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  3. 「魚好き」の集団で「魚料理」の自社ブランドを磨く

今回登場していただく山本怜氏の店を筆者はこれまで何度か訪ねたことがあるが、山本氏が造る刺身はとてもおいしいと思っている。さらに、料理にマッチする酒のお薦めが加わると期待感が高まり楽しくなる。このような技を持つ山本氏は、和食料理店で修業してきたものと思っていた。そして、山本氏が新たに「虎ノ門うなり」をオープンしたことを聞きつけ同店を訪ねた。山本氏が代表を務める株式会社FF.aにとって4店目となる店だ。

そこで、「おいしいお刺身を造る技はどこで修業したものか」と尋ねたところ、山本氏は、「いわゆる修業というものはしたことがなくて、料理人の横にいてその仕事ぶりを覚えた」という。「好きこそものの上手なれ」ということか、「天才は自ずと開花する」という感じだろうか。

季節感を抱かせるお通しでいただくいなり寿司も絶品だ

料理人の隣りについて魚料理を習得する

山本氏は1981年5月生まれ、埼玉県久喜市出身。山本氏にとっておいしい刺身を造る飲食業経営者の原点となったのは、高校1年生から3年間、地元の鮮魚店でアルバイトをしたこと。ここで店主が魚をさばく姿に憧れ、魚を扱うことがとても好きになった。

株式会社FF.a代表取締役の山本怜氏

大学に進んでから客単価5000円の居酒屋でアルバイトをした。担当したのはキッチンの板場で、常に料理人の近くにいた。そこで、料理人の手際のよい魚のおろし方、刺し身の盛付け方を見ていて、魚料理の技術を習得していった。このような環境の中で、山本氏は料理の世界の多くのことを学んでいった。
同店で飲食業に魅入られた山本氏は、飲食業で生きていくことを志すようになった。

そして、埼玉県の南部で店舗展開をする外食企業に入社した。同社の社風は「入社したら店長を目指す」というもので、山本氏は入社3年で店長に就任した。店長としての力量が認められて、ワインバルなど新業態の店長を歴任した。こうして同社には10年間在籍した。

同社は、閉鎖することになり、先輩の伝手で新宿、渋谷、池袋といった大きなターミナルで飲食業を展開する会社に入社してキッチンを担当した。同社の店は坪家賃6万円クラスの物件で商売をしていることから、原材料費のシビアなコントロールを学ぶことができた。
しかしながら、その会社も閉鎖することになった。

これをきっかけに山本氏は飲食業で独立することを意識するようになった。そのうち飲食店の業務委託をしてくれる人を探しているという話を紹介され、その店を引き受けることになった。2014年1月のことである。ここから、山本氏の飲食業経営者の道が始まった。

自社ブランドを二つ設けてコンセプトを打ち出す

ここを端緒に山本氏は業容を拡大し、自社ブランドを立ち上げて展開をしていく。その最初の店は「潮音」(しおん)、2016年4月にオープンした。8坪14席と小さい店だが、貝とぬる燗にこだわるという個性が際立っていた。この業態のアイディアは、ある時同じ「ぬる燗」でも絶妙な温度差が料理を引き立てることに感動したことから生まれたという。

「同じ日本酒でも温度帯によって味が全く異なります。日本酒を種類で楽しんでいただくこともさることながら、温度帯で楽しんでいただくことも新しい提案となると思いました」

貝の売り方も同様。その日仕入れた貝を「刺身」「焼く」「蒸す」という食べ方の提案を行う。このような売り方の場合、お薦めのトークがとても重要になるが、山本氏の自信たっぷりのトークがお客様に信頼感をもたらしている。

秋葉原の「潮音」は貝の品揃えが豊富

 

仕入は自分から市場に行く。市場で「これぞ」と思って仕入れた魚を実際おろして食べてみて、おいしいと実感すると、お客様に提供することの喜びを感じるという。市場で魚の目利きをしている段階から、山本氏のおもてなしが始まっているということだ。潮音の客単価は5000円となっている。

