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  3. 「お客さまファースト」を徹底し、AIにはできない〝ワインバル空間″を創造

株式会社シャルパンテ(本社/東京都千代田区、代表/藤森真)はワイン居酒屋「VINOSITY(ヴィノシティ)」を東京3店舗、名古屋1店舗と計4店舗、ワインショップを3店舗、さらにワインスクールも運営している。2010年を過ぎて続々とオープンした「ワインバル」のパイオニアという存在だ。創業は東京・神田で、ここから同業態を広げることができたのは、同社代表取締役藤森真氏の「お客さまファースト」というマインドにある。それは、丁寧で妥協のない店舗づくり、徹底したスタッフへの教育である。これらの中でも「接客」について藤森氏の考え方を伺った。

 

アルバイトやバーテンダーを経験して、接客の世界に魅入られる

――飲食店に携わることとなったきっかけを教えてください。

高校生時代にトム・クルーズの『カクテル』を見て、バーテンダーに何となく憧れるようになりました。19歳の頃からは、コンビニや大手牛丼チェーン店などでアルバイトをしました。その牛丼チェーン店ではアルバイトで店長も経験しました。当時は「経営者になりたい」と思っていた訳ではありませんが、いろいろな経験ができるだろうと店長をすることにしました。

専門学校を卒業後バーテンダーになりました。憧れていた職業でしたが、実際は厳しい世界でした。でも、当時はSNSとか情報ツールが進んでいなかったこともあり、対人関係がより濃密だったと思います。最初は一番ややこしいことを言っていたお客さまが後には一番の常連さんになってくれることもありました。そのような経験によって「接客」が持つ魅力にどんどんはまっていきました。

 

――接客のどのような点に魅力を感じたのですか。

自分が取った行動に対して、良い反応、悪い反応含めてすぐにレスポンスが得られることです。お金を頂きながら、「ありがとう」と言われる職業はなかなかありません。お医者さんや弁護士先生も「ありがとう」を頂くかもしれません。しかしながら、「また会いに来るね」と言って頂くことはないでしょう。そのような方に会いに来るときは前向きな理由でないことがほとんどですから。「ありがとう」「また会いに来るよ」「楽しかった」「幸せだった」なんて、そんな素敵な言葉を頂くことができる職業はなかなかありません。

 

お客さまの「おいしい」のためにバトンをつなげる

――接客に関して、大切にしていることはどのようなことですか。

私はスタッフに「1つの料理には3つのストーリーがある」という話を常に伝えています。「お皿の前」「上」「後」のストーリーの3つです。その3つのストーリーをつないでいって、リレーをしていくのです。もちろんゴールはお客さまの「おいしい」という言葉です。

 

「お皿の前」は、素材を作ってくれる生産者さんの担当です。そして、「お皿の上」のストーリーは実際に料理をつくる調理人の担当です。生産者さんからバトンを受け取り、作ってくれた素材を上手に活かして一番おいしい状態にするのです。

そして、接客スタッフはそのバトンをお客さまにつなぐ役割です。ただ料理名を言って提供するだけではバトンをつないだことにはなりません。「お皿の前」「上」のストーリーをしっかりと伝えて、最も良い状態で提供すること。そのためには、おいしく食べてもらうための価格設定や、温度調節、料理にあうドリンクをお薦めしたり、トークや照明で雰囲気づくりをすることも大切です。そして、みんなのゴール、かつ、最後となる「お皿の後」のストーリーにやっとつながります。それが、お客様からの「おいしい」「ありがとう」という言葉に現れるのです。

 

――「料理がリレーする」とはどういうことでしょうか。

お客さまの「おいしい」というゴールに向かって、生産者さんから料理人、そしてホールスタッフを通じてお客様へ料理というバトンを届ける過程がリレーのようだと感じます。 リレーにはテイクオーバーゾーンがあります。それは飲食の現場でもあるべきだと考えています。それは、例えば料理を作って「早く持っていけよ」という料理人がいます。でも、そこはテイクオーバーゾーンです。「ぎりぎり手前までいけるのに、どうしてそのゾーンの一番手前で止まっているのか」ということなのです。逆も然りです。手が空いているなら、お皿を出したり、盛り付けをしたりしてもいいはずです。リレーは同時に走っている瞬間があるはずなのに、止まってからバトンを渡そうとするのは、ゴールに向かった最適な動きとは決して言えません。

 

――それに関して、何か取り組みを行っていることはありますか。

当社ではホール担当も含めてもスタッフの全員がキッチンの作業を覚えます。マネージャー以上の社員はシェフの仕事もできます。逆にシェフがドリンクを運ぶこともあります。こういうことはお互いがテイクオーバーゾーンを上手に走っているということです。

飲食業界はAIに取って代わられるなんて言われていますが、「一歩踏み込んだ接客」をするとか、リレーのバトンをベストな状態で渡すといったことは、AIにはできない仕事だと思うのです。

