしは「どや顔」という雰囲気の意味だ。「うちに関わる人たちが皆ごっつりしてくれればいい」という西村氏の願いが込められている。

焼肉店チェーンの加盟店としてスタート

西村氏は1967年11月生まれ。前職は大手物流会社に勤務。入社して3年ほどしたら転職しようと思っていたが、同社の体育会的な雰囲気がなじんで、17年と半年間同社で働いた。

営業畑を歩んで昇進し、年商50億円規模の営業所で所長を務めた。その後、本社では労務分野の管理職に就いた。西村氏にとってこの人事は青天の霹靂で就任後も違和感がつきまとったが、それは取締役への道として必要なキャリアであった。

当時のことを「嫌で嫌でたまらなくて……」と振り返るのであるが、後に体調を崩してしまった。

 

そして、2007年の年末、40歳を機に会社を辞めた。約半年間モラトリアムの日々となり、趣味の釣り三昧の日々を過ごした。西村氏は茨城から静岡の海を知り尽くしているほどで、釣り関連の新聞・雑誌で記事を寄稿することもあった。

このような日々を過ごして、次の仕事としてひらめいたことは飲食店をオープンすること。最初に手掛けたのは焼肉店であった。

ちなみに、開業資金について相談するために日本政策金融公庫に出向いた際、その担当者は西村氏の釣りの記事のファンで、「どうして魚でなく焼肉なんですか?」と尋ねられたという。

 

北千住で飲食店を構えることになったのは前職でこのエリアを担当していて土地勘があったから。北千住を含めて、荒川近くのエリアを自転車で物件を探し回っている過程で、創業の物件を見つけた。北千住駅西口から徒歩5分ほど商店街の2階である。

 

焼肉店チェーンの加盟店となった理由は、同チェーンの本部である大阪の店が大層繁盛していたから。当時、東京エリアでの展開が始まったばかりで、この繁盛の流れに乗るべきだと考えた。オープンしてからはホルモンブームがあり、ピーク時には客単価3000円、20坪で月商690万円を売り上げた。キッチンを西村氏一人で賄うことができたことも経営を安定させた。

 

自己資金に余裕があったことから、その後2年半で4店舗となった。2008年6月北千住に「炭火焼ごっつり」、2009年4月が北千住東口に立ち飲み。2010年12月が南千住、さらに別の業態をオープンと続いたが、濫造していたきらいもあり業態を見直す必要性も感じていた。

 

そのような時期の、2011年4月に富山県の焼肉店で食中毒事件が起きた。これがきっかけとなり、焼肉店のFC契約を更新することなく焼肉店から撤退することにした。

 

「青森料理」に定めたことでメニューが輝いていく

2012月3月に加盟店の焼肉店から直営の居酒屋となった。同時に、加盟店として課せられていたさまざまな制限から解放された。

しかしながら、「経営的にさまようようになった」と西村氏は振り返る。解放されたが売り物が定まらない。既に「サバの串焼き」は存在していたが、それがいま一つ存在感を欠いていた。そして、資金的に厳しい時期も経験した。

 

そこで「自分が一番得意というものを商売にしたらいい」ということがひらめいた。

四十代半ばに差し掛かり、故郷へのノスタルジアが募っていたことも事実。「自分の田舎のものはいいもんだ。これで勝負をかけよう」――このような具合に、現在の「青森料理の専門店」に切り替えた。

 

そう心を入れ替えてからは、まっすぐに進んでいった。店の壁は思いを発信する場所に見立てて「青森料理」のメニューで埋め尽くしていった。

壁の全てに「青森料理」のアピールがなされている

 

にわかに、テレビをはじめマスコミで取り上げられる機会が増えていった。それは「サバ」で取り上げられるパターンと、「青森」で取り上げられるパターンのどちらかである。

 

メニュー開発の面では、西村氏をはじめ青森出身者が多い従業員の幼少期の食の記憶が生かされている。

また、八戸は「B1グランプリ」発祥の地でもある。これによって八戸の郷土料理である「せんべい汁」が全国的に知られることになった。

このように「青森料理の専門店」に切り替えてから、青森の食文化を深掘りできるようになり、メニューの一つ一つが輝いていった。

 

桑田清原世代の高校球児が目を輝かせる時

ごっつりでは時季に応じて「青森食材の夕べ」というイベントを開催している。魚介類をはじめ青森の旬の食材ををふんだんに取り揃え、青森の地酒が飲み放題となるものだ(会費は6000円~6500円) facebookで告知すると定員の50人は1時間ないし1時間30分で満席になる。このイベントを楽しみにしているお客様からは「会社の就業時間中に応募を開始されると申し込みができないから、17時過ぎにしてほしい」といううれしい苦情をいただくほどだ。

 

多店化についは、北千住から都心に向かう方針で意欲的だ。「サバと青森食材がメイン」という路線は堅持していくが、この専門性をどのようにアレンジするか検討中とのこと。

 

ところで、西村氏は高校球児で第67回、1985年夏の甲子園大会に出場している。いわゆる桑田清原世代である。この大会では桑田清原のPL学園が優勝した。西村氏は青森県・八戸高校、本来サードで5番であったが、この最後の夏の大会前に肩を壊して代打専門となった。本大会の第一試合、愛媛県・川之江高校との試合で、一発出れば同点のチャンスに代打で登場、しかしながらショートゴロ、ゲッツーで西村氏の甲子園は終わった。

 

このように輝いた青春時代を持つ人のことを本当にうらやましく思う。その当人はその話題に及ぶと目を輝かせながら当時の局面を熱く語る。

西村氏も「甲子園に出場した経験は大いにネタになります。おかげさまで初対面の人と打ち解けるのが早い」と語る。この誰もが共感する分かりやすい話題の中心人物であることが、西村氏にとってプライドであり、商売で前に進む原動力にもなっているのではないか。

 

焼き肉店加盟店から転じて直営居酒屋、それが不振であったことから“開き直って”青森料理専門店に定めることによって商売の軸ができた。このような経歴を歩む西村氏と「ごっつり」に商売のお手本を感じた。

ねぶたと言えば「青森料理」という実に分かりやすい看板

 

 

 

店舗情報

店舗名 炭火焼ごっつり
エリア 北千住
URL http://www.gotsuri.com

運営企業情報

企業名 株式会社ごっつり
URL http://www.gotsuri.com

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