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  3. おにぎり専門店で飲食業を起業、「コラボ出店」でチャンスを広げる

1月下旬の午後、筆者はJR国分寺駅近くで用事があり、その前にエキナカで食事をすることにした。構内の路面に「うどんのぼんた」といううどん屋さんを見つけた。カラフルな外観でメニューには斬新な洋風スープのうどんがさまざまラインアップされていることが興味を引いた。店頭ではおにぎりを販売しているのだが、一個一個がおにぎりの形をした透明なカプセルに入れてあり斬新であった。

 

店に入ると、よく鍛えられた雰囲気の従業員が皆きびきびと働いていて、店の空気に清潔感が漂っていた。自然と「創作うどんとチームワーク」というフレーズが出てきて、大手外食産業ではない、いわゆるベンチャーの経営ではないかと推察した。

 

おにぎり専門店をヒントに飲食業で起業

同店を経営するのは株式会社ティーエッセンス(本社/東京都文京区、代表/石塚龍樹)である。同社の代表、石塚龍樹氏は1977年10月生まれ。率直な印象を述べると高校生でも通じる童顔であるが、石塚氏が手掛けるビジネスは戦略的でありフットワークが良い。

株式会社ティーエッセンス、代表取締役の石塚龍樹氏

 

大学卒業後、人材コンサルティングの会社に入社し23歳から29歳まで在籍した。在籍当時にさまざまな経営者に会って触発を受け、「29歳で独立しよう」と目標を定めた。ホリエモン氏やサイバーエージェントの藤田晋氏のようにIT分野での起業を考えたが、「この分野では彼らに勝てない」と思うようになり、「飲食業だったら太刀打ちできるのではないか」と考えた。それは、石塚氏が過去体験した飲食業を自分なりにロジカルなビジネスにしたいという思いがあったからだ。こうして2007年9月に会社を設立した。

 

石塚氏にとって飲食業の原点は、学生時代にJR大塚駅近くの大衆居酒屋チェーンでアルバイトをしていた当時のことで、忙しくも楽しく働いていた。そして、同店の近くに有名なおにぎり専門店の「ぼんご」があり、寿司店のような営業の仕方に感銘を受けていた。起業でひらめいたのは同店のことであった。

「普通の居酒屋を出店しても埋もれてしまうのではないか」「この店のスタイルをまねて、近代的な店にするとよく繁盛するのではないか」と考えるようになり、「ぼんご」がこだわったコメに着眼するようになった。

 

起業した当時は、大手外食企業やファストフードでもおにぎりを販売するようになり、これらの商品をすべて食べてみた。

そこで、大手外食企業のおにぎり業態をまねようとして、創業メンバーにアルバイトに行かせようとした。たまたま「ぼんご」の前を通ったところ、「アルバイト募集」の張り紙があった。創業メンバーには大手外食企業のおにぎり業態ではなく、「ぼんご」に行くようにと指示を変えた。

 

創業メンバーが「ぼんご」で働くようになってしばらくして、女将さんから「店の仕組みを盗みに来た」ということが察知された。そこでこちらの狙いを丁寧に説明したところ、「最初から分かっていたわよ」と言われ、のれん分けでおにぎりの店を出すことを許された。

のれん分けから独自の事業に移行する

会社を設立してから10カ月間はモラトリアムの時期を過ごした。この間に創業メンバーをさまざまな業種・業態に送り込んで事業づくりのためのリサーチを行った。店を構えるにしても、起業したばかりで良い物件が紹介されない。会社の売上げは前職の代理店の仕事を受託してつくった。

 

ようやく見つけた物件は文京区護国寺、大通りの路面で20坪、立地はオフィス街であり学校も近くにある。師匠となる大塚の「ぼんご」の近くにありながら、商圏はバッティングしない。

店名は「ぼんご弐(ツー)」とした。開店当初は大層注目を浴びた。半年後に池袋の「Echia」に出店することも決まった。石塚氏の店ではつくり置きのおにぎりや弁当を販売するなど商品を広げたが、それが「ぼんご」のファンから非難を浴びるようになった。のれん分けを認めてくれた女将さんにも迷惑が及ぶようになったことから、開業3年目にして店名を「ぼんたぼんた」に変更。そして、ティーエッセンスのオリジナルの事業として多店化を目指すようになった。ちなみに「ぼんた」とは「たんぼ」を逆に表記したものだ。

Echika 池袋店の様子。地下道の路面でオープンエアになっている。左側のおにぎりの陳列に注目

 

店名に込めたようにコメのクオリティにこだわり「一等米」を大きくうたっている。これは牛肉で言えば「A5」に相当するようなもので、コメの最上級のもの。特定の品種ではなく季節に応じてブレンドを変えている。このコメのご飯は冷たくなってもおいしい。

