知人から「大阪で行列のラーメン店が恵比寿にオープンした」と教えてもらい、8月上旬にその店「人類みな麺類 東京本店」を19時ごろに訪ねた。JR恵比寿駅から五差路方面へ徒歩約10分の路地裏に人だかりがあった。行列とは一つの列が延びていく状態を言うが、この人だかりは店の間口の幅の中で3層、4層のブロックになっている。おそらく近隣の住民から家の前に行列ができることを注意されて、独自に考えた行列のルールなのだろう。

「人類みな麺類」独特の行列のつくり方。店頭に並び方のルールが描かれている

 

修業に入ったラーメン店であらゆる業務を身に付ける

店の中に通されると、男性・女性とも20~30代の従業員がてきぱきと仕事をしている。受け答えもはきはきとしていて、完璧なクレンリネスの中でとても爽やかな気分になる。

店内の中央部に大きなディスプレーが置かれ、Mr.Childrenのコンサートを放映している。店内は清潔感とミスチルワールドに染まっている感覚だ。

 

ラーメンは3種類のみ、それぞれ900円(税別)。「原点」「micro」が醤油系で、「macro」が貝系のスープだ。筆者は日を変えて「原点」と「macro」を食べたが、淡いスープでトロトロのぶ厚いチャーシューの食感と旨味が共通していた。このチャーシューが同店のポイントなのだろう。

ラーメンは3種類で、どれもすっきりとして淡い味わいが共通している。ぶ厚いトロトロのチャーシューがポイント

 

同店を経営するのはUNCHI株式会社(本社/大阪市淀川区、代表/松村貴大)。1号店は2011年、梅田と新大阪の中間に位置する西中島にオープン。以来、ラーメン店6店舗、学生食堂2施設を展開している。

 

代表の松村貴大氏は1987年4月生まれ。10歳の当時から「将来ラーメン屋さんになるために大学を出たら本気で学ぼう」と思い描いていたという。

大学を卒業後、東大阪にある「金久右衛門(きんぐえもん)」という店で修業をした。きっかけは、松村氏がラーメン店を食べ歩いていた当時、営業時間が11時から15時までという短時間営業の同店に興味を抱いたことから。店には行列ができていて、グルメサイトでのランキングは大阪で上位にあった。ラーメンは鶏ガラ醤油系でシンプルなもの。

 

修業に入ってからしばらくして、同店はあるランキングで1位を獲得したことをきっかけにFCのオファーが続々と増え、松村氏は朝一番の仕込みから任されたほか、これらの立ち上げの補佐も担当するようになった。

 

あらゆるものを自ら手掛けて「あるべき姿」をつくる

2年間の修業を経て、学生時代のアルバイト仲間と二人で1号店を立ち上げた。15坪、カウンター14席、4人掛けテーブル一つ。子ども時代に「将来はラーメン屋さん」と決めて修業に入った店が大行列になったということで、「自分がつくるラーメン店は大行列になっているイメージしかわかなかった」という。

「オープンに向けて周到な準備をしたわけではないが」(松村氏)1号店は2カ月ほどして行列の店になった。「これ以上いじらない方がいいな」と感じたという。

 

1号店の店名は収まりがいいが、2号店は「くそオヤジ最後のひとふり」、3号店は「世界一暇なラーメン屋」という店名で、どこか投げやりなイメージがある。しかし「くそオヤジ最後のひとふり」は、さまざまな転職の経験がある人物に「転職はこれで最後」という意味を込めて店名をつけて店の責任者としている。オープンして2カ月ほど経て行列の店となった。

 

「世界一暇なラーメン屋」は中ノ島というオフィス街で、「すぐに店が変わる」というジンクスの物件を確保。そのイメージで店名をつけたのだが、オープン初日の1時間前に150人の行列ができた。この3号店のときには、大阪のラーメンファンにとって「今度オープンする店は西中島の『人類みな麺類』の店だ」という具合に知られるようになっていた。

 

店名はぶっきらぼうだが、店舗デザインはスマートにまとまっている。これも設計からレイアウトのすべてを松村氏が考えている。ラーメンも店づくりも従業員の育成も全て自己流であるのだが、完成度が高くまとまっている。松村氏は自ら「人に喜んでもらうことが好き」と語るが、だからこそ必要な作業に集中して、あるべき世界ができるのだろう。

