沖縄でブレークして全国で大繁盛していると話題の「やっぱりステーキ」が6月17日東京にオープンした。場所は吉祥寺駅の西側、井之頭公園を目の前にした住宅街である。営業は11時からで、オープンしてからは行列が絶えない。店の内外とも目が覚めるようなオレンジ色で統一され、遠くからもよく目立ち記憶に残る。また、この色は食欲をかきたてる。

同店を経営するのは株式会社ディーズプランニング(本社/沖縄県那覇市、代表/義元大蔵)。1号店は2015年2月にオープン、沖縄・那覇で3坪6席の規模でスタートした。赤身肉のステーキ200gを1000円(スープ、サラダ、ご飯セット)で提供するというスタイルがたちまち大ヒットして月商280万円を売り上げた。2号店は20坪24席、日曜日定休、週6日、朝11時から翌朝7時まで営業し、夜に営業している人たちが仕事を終えて食べにきてくれるため朝6時に満席になることも。マックスで1日37回転という記録を持つ。週末には800人近いお客が訪れ、これで月商1800万円を売り上げた。このような繁盛伝説を持つ同チェーンは沖縄を中心に、全国の地方都市で店舗展開していく。現在は沖縄県内に24店舗、県外に27店舗。東京・吉祥寺店は51号店で直営となる(直営は14店)。

直営店は仙台、東京、名古屋、福岡と、主要な拠点都市に出店している。この中で店舗数が多いのは福岡で、直営1店舗を含めて7店舗となっている。

井の頭公園を目前とする吉祥寺の住宅街に出店

さまざまなトレードオフによって低価格を実現

「やっぱりステーキ」の一番の特徴は、スタンダードの2枚看板、「やっぱりステーキ」(ミスジ)150g(スープ、サラダ、ご飯セット)1000円(税込、以下同)、「赤身ステーキ」200g(同)1000円という分かりやすさと低価格であることだ。

「ステーキ」というと脂身がついたサーロインステーキを連想するが、「やっぱりステーキ」の場合はほとんどが赤身肉だ。これは18歳から27歳までアメリカで過ごした代表の義元大蔵氏が体験した当時の食文化体験がベースとなっている。アメリカのステーキは赤身肉で拳のようなサイコロ状になっていた。

義元氏はアメリカから沖縄に戻り、会社勤めをして、物流、広告代理店、卸売り、インターネットなどのさまざまな職場で営業畑を歩み、一方で飲食店のコンサルタントを行った。そこで、「やっぱりステーキ」の展開を始めるのだが、これらのさまざまな業種での体験が同店のプロデュースに有利に働いた。

「赤身ステーキ」200g1000円(税込)。肉は溶岩プレートにのせられ、お客が好みの焼き加減にして食べる

この低価格ステーキの分野は「いきなり!ステーキ」が先鞭をつけて「ファストステーキ」というトレンドをつくったが、「やっぱりステーキ」の場合は同店の顕著な低価格を維持し利益を上げるためにトレードオフを徹底的に行っている。

まず、お客は前会計を自動券売機で行う。従業員から誘導された席に座り、購入したチケットを渡し、ステーキが届くのを待つ。ステーキが届くまでに、セルフでスープ、サラダ、ご飯を盛り付ける。スープはコンソメで溶き卵が入ったもの。サラダはキャベツの千切りとマカロニサラダ、ご飯は白飯と雑穀米の2種類である。店側では、キッチンで肉の表面を焼き、熱した溶岩のプレートに肉をのせてお客に提供する。従業員はお金に触ることがなく、お客に肉を提供し、スープ、サラダ、ご飯の補充を管理し、クレンリネスに専念している。

牛肉の産地は、「やっぱりステーキ」という商品名の「ミスジ」はアメリカ産、他の肉はオーストラリア産だ。赤身はランプ肉を使用している。海外から部位ごとの固まりをチルドで仕入れ、各店に配送して店内で丁寧に手作業で筋取りした後に、ポーションごとに定量でカットしている。

 

ローコストオペレーションを徹底し価値を高める

「やっぱりステーキ」の経営数値はFLコストを65%にしている。一般的な60%より5%高い。内訳は原価率50%弱、人件費率は20%以下。大抵の店舗では、焼き場に1人、洗い場に1人、ホールに1人という体制、人件費率をうまくコントロールしている店は13%以下になっている。「各店舗のレイアウトがコンパクトにできているので働きやすくなっています。これが5人とか人数が増えると生産性が下がる」(義元氏)。コストダウンを支えるのは、居抜き物件に出店していること。物件の中にある設備機器で使えるものは再利用して、減価償却費を抑えて初期費用を低くしている。吉祥寺店の場合、エアコン、食洗器、一部の冷蔵庫などは再利用していて、設備機器の譲渡金額は90万円で済ませている。