 

海苔の巻き方や具材の入れ方は「ぼんご」に倣っている。大振りの具材でどの位置から食べても一口目から具材にたどり着くというものだ。

おにぎりをカプセルに入れたことの革新

冒頭でおにぎりの包材が斬新であることを述べた。一般的なおにぎり屋さんは、ラップに包んで乾燥を避けるためにショーケースに入れてあるが、「ぼんたぼんた」の場合は一個一個が透明なカプセルの中に入れてある。

この容器は既製品で1個当たり数円程度とラップと比較すると高価なものだ。しかしながら、これを使用することに踏み切ったのは多くのメリットがあると確信したからだ。

 

まず、容器に入れる作業がラップで包む場合よりも早くできる。ラップで包んだおにぎりの場合、おにぎりはショーケースの中に入れられ、従業員はお客さまに対面して、お客さまの好みのおにぎりをショーケースから取り出す。一方、カプセルに入れたおにぎりはショーケースに入れる必要がなく、またお客さまが好みのおにぎりをピックアップする時に、従業員は対面する必要がない。そこでラップに包んだおにぎりの店と比べると人件費は著しく削減できる。「ぼんたぼんた」の月商1000万円を販売する店でも従業員が1人でレジ対応している。

おにぎりがカプセルに入れられていることでお客さまはおにぎりのチョイスを容易にできる。サイドや味噌汁をつけてイートインも可能だ

 

さらに、おにぎり業態には特有のものがある。それは、購入する人のほとんどが朝の通勤や通学の人たちで占められ、14時までに全体売上の7割ほどを売り上げる「日中のビジネス」だ。そこで、従業員のシフトは朝方になる。立地もいいので通勤がしやすい。また人材採用も高校生から中高年の男女問わずとバラエティ豊富に雇用できる。働き方としてはとてもユニークだ。

 

また、同社ではおにぎりのデリバリーでも実績を上げている。取引先は、テレビ局、出版社、一般企業、学校などだ。

デリバリーを手掛けたきっかけは、1号店の護国寺の店の売上が落ち着いてきてから、いわば苦肉の策でおにぎりの販売先を探すようになった。この努力によって、店舗売上は250万円であったが、ほぼ同じ売上をデリバリーで売り上げることができるようになった。今はそれにプラスしてネットで注文を受けて、注文したところが取りに来るという形が定着するようになった。デリバリーの売上は会社全体の2割程度となっている。

「一等米」を使用しているほか、具材が大きいことも差別化のポイント

日本で培ったノウハウを海外で展開する

ティーエッセンスは現在、ラーメン、焼き鳥、寿司など20業態45店舗となっているが、この業容の多様さは石塚氏のフットワークの良さに起因する。

石塚氏が飲食ビジネスで基軸としているのは、「人に左右されない業態をつくる」ことだ。つまり、「良い物件を確保し、どのような人物が店長をしても売上に大きなブレがない業態をつくる」――このようなコンセプトによって現在の業容となった。

このほか、他社と「コラボ出店」を行っている。これは、ティーエッセンスが物件を見つけて、店の企画を考え、運営はコラボのパートナー企業が担当するというものだ。

「コラボ出店」の一例、渋谷スクランブルスクエア13階の「天ぷら 天寅」

 

石塚氏は、これまで国内で培った飲食ビジネスのノウハウを持って海外展開を目指している。「ご飯」「てんぷら」といったコンテンツは海外に通じるものだ。

海外は現状、シンガポール、マレーシアで展開しているが、これも同社が得意としている「コラボ出店」によるものだ。これからは、鉄板としゃぶしゃぶを展開していきたいと述べる。

将来的には海外にリゾート開発を行うことが夢だという。

2年以内に形をつくり、3~4年後には実際に運営する計画だ。

 

日本ではターミナルなどの超一等地を確保して、これをライセンスで営業してもらう。パートナーと一緒に企画をつくり、運営を行ってもらう。このように「コラボ出店」でビジネスを開拓していきたいとしている。パートナーは、飲食業を行っているところというより、IT企業など、新規事業として飲食業に取り組もうとしているところを想定している。

 

さて、同社ではこの度の緊急事態宣言によって各店舗の営業時間変更を余儀なくされている。しかしながら、石塚氏が起業の際に志した「飲食業をロジカルなビジネス変えていく」という思いは画期的なおにぎり業態を育て上げ、多様な立地や利用動機に適したビジネスを展開してきた。だからこそ、アフター・コロナでは新しい飲食業の在り方を披露してくれることであろう。

店舗情報

店舗名 ぼんたぼんた Echika 池袋店
エリア 池袋

運営企業情報

企業名 株式会社ティーエッセンス
URL bontabonta.jp/store/

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