東京・上野、御徒町界隈には韓国系の飲食店が多数ある。老舗の焼き肉店から、家庭料理、チェーン系の韓国料理店と、利用動機に合わせてさまざまな“韓国”を楽しむことができる。そのような中にあって、2021年12月に「マルミヤ亭」がオープンし、このエリアの“韓国料理”を一層奥深いものにした。黄色の背景に黒い文字とよく目立つ看板で、「創業昭和四十六年」「京都発祥」「むし豚」「豚足」の文字が並んでいて、長く庶民に親しまれた料理店であることが伝わってくる。

黄色と黒の色使いによって看板がよく目立つ。上野・御徒町の飲食店街に個性的な店が一つ増えた感覚

同店を経営するのは株式会社ライト(本社/京都市左京区、代表取締役/岩本俊一)。同社代表の岩本氏は、全国チェーン展開する外食企業で店舗開発を担当していた人物。2017年7月京都・河原町に「酒場エビス」を立ち上げ、飲食業で起業した。同社の店舗運営は個人事業主に運営を委託するという方式を採っていて、1号店となる「酒場エビス」からこの仕組みで運営している。店舗運営担当者は、売上と利益の中から決められた比率での報酬を受け取る。店舗運営者にとっては、日々の営業で本来の力が発揮される。この仕組みの店舗は現在4店舗となっている。東京の「マルミヤ亭」を運営するのは株式会社BASE(本社/京都市中京区、代表取締役/定國陽一)である。アイキャッチの人物がBASE代表の定國氏。

 

伝統的な大衆料理店をより身近に

BASE代表の定國氏は大阪の料亭で修業を積んだ料理人で、岩本氏とは前職であるチェーン外食企業で知り合った。岩本氏は前述の通り店舗開発を担当していて、定國氏は商品とダイニング事業を担当していた。

 

ライトの1号店である「酒屋エビス」は定國氏が店舗運営することでたちまち繁盛店となった。フードメニューの看板商品は「近江牛タン刺し」をはじめとする近江牛の肉刺し料理で、「名物肉豆富」といった京都の大衆酒場メニューをラインアップして、大衆的な業態でありながらクオリティの高さをアピールした。

 

さらに、定國氏の持ち味が発揮されたのは「レモンサワー」。定國氏は大手メーカー担当者、日本酒研究家、酒場女子などとレモンサワーの研究にいそしみ、そのアイデアを同店に生かした。レモンの産地を直接訪問するなどブラッシュアップに努めて、レモンサワーブームを湧き起こした。

 

さて、岩本氏が「マルミヤ亭」を開業することになったのは、京都の地元で「ある名店が営業を止める」という噂を耳にしたことに始まる。それが京都・東九条の「焼肉マルミヤ亭」であった。岩本氏自身が大好きな店で、同店には何度も足を運んだ。創業者の故・宮本和子氏が体調不良となったことから焼き肉店としては休業していて、看板商品であった「むし豚」「豚足」「豚ホルモン」は子孫によってテイクアウトのみの営業を続けていた。そこで、岩本氏が「焼肉マルミヤ亭」の後継者を名乗り出た。2019年のことである。

 

2021年2月末、京都の「焼肉マルミヤ亭」は昔ながらの“ホルモン屋”としてリニューアルオープン。同店をよく知る人たちの間では「30年ぶりの営業再開」ということで大いに歓迎された。同時に「プレミアムむし豚」と「プレミアム豚足」のECも始めた。創業当初からの「焼肉マルミヤ亭」に親しんできた人たちにとっては、より身近に感じられるようになった。

 

東京からブランディングを試みる

「マルミヤ亭」の2号店を東京に出店したのは、ずばり店舗展開の構想を抱いているから。フードメニューでは伝統の「むし豚」540円(税込、以下同)、「豚足」600円の二品を強く打ち出し「まずはコレ‼」とアピール。さらに、ハツ、せんまい、コブクロの「肉刺し」、ホルモンの「七輪焼」、もやしナムル、チャンジャといった韓国料理の一品料理をラインアップした。

 

