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  3. 業態ポートフォリオを豊かにして基盤を強くする

本連載は本拠地が東京圏の外食企業を紹介してきたが、今回は広島県福山市に本拠を置く株式会社夢笛(代表/高橋英樹)の動向を紹介しよう。同社代表の高橋英樹氏は、居酒屋甲子園の第2代理事長を務め、また全国・世界で活躍していて、さまざまな場面での変化に触れ経営に生かしている。

 

高橋氏は、修業時代に大阪の外食企業に料理人として勤務していた。同店での先輩が福山で起業することになり、それに伴って高橋氏は現在の会社の立ち上げに参画した。1994年、高橋氏が24歳の時であった

 

その後同社は7店舗まで拡大したが従業員をまとめあげることができずに、社長は自分の後継として高橋氏を任命した。それが2004年の時であった。

ここより高橋氏の苦難との熾烈な戦いは始まった。そして、内外での奮闘ぶりと周りの人々を大切にする姿勢は従業員をはじめ同社に関わる多くの人からの信頼を絶大なものにしていった。

株式会社夢笛、代表取締役社長の高橋英樹氏

 

高橋氏が福山にやってきて25年、そして夢笛の社長となって15年が過ぎた。現在は福山に直営9店舗、業務委託1店舗、全国にFC8店舗、グループ4社を擁する企業グループのトップとして事業に邁進している。

 

現在、2016年4月福山に設立された一般社団法人福の山城下町プロジェクトの代表理事も務めており、「城下横丁」の運営をはじめとした若い経営者や、一次産業と結びついた名産品の育成など、プロデューサーの役割も担っている。

 

東京の外食企業を傘下に入れ業容多様化

さて、夢笛では東京の外食企業である株式会社エッセンスを2019年7月に譲受した。

 

同社では「Queen of Chikens」(通称クイチキ)を展開、フレンチの巨匠酒井一之氏監修の下でつくられた「ロティサリーチキン」が看板商品となっている。さらに、ビーフやラムをミックスした「肉盛り」が人気で、パスタや自家製食パンも目的来店にかなう特徴を発揮している。

「クイチキ」はロテサリーチキンをキラーコンテンツに、肉盛り、パスタなどが看板商品

 

エッセンスを傘下に収めることになった背景について高橋氏はこう語る。

「近年、東京での仕事が増えてきたこと、また福山市の市場がシュリンクしてきていることを実感して、東京ないし新しい市場で事業基盤をつくる必要性を感じていました」

そこで、東京でM&Aの話を持ち掛けている過程で同社の前オーナーである齋藤芳春氏より同社を譲渡することを提案されたという次第である。

 

今後エッセンスは夢笛グループのポートフォリオの一つとして役割を担う。高橋氏はこう語る。

 

「私は1ブランド20店舗程度で十分だと考えています。当社の店の食事はどちらも日常食や大衆的なものではなく、店がたくさんあることがお客さまにとってうれしいことではありません。エッセンスの役割もクイチキを多店化するのではなく、料理人からの業態提案を受け入れるなどして、これから3ブランド程度に広げて、社員に業務委託する道も整えた会社にしていきたい」

クオリティの高い「クイチキ」をベースに多業態の展開を想定する

 

軽減税率を有利に取り入れた宴会プラン

さて、高橋氏の談話は、組織運営やビジネスチャンスの在り方に及んだ。

 

10月1日に消費税が8%から10%に引き上げられるが、同時に軽減税率が導入される。生活必需品とされた飲食料品の税率が8%に据え置かれる半面、外食や酒類は10%に引き上げられる。

外食企業にとって問題となるのは、店内外食であれば税率10%、持ち帰り(出前や宅配も同様)は8%という具合に、同じ商品に二つの税率が存在する点だ。

 

さて、高橋氏は、このような動向に対して、社会の変化に応じた自社社内の取組を紹介してくれた。このポイントは、「飲食店の出前・宅配対策」と「従業員のモチベーション対策」である。

 

それは「会社主催の宴会」について。一般論として従来は「従業員全員参加」が求められていたが、同社ではそのようなスタイルを既に止めていて、現在は「ビアバスト」(Beer Bust)という形態で行っているという。この語源は「大学生や兵士などが行うビア・パーティ」ということだが、会社の中で従業員が三々五々集まって飲み会をするということだ。

 

同社のビアバストはこのように進行する。

この日の会社の会議室はビアバストの会場となっている。会場では、あらかじめドリンクをどぶづけで冷蔵し、おつまみやお菓子類を用意しておく。軽食は自社の店舗からケータリングで取り寄せている。

代表の高橋氏はビアバストが始まる夜の9時から終了する未明の3時までその会場にいて、社員もアルバイトも、ここに来た順番でお酒を飲んで食事をする。日中勤務しているパートタイマーが子供を寝かしつけてやってくるという人もいる。