株式会社シャルパンテ、代表取締役の藤森真氏

 

「予想もしなかった感動」を与える仕事はAIにできない

――AIにできない「一歩踏み込んだ接客」とはどのようなことですか。

ただ席に案内して、料理を出すだけならAIにもできます。しかしながら、接客の根本は対人であり、AIにできない要素が多々あるのです。調理は、0から1の創意工夫の部分には人間が必要です。それが積み重なった1から100の部分はロボットで出来るでしょう。実際にいくつかのファミリーレストランでも調理の自動化が進んでいます。でも、接客に関しては0から1も、1から100も人間が必要なのです。

何故かというと、AIにはお客さまが期待していない感動を与えることはできないからです。AIはお客さまが期待したことや疑問に感じたことにはきちんと返答できます。それじゃ物足りない。最高のゴールとは言えません。お客さまが期待もしていない、考えてもいなかったような対応をすることで感動は生まれるのです。

 

例えば、「バーニャカウダ」の由来をご存知ですか?当店のお皿を見れば分かる方もいると思うのですが、イタリア語でお風呂という意味なのです。野菜を温かいソースにつけて食べるため、それが野菜をお風呂に入れるようであるということが由来となっているそうです。たまに、お客さまでも「どうしてこの器なんですか?」と聞いてくる人がいるのですが、そういう人には「良いところに気付きましたね! バーニャカウダの語源を知っていますか?」と言うのです。そういうことをわざとらしくなく、伝えていきたい。検索したら出てくる時代だけれど、検索さえしない、でも知っていたら意気揚々と伝えられる豆知識であるようなことをお届けしたい。このような積み重ねによって感動が生まれるのです。

「バーニャカウダ」を入れる器は、その言葉の由来である「お風呂」をモチーフとしたものを使用している

 

――それらをスタッフ全員に徹底するために何かしていることはありますか。

毎週、社員もアルバイトも全員参加の勉強会を行っています。内容は、魚のさばき方から、食べ物の由来、食材の部位による味の違いまでさまざまです。新商品を出すときはそれについて学びます。みんなには飲食に関わること全てを知ってほしい。そうじゃないと、お客さまにとって最適な環境にはできません。例えば、「どうしてこのように切っているか」全てに理由があるのだから、それを説明できないと料理を提供するときに説得力がありません。

 

同じ内容で週に2回開催して、全員どちらかに参加してもらうようにしています。そして、その理解度を毎回確認するだけではなく、月初めの全社員ミーティングで確認します。スタッフは私が彼らに求めていることの水準が高いことは分かっています。私はそれができているし、良い店をつくっていくためにみんなにできてほしい。

 

――スタッフのマインドを維持し向上させていくためにどのようなことを行っていますか。

会社のクレドを毎年更新しています。毎年全体目標と各個人の目標を設定してもらうようにしています。これらの行動指針は私が以前から唱えていることですが、私自身も最初はできていませんでした。でも、それを心がけていれば、人間性として備わっていきます。

 

行動指針の一つに「理由のないことはしない。すべてに意味を持って行動する」というのがあります。例えば、スプーンの置き方一つとっても理由があります。出入りの際に邪魔にならないように窓側に置く。ソファ席に座る人の方が多いからそちらから取りやすいように置く。スプーンよりフォークの方が多く使われるからフォークを上に置く。それらの理由があってのこの置き方です。

 

当社のクレドには、「ワイン」というワードは出てきません。私たちにとってワインを売ることがゴールではないからです。

ワインを提供することがわれわれの仕事ですが、それはお客さまに楽しい時間を過ごしていただくためのツールであり表現にすぎません。お客さまにとって最適な行動をとるということはどのようなことなのかを毎年練り直しているのです。

 

常に「お客さまファースト」を心掛ける

――今後の展望を教えてください。

「VINOSITY(ヴィノシティ)」よりも客単価の低いカジュアルな新業態を考えています。「VINOSITY(ヴィノシティ)」の客単価は4000円ですが、スタンディングでワインが1杯300円程度、客単価2000~3000円となる業態で、軌道に乗ればFC展開していきたい。

この業態はきちんとお客さまの表情を捉えて満足度を推し量りながら展開していきます。店数ありきで出店していくのではなく、いつかの段階でお客さまから「〇店舗あるんだってね」と言っていただくことで十分なのです。

「VINOSITY(ヴィノシティ)」は、直営店で山手線の西側にも出店したい。それは、このエリアから神田・日本橋の当店にわざわざ来てくださっている方もいらっしゃって、こちらに出店すると喜んでいただけるのではと思っています。いずれにしても、常に「お客さまファースト」で取り組んでいきます。

店舗情報

店舗名 VINOSITY(ヴィノシティ)
エリア 日本橋

運営企業情報

企業名 株式会社シャルパンテ
URL http://charpente.jp/

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