店内は清掃が行き届き、接客もてきぱきとしていてQSCが高度に保たれている

出身校の学生食堂を運営、CKも設けて拠点をつくる

同社では、松村氏の母校である大阪学院大学で学生食堂を営んでいる。

きっかけは学園祭で毎年ラーメン店を出店していたこと。出店するたびにすごい行列になっていた。そこで大学側から声がかかった。施設の名前は「人類みな飯類」として、「プロフェッショナルがつくる一つの定食」をテーマにした。ご飯のかまどを専門の職人につくってもらい、お盆も木彫師につくってもらった。肉の業者は星付きのレストランに卸しているところ、野菜も栽培にこだわっている人にお願いした。

 

こうして「黒毛和牛定食」を800円という破格の親しみやすい価格に設定した。しかしながら、学生にとってこの価格は日常的なものではなく、またこれらのこだわりも伝わらず1年後にはラーメンを出す学食として定着した。

 

また、同じ敷地にある付属の高校が建て替えることになった。松村氏が学生食堂の企画書を提出したところ評価されて、その学生食堂も担当することになり設計段階から関わることになった。施設名は「人類みなcafé」、約250席の規模で、フードコートのようにパン専門店、丼専門店、うどん専門店を運営している。

 

さらに、同学園の構内に60坪のCK(セントラルキッチン)を構えていて、同社の大阪にある店舗の製麺、メンマ調理、野菜のカットをここで行っている。

 

新型コロナ禍でニューヨーク撤退、東京で地場を固める決意

恵比寿の店は東京進出に際して厳選した場所だ。東京進出には伏線がある。同社では今年の3月、念願のニューヨークにラーメン店を立て続けに2店舗をオープン。スープづくりにもこだわったのだが、豚肉由来を受け付けないとか甲殻類のアレルギーなど食の禁忌がさまざまあることを学んだ。そして、新型コロナ禍である。営業再開のめどが立たず、ニューヨークから撤退した。

 

4月に入り、東京進出を決意する。「東京では、ラーメンがなじんでいないようなカッコいい場所に出店しよう」と考えた。今、「人類みな麺類 東京本店」を検索すると恵比寿ではなく「代官山」と出て来ることもある。実際にオープンした当初は100人ほどの行列が代官山方面に伸びた。松村氏は、「恵比寿の店舗に代官山という地名が加わるのは一つの作戦だった」と語る。

 

これまでさまざまなラーメンをつくってきたが、「水が一番おいしく食べられるのではないか」という感覚に至ったという。さまざまな食材でこだわりのスープをつくってもニューヨークで経験したような食の禁忌もある。そこで浄水器にはこだわっている。

スープには鶏ガラを使用しているが、「一般的なラーメン店で使用する鶏ガラの30分の1程度」(松村氏)しか使用していない。東京本店の場合、200人前で鶏ガラを3~4個しか使用していない。これに出汁醤油で味を調えている。

 

東京本店は1階12坪、地下12坪で30席程度。行列は冒頭で述べたとおりの様相となっている。そして、すべてが行列のラーメン店だからこそ特有のノウハウが存在する。それは「客数の限界」である。取材をしたのは9月上旬、この当時は11時30分~21時30分の営業であったが、以前はランチとディナーの間にクローズタイムがあり、それを止めて通し営業にしても1日客数300人が限界であった。大阪・西中島の本店は11時~23時の12時間営業で500人が来店する。

 

東京多店化構想の後、再びアメリカへ

同社では2021年の夏までに東京で5店舗展開する構想を立てた。その第1弾は10月25日にオープンする「人類みな麺類 Red」。テーマはジャングルで、店内にTレックスのオブジェを置くなど、これまでのラーメン店にはない空間をつくる。ラーメンはぶ厚いトロトロのチャーシューを生かした担々麺が基調になるという。

このような形で、東京5店舗展開構想は、一店一店が同じ店ではなく、コンセプトと個性を明確にして展開していくという。

このほか、催事でのラーメン店出店や、既存店の立て直しなどラーメンに関わる事業を推進し、パートナーとネパールにも展開する。また東京での多店化構想が完了してから、再びアメリカに挑戦するという。

ひょうひょうとビジョンを語る松村氏であるが、その後にまたQSCが高度に整った店の空間に浸ると、松村氏が抱く「飲食店のあるべき姿」のレベルの高さを感じた。

ミスチルのコンサートツアーが放映されている。これが同店のラーメンと絶妙にマッチしている

店舗情報

店舗名 人類みな麺類 東京本店
エリア 恵比寿
URL http://www.jinrui-minamenrui.com/

運営企業情報

企業名 UNCHI株式会社
URL https://www.unchi-co.com/

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