そこで、一杯飲んで帰りたい人は帰る、途中、仲間同士で抜け出して食事にいっても構わない。じっくりと飲みたい人は終了する3時までいていい。

 

従業員個々の主体性を尊重した社風づくり

このような形にしたところ、従業員の参加率が格段に上昇した。かつての全員がそろう宴会では、店長や気後れする人物がその場にいて居づらくなるということがあったが、ビアバストではそのような場面がなくなったからだ。

 

こうして生まれた気軽な環境によって、若い従業員が高橋氏と会話がしやすい雰囲気が生まれる。「最近彼女とうまくいっているか?」(高橋氏)という具合である。

 

高橋氏はこう語る。

「経営者にとって社内で宴会をする目的は、従業員との懇親と情報収集なわけです。一方、そこに集まる社員やアルバイトの人たちは自分たちの気心の知れた人たちと一緒に過ごしたいことでしょう。ビアバストは経営者の目的を達成し、従業員も『全員が一堂に集まることの苦痛』がないために、これから定着していくのではないでしょうか」

 

ビアバストで発生する飲食店の需要は、まず「ケータリング」、その後に発生する「気心の知れた人たちとの飲み会」である。

そこで飲食店からのアプローチは「ケータリングできます」という門切り型ではなく、これまで述べたようなシーンを見せて提案することが必要となる。ここでの分かりやすさとクオリティの高さが差別化のポイントとなっていくことであろう。

 

「事業所としては、例えば『当社の第三水曜日はビアバストの日』と決めておくことによって、社内にリズムが生まれて、コミュニケーションの闊達な企業文化を育てていくきっかけとなるでしょう」(高橋氏)

 

このように飲食業は、企業のソリューションを担う可能性を秘めているということだ。

サムギョプサルをはじめとした焼肉メニューでFC展開を進める「フジヤマドラゴン」

 

外国人を雇用してグルーバルな社風をつくる

同社では「終身雇用」を標榜している。それを成し遂げるのは会社ではなく、「社員の自立」であると高橋氏は言う。

「自分で考えて、自分で行動し、そして自分で反省すること。具体的に言えば、自分の年俸を自分で決められることです」

 

この社員の自立とは、実は前述のビアバストにつながっていく。トップダウンで組織が動いていくのではなく、従業員個々の主体性を尊重することによって、組織が活性化していくものと考えている。

 

同社では数年前から外国人雇用を盛んに行っている。最近の採用状況を述べると、例えば広島では、日本人の高校卒業生が1人、バングラディッシュ人が1人、韓国生まれの日本人が1人、今韓国でビザ待ちが2人という状況。圧倒的に外国人が多い。それが目指していることは、外国人を幹部層に育てる狙いがあるからだ。

同時に、従業員個々の主体性を尊重することを狙いとしている。

 

「外国人の彼らは上司に忖度することなく、自分が考えていることをはっきりと言います。それが、組織の中に新しい発見をもたらしていく」と高橋氏は言う。

 

例えば、東南アジア出身の社員が「休暇を取って実家に帰りたい」という。加えて「3日間の休暇では実家に帰ることができないので、休暇は2週間ほしい」という。

そのような申し出に対して会社は、「どうすれば2週間の休暇をとることができるのか」を当人に考えてもらい実践させる。

 

彼らが会社と応対している様子を見ている日本人の従業員は、「こんなことを会社に言ってもいいんだ」という発見をする。このような企業風土は従業員にグローバルな発想を植え付けていくことになる。

 

「終身雇用」とは主体性を全うできる環境

高橋氏はこう語る。

「社長の仕事とは会社の方向性、進むべき道を示す存在であり、従業員のみなさんが心地よく働くことができるように環境を整備する存在です」

 

「従業員は本日の売上をつくる存在です。社長は明日からの売上について考える存在。当社の店長や幹部が行っていることは、業務分析から戦略を考えること。業績を上げるための仕組みをつくること」

 

「店長の仕事は、現状仕入れ管理をして、生産管理をし、労務管理をし、在庫管理をし、予実管理という具合に『管理』だらけですが、AIを使用したものを開発中で、今後はチームビルディングと日々の目標設定と個人の目標をつくって上げることに集中させる」

 

高橋氏は「これからは独立する人がどんどん出ていく時代でない」と認識している。だからこそ、個人が、自分の給料の設定にはじまり、会社の中でのあるべき姿を描かせて、どのようにすればそのようになることができるのか考える環境をつくることが重要だと考えている。それが夢笛における「終身雇用」の在り方である。

店舗情報

店舗名 Queen of Chickens
エリア 新橋
URL www.muteki.jp

運営企業情報

企業名 株式会社夢笛
URL www.muteki

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