エントランスから店内へのアプローチには特別感のあるデザインが施されている

去る8月10日、東京・お台場の商業施設、アクアシティお台場に「オイスターハウスお台場」がオープンした。テラス席(35坪・30席)を含めて111坪・150席と大箱で、店内は段差をつけてバーコーナーを設けるなど多様な空間を構成している。

同店を経営するのはotto(本社/東京都渋谷区、代表/八須玲香)。2008年12月に代表の八須(はちす)氏が創業した同社はこれまで23店舗展開してきたが、すべて10坪程度の規模、24店目となる同店は初の大箱である。アイキャッチの人物が八須氏である。

 

お台場開発は1990年代の後半より企業誘致や商業施設のオープンが続き、アクアシティお台場は2000年4月に開業。隣接するデックス東京ビーチは1996年7月より営業していて二つがそろうことでお台場の海に面した大きな商業・娯楽ゾーンを形成している。

 

ここの最大の魅力は、東京湾に面した大都市・東京の風景と海を隔てて対面していること。林立するビル群は、昼・夜ともに非日常的でダイナミックな光景。新橋から新交通ゆりかもめで15分ほどの距離にあるが、新橋の喧騒とは異なった観光地パノラマの様相となる。観光地としての客数は週末偏重型となっているが、若者のデートや家族連れなどで大いににぎわっている。

お台場の海を挟んだ大都市・東京の眺望は日中・夜ともにダイナミックに映える

“お台場地元のレストラン”として定着

八須氏がここでの出店を決断したのは、現在ここで営業している各店舗の数字を把握してのこと。「週末、平日ともに何度も足を運んでみて、その差が激しいことは大変だと思っていたが、何より週末にいらしているお客様の表情がとても楽しそうなことに感銘を受けた」と八須氏は語る。八須氏が率いるottoでは「飲食業をレジャーに」という目標を掲げていて、その布石となる存在として同店のこれからを期待している。

 

同社が展開する業種は多様だが、客単価の高さとレジャー性という点ではシャンパンがメインの「泡包 シャンパンマニア」と、かきの「オイスターハウス」が傑出している。そこで、お台場ではこの二つの業態を融合した形でオープンした。

 

看板商品となるかきは全国の産地から届くブランド生がきをはじめ、「ジェノベーゼ、レジャーノ」、「モッツァレラ、トマト」、「ヤンニョムソース」などのさまざまなトッピングやソースで焼き上げる同店オリジナルの焼きかきをラインアップ。また、かきをふんだんに使ったパスタ、炊き込みご飯、貝の出汁を利かせたクラムチャウダー。さらに、クワトロチーズコロッケのガーデンサラダ、ローストビーフ~グレイビーソース~などの多様なメニューをラインアップ。海と大都市・東京を一望にするテラス席では、かきやえび、ホタテのBBQを堪能できる「テラスBBQセット」4290円(税込)を用意しており、焼きかきの100分食べ放題も990円(税込)でプラスできる。

オーシャンビューのテラス席が充実していて、ここでのBBQが大きな魅力となる

これらで客単価はランチタイム1500~2000円、ディナータイム5000~7000円を想定している。

 

いざ開業して、お客の動向はリサーチしていた時と同様の傾向を見せている。初めて同店を利用するお客は「かきを食べたい」という動機から。オープンしてからは所得の高いお台場住民のマダムが女子会で利用するようになり、「飲み放題のご要望もいただくようになった」(八須氏)とのこと。同店は“お台場地元のレストラン”として定着しつつあるようだ。

 

八須氏は1985年5月生まれ、宮城県仙台市の出身。美容師を志して上京。20歳の時に飲食業で独立することを志した。雑誌で見たイタリアンバーに感銘を受け、同店を運営する会社の代表にSNSで「働かせてください」とメッセージを送り頼み込んだ。その後、同チェーンの店長を務めるなど飲食業の経験を積む。