精算は前金制で自動券売機で行い、従業員はお金に触ることはない

さらに、家賃比率を引き下げている。これは一般的に10%であるが5%にしている。基本的に商品力が際立っている業態であるから立地も超一等地である必要がない。吉祥寺店は住宅街の中にあり、表通りと比べると家賃は低い。テラス込みで27坪35席、現在は客席を絞って20~23席となっているが、平日で300人、土日で400人が来店している。

このような仕組みをつくったのは沖縄4号店である。同店は35坪50席で、エアコン、厨房機器の設備譲渡費用がゼロ円でそのまま使った。内装費用は15万円、壁をオレンジ色に塗り、サラダ、ご飯、スープのカウンターを作った。店をオープンした初月に1100万円を達成し、売上は伸び続けて1700万円に。4カ月もしないうちに投資回収を終えた。その後に出店した店の投資回収は早く、多くは2年程度で終えている。

スパイスを数多く用意して、お客が好みの味付けを行える
スープ、サラダ、ご飯の盛付はセルフで行う

地域住民にとって「オンリーワンの店」を目指す

このようにローコストオペレーションが際立つ「やっぱりステーキ」であるが、東京に出店した狙いはどこにあるのか。義元氏はこう語る。

「広告戦略的な意味合いがあります。これまで札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡と北から南まで網羅してきましたが、やはり日本の中心部に店があるべきではないかと考えていました。それが、今回吉祥寺に出店して、その話題がテレビで盛んに報道されるようになってから、全国の加盟店の売上がアップしました。一様にコロナ禍になる以前の7割8割に戻り、180%になったという例もあります」

では、家賃や人件費など東京のハードルの高さをどのように捉えているのだろうか。

「東京で高いものは家賃だけです。人件費に関しては人材が集まらない地方の方が高い場合も。東京は時給1100円ですが、地方では1200円、1300円という場所もあります。沖縄の場合は野菜が高い。『やっぱりステーキ』はこのようにハードルの高い地方で育ってきていますから、特段、東京が高いと思ったことはありません」

吉祥寺店でユニークな点は「ペット同伴可」であることだ。これは「地域密着」の姿勢を示していると捉えていいのではないか。

「当社の特徴は『地元の人』をターゲットにしていることです。東京では23区内の物件もたくさん見ましたが、これらの場所で地元に愛されるためにわれわれはどのようなことをすればいいか、ということを見出すことができなかった。それが、この物件の周辺をリサーチしている時に16~17時になるとワンちゃんと散歩する地域の人が多いことに気が付いた。そこで、店の入り口にペットの足を洗う場所を設けて、地域のオンリーワンになればいいじゃないかと考えました」

 

生産性の高い新しいFCフォーマットを画策中

東京出店の計画を進めてきた中で同地での多店舗展開も想定していたが、東京ではコロナ第二波が顕在していることから、これからは西日本エリアを検討していきたいという。

「地方には、『やっぱりステーキ』をやりたいという人がたくさんいます。しかし、当社はそもそも急速に拡大しようという発想を持っていないので、『必然性のある場所』に出店していきます」(義元氏)。必然性のある場所とは「お客様のニーズが高い場所」ということだ。

また「やっぱりステーキ」と並行して新業態の展開を画策している。同社の既存店では、唐揚げ専門店、居酒屋、沖縄そば店、そして沖縄そばの製麺所も営んでいるが、現在画策している業種・業態は「沖縄」をテーマにしたものではない。それは、ずばり「東京で、脱サラしてできる商売」である。「ステーキ」や「沖縄」ということにこだわるのではなく、生産性の高いFCのフォーマットをつくり込んでいこうとしている。それがどのような店となるか、実に画期的な業態として磨かれている「やっぱりステーキ」の「次」を見るのが大いに楽しみである。

代表の義元大蔵氏の狙いは「生産性の高いFCフォーマットを開発すること」

 

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店舗情報

店舗名 やっぱりステーキ 吉祥寺店
エリア 吉祥寺
URL https://yapparigroup.jp/

運営企業情報

企業名 株式会社ディーズプランニング
URL https://yapparigroup.jp /

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