自社ブランドの2店目は2017年4月「王子うなり」(15坪30席)。うなりとは「海鳴」の読み方である。海鮮料理をメインに打ち出して展開していこうと考えて、海にちなんだものとしてこの店名を考えたのだが、漢字で表記すると型ぐるしいイメージがあったためにひらがな表記にした。

自社ブランド3店目は「虎ノ門うなり」(16坪34席)。当初、業務委託で2017年10月より「山本魚吉商店」という店名ではじめた。そして1年後の2018年11月に譲受したことから、現在の店名に切り替えた。客単価3800円で推移している。
場所柄ランチのニーズは多いことから、ランチ営業もしている。11時30分から13時15分ラストオーダーとして、「アジフライ定食」900円、「海鮮丼」1000円の2本立てだが、ミニマムで50食を提供している。営業時間を刻んでいるのは従業員を気遣ってのことだ。きちんと休憩時間をとってもらうことによって、夜の営業につなげてほしいと考えている。

個人経営4店舗の集合体という雰囲気

FF.aは現状4店舗を運営していることから、仕入れのパワーも付いてきた。山本氏が朝市場に仕入れに出向き、仕入れをした後、配送業者に委託することによって、一括仕入れと各店配送を行っている。

現状、山本氏はもっぱら虎ノ門うなりで采配を振るっている。その他の3店は、これまで山本氏が採用し育て上げた人物が料理長兼店長となっている。
「店の料理や運営についてはそれぞれ本人に任せている」(山本氏)ということだが、それがまたそれぞれのモチベーションを高めていくのであろう。
虎ノ門以外の3店は、山本氏が逐一管理をしなくても、店舗責任者の心掛け一つで売上がつくられるということだ。今日のFF.a4店は、個人経営の集合体という雰囲気だ。

「魚は、ただ切って皿に並べるというだけではお客様に料理人の心が届きません。同じ食材であっても、お客様においしく食べてもらいたいと思ったらおいしくなるものです」
各店のメニューの組み立てはそれぞれの料理長に任せているが、FF.aでは商品づくりの方針が一貫している。基本は、刺し身を厚切りで提供すること。その理由は「おいしい刺身を上品に見せるのではなく、腹いっぱい食べてもらいたい」という山本氏の考え方に基づいている。
「当社の店は、ハードにお金をかけていません。その点食材に十分にお金をかけることができます。そこで、お客さまが普段食べてみたいと思っている魚料理のご馳走を、お値打ちを感じながら満足していただきたい」と山本氏は語る。

「従業員が皆魚好き」ということが個性を際立たせる

38歳を迎えたばかりの山本氏である。事業家としての展望は広がっている。果たして、これからどのように展開していこうと考えているのだろうか。

「チャレンジしたいのはまず鮮魚店。住宅街がありお勤めの人もいるといった商店街に店を構えたい。当社の料理人は魚を扱うことが好きなので、この鮮魚店では調理をしたものを販売したい。漁師さんから仕入れたものを店に運び、加工して販売するという一連の仕組みづくりに取り組み、高齢者の方が増えていくことから、宅配も含めて中食を手掛けていきたい」

飲食店の展開は、既存の「潮音」と「うなり」のブランドで展開していきたいとする。これまで二つのブランドで展開してきて、それぞれの方向性が見えてきたようだ。

秋葉原「潮音」の店内。各店の店長のアイディアでファンを培っている

フードサービス業は、人口動態や立地環境の変化を捉えて売り方を検討していく必要があるが、これからはよりその見極めが重要になる。その点FF.aという会社に一貫していることは「従業員は皆魚好き」ということだ。これをベースにして、これまで築いてきた居酒屋が、鮮魚や総菜の小売業や宅配へと展開していくことは、それぞれ「魚好き」という個性が際立っていて優位性を発揮するのではないだろう

店舗情報

店舗名 虎ノ門うなり
エリア 虎ノ門

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