オーナーの岩本氏によると「名物料理とメニューの絞り込みによってオペレーションの安定化を図り、チェーン展開につなげていきたい」としている。そこで「マルミヤ亭」を多種多様な韓国料理店がそろう上野・御徒町に出店することはブランディングに役立つと考えた。

「マルミヤ亭」の2大名物の一つ「豚足」600円。若い女性のファンが多い

さて、東京の「マルミヤ亭」はオープン4カ月以上が経過、よく知られる存在になった。まずインスタグラマーによって情報が拡散した。大衆居酒屋のホッピングを楽しみとする人にとって、上野・御徒町エリアに立ち寄る店が新たに加わったという感覚だ。

2大名物のその2「むし豚」540円。韓国料理ではコース料理のごちそうの定番となっている

類似の大衆居酒屋の中では、比較的に客の年齢層が低い。20代から40代が主流を占める。“20代女性お一人様”というパターンもある。これは「豚足」目当てのお客で、豚足を堪能して帰路につく。ニッチな商品だが根強いファンが存在する。また、すでに常連になった顧客の場合も、看板商品の逸品とドリンク1杯で「サクッと」利用するパターンも見られるようになった。

 

そして、ここでも定國氏によるドリンクメニューの技が効果を大きく発揮している。

それは焼酎の品ぞろえ。まず「芋」では「だいやめ」640円、「フラミンゴオレンジ」650円、「蔵の師魂 The Pink」650円、「きろく」540円。「麦」では「泥亀」540円、「スパニッシュオレンジ」650円。さらに「スパイス」として「カルダモンTAKE7」650円というラインアップである(商品ラインアップ、価格は2022年2月時点)。

 

 飲食業の可能性を切り拓く存在

これらの焼酎はいずれも特長がはっきりとしたものばかり。「だいやめ」は蔵元独自の熟成技術から生まれた「香熟芋」による新鮮な香味、「フラミンゴオレンジ」はグラスに注いだ瞬間からみずみずしい洋梨とオレンジの詰め合わせが目に浮かぶような香りが広がる。「蔵の師魂 The Pink」はワインに似た香りの酒質。「麦」をスキップして「カルダモンTAKE7」は、カレーのスパイスのカルダモンでつくったリキュールで、スパイシーなエスニック料理などによくマッチする。

 

フレッシュな「刺し盛り」880円も名物の一つ。和牛ハツ刺し、牛センマイ刺し、コブクロ湯引きの盛り合わせ

これらの焼酎の特長を定國氏がお客に魅力たっぷりに伝えることから、焼酎を求めるお客は「次はこれ」という具合に飲み進めていく。同店のメニュー構成では客単価4000円当たりが想定されるが、焼酎の飲み比べを楽しむお客は8000円、1万円になることもあるという。定國氏も、魅力的な焼酎の品ぞろえに余念がなく、複数の業務用酒販店と取り引きするほか、蔵元に直接出向いて仕入れを行っている。

 

オーナーの岩本氏はフランスでもビジネスを展開している。現地ではビジネスのコミュニティが存在して、日本食レストランが新規に出店すると盛況となることから、日本食に関する業種が注目されるようになっている。現地では、においや煙が出る飲食店に対してナーバスとなるが、「マルミヤ亭」に関してはこれらの懸念材料をクリアできて、現地で展開することも視野に入れている。

 

岩本氏は、飲食業のオーナーとして独自の仕組みを整えている。それはまず、飲食店の運営を個人事業主による運営委託にしていることで、個人事業主が飲食店経営に取り組むチャンスを広げている。そして、自分がこよなく愛する「マルミヤ亭」を自らの業態とすることで、自分の戦略として推進することができる。このような、岩本氏の新しい飲食業の取り組みは、可能性を切り拓くものとして注目されていくことであろう。

同店のファンの常連客がつくようになり、サクッと飲んだり、じっくりと飲んだり、さまざまな食事の楽しみ方をしている

 

店舗情報

店舗名 マルミヤ亭
エリア 御徒町
URL http://light-group.jp/marumiya.html?msclkid=b64b2235ce8e11ec89a15fb6c2711acb

運営企業情報

企業名 株式会社ライト
URL http://light-group.jp/company.html

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