店内は壁のデザインを変えるなどして変化に富んでいる

飲食店に対するお客の反応の速さが魅力

美容師がなぜ飲食業に転じたのか。八須氏はこう語る。

「それはリピーターさんからの支持のされ方。美容室の場合、良いサービスをお褒めいただいて再来店していただくのは2~3カ月後。飲食業の場合はもっと短く、気に入っていただくと初来店した翌日にいらしたり。いまの当社の店では、ランチに気に入ってくれてその日の夜に再び来店してくれるパターンもある。このような飲食業のお客様の反応の速さを魅力に感じた」

 

そして2008年12月、明大前に1・2階の2フロアで30坪の串カツ居酒屋を独立開業した。最初は転貸であったがその後名義を変更。その後、西永福、渋谷と店を変えていく。これらの創業当初の店は今はない。

 

八須氏の事業が大きく動いたのは、2014年7月にオープンした「姫路のれん街」のプロジェクトに参画したこと。それまで関西には縁がなかったが、姫路の街に親しみを感じ、基盤をつくるために、おでんと串カツ、ピッツァ、タイ料理、中華料理と展開していった。

 

その後、コロナ禍となる前に大阪で複数展開する飲食業をM&Aした。M&Aした会社には事業部長に相当する「統括」という存在があり、現状はその統括が大阪の事業を束ねている。店舗の業種を転換するなどして、大阪では8店舗を展開している。

 

従業員、お客との“近さ”を大切にする

M&Aのタイミングとどのように巡り合ってきたのだろうか。八須氏はこう語る。

「M&Aのお話は、メーカー様、また専門の仲介業者様よりお声掛けいただく。当社が運営店の仕事ぶりを見て、オーナー様は当社にお店を引き継いでほしいという。そして、どのような思いで会社を育ててきたのかということを伺う」

 

「大阪の会社をM&Aする前に同社の店を訪問した。この時店の従業員が私に素晴らしい接客をしてくれた。『こんなに素晴らしい従業員が、私の会社の従業員になってくれるんだ』と感激した」

 

この時、会社を設立して10年が経過。「この節目で素晴らしいノウハウと人脈を手に入れる」と考えてM&Aを決断した。そして、遮二無二に仕事に取り組んできて、今日の24店舗という事業が出来上がった。店舗は各店長に裁量権を与えて、それぞれの店長の手腕によって個性的で人間味に溢れる営業がなされている。

 

八須氏の会社は、このコロナ禍をどのように過ごしてきたのだろうか。八須氏はこう語る。

「弁当のテイクアウトやECサイトにも取り組んだ。このようなことをすべて当社と取り組んできて、当社にそのような能力を持つ人間がいることを再発見した。みな前向きに頑張ってくれたことが次に進む力となった」

 

20代そこそこの女子が独立起業してからの15年間には大きな荒波も経験したであろう。しかし、そこで育まれた八須氏の人間性にひかれて、大阪の経営者はM&Aの形で事業承継を委ね、また以前の会社の統括も、37歳の女性社長の下で新しい体制を束ねている。

10坪程度の営業ノウハウは充実していて、ほぼ新宿のれん街には3店舗出店している

八須氏へのインタビューは、代々木駅前にあるほぼ新宿のれん街の同社の店舗「ホンデポチャ」で行った。取材を終えて、筆者が八須氏と一緒に同じ場所にあって昼飲みでにぎわう同社の店「泡包  シャンパンマニア」を訪ねたところ、八須氏は従業員からすぐさま「〇〇様がいらしています」と声を掛けられた。八須氏はそのお客様に満面の笑みであいさつをしていた。このようなタイミングに遭遇して、経営者の八須氏は、従業員、お客様ともにとても近しい関係性を大切にしていることを感じた。

店舗情報

店舗名 オイスターハウスお台場
エリア お台場
URL https://tabelog.com/tokyo/A1313/A131306/13274994/

運営企業情報

企業名 株式会社otto
URL https://otto2008.com/

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