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  3. コミュニケーションが充実した日本酒専門繁盛チェーンを築く

株式会社クリエイティブプレイス(本社/東京都品川区、代表/中村雄斗)が展開している「日本酒原価酒蔵」では、入館料490円を支払うと約60種類ある日本酒を原価で飲むことができる。どれも100㎖のオリジナルのボトルに入れてあり、人気銘柄で言えば「獺祭」が283円となっている。日本酒のメニューブックは日本酒に関する「精米歩合」「用語」などの知識が詳しくまとめられ、日本酒に興味がある人であれば、訪問リストに入れておきたい店だ。

約60種類をラインアップされた日本酒をそれぞれ100㎖のボトルに入れて原価で提供する

この業態は2015年4月に新橋で立ち上ったものだが、筆者は翌年の3月に上野御徒町店を訪ねて同社社長の中村雄斗氏に取材をしたことがあった。その後同店が多店化していることに気付いて、今年の1月の上旬に新宿東口店を訪ねてみた。

 

同店に入ってすぐに感じたことは「空気感」が高ぶっていることであった。あいまいな言い方のようだが、従業員が発するポジティブな念のようなものが感じられた。

対応してくれた従業員は大きな目がキラキラとしたショートカットの女性だった。この店は日本酒専門店で、いろいろな種類を少量ずつ楽しんでもらうことが狙いであることを前置きして、筆者が日本酒選びに迷っていると、「私が好きなタイプは……」といろいろな種類を教えてくれた。同店は日本酒を売る飲食店であるが、それを従業員個々の人間力が店の魅力を引き立てている。ちなみに店舗数は現在東京と神奈川、埼玉に計22店舗、うちFCが10店舗となっている。

 

客単価は3500円を切っている。それだけリピーターが多いということだ。今リピーターが56%程度。この数は「アプリ」によって把握している。これには「入館料が100円引き」などの特典があるので、会員であれば入店すると必ず見せる。現在会員は18万人存在し、毎月1万人の勢いで増えているという。日本酒原価酒蔵はいかにしてこのような店になったのだろうか。

 

良い人材が責任者になることで、良い人材が集まる

同社社長の中村雄斗氏は、学生時代に歌舞伎町の居酒屋でアルバイトをしていて、同店の仲間3人と「将来一緒に事業を立ち上げよう」と話していた。その後、それぞれは別の仕事についていたのだが、再開して話したことは「飲食店をはじめよう」ということだった。

株式会社クリエイティブプレイス、代表取締役社長兼CEOの中村雄斗氏

会社を設立したのは2012年3月で、その後、和食の居酒屋を展開するようになった。今日のように日本酒にこだわる店を展開するようになったのは、入社してきた人物が「日本酒にこだわった店をやりたい」と申し出たことがきっかけである。

 

日本酒にこだわることによってよく繁盛するようになったが、そこで感じたことは「日本酒は高いもの」というイメージがあることだった。それを気軽に楽しんでもらおうと意識を傾注することによって現在の形が整うようになっていった。

日本酒リストにある銘柄と価格、解説の細かさに感動する

現在のスローガンは「日本酒って楽しいを世界へ!」。各店は連日ほとんどが予約で埋まっている。これまで積み重ねてきたソフトのノウハウは追随を許さない状況になっている。では、冒頭で述べたポジティブな従業員の対応はいかにして生まれたのだろうか。中村氏はこう語る。

 

「どうすれば皆が楽しく働くことができるのか。『従業員満足』というものを、どのように実現するか。KPI(重要業績評価指標)とどのように連動させるのか。このようなことに細かく取り組んできました」

 

このような取り組みによって、2016年あたりから会社に明らかに変化が見られてきた。同社が日本種に特化した業態にシフトする以前は、調理技術を必要とする和食居酒屋で、技術や経験に依存する体質があった。これらは従業員満足をはじめ店舗展開を妨げる要因であることに気付くようになった。

「飲食店とは技術や経験の前に、コミュニケーションを商売にしている」と考えた経営陣は、店や会社の中のコミュニケーションを円滑にすることに傾注した。具体的に述べると「仕事中に怒鳴るような人物は、飲食業にとってマイナスでしかない。一人のイライラが従業員に伝わって、それがお客さまに伝わっていく。だから店の空気感というものは良くも悪くもすごく大事」(中村氏)ということだ。

テーブルにはお客さまが快適に日本酒を楽しむ環境を整えている

 

そこで取り組んだのは「360度評価」。一人の社員がいろいろな社員から評価を受ける、というものだ。この評価制度を土台に求めるKPIと給与や役職を連動させることによって、技術や知識だけでは評価されない環境をつくった。

「こうして良い人材が店長や責任者になっていったことによって、良い人材がこの会社に入りたいと思うようになったと思う。これが従業員満足につながっていき、会社が変わり出したきっかけです」(中村氏)

 

アルバイトの前向きな改善提案を賞賛する

社内のコミュニケーションは「Talknote」を活用。ここで「コミュニケーションがよく取れている店の場合、アルバイトの投稿が活発です。営業時間外に店の改善提案をどんどん出してくる」(中村氏)という。店の売上を上げるということに自分たちがコミットしていることを実感しているから、楽しくてたまらないのだろう。同社の経営陣はこれらのような動向に対して同社のフォーラムなどで「賞賛」や「評価」をきちんと行うようにしている。

 

日本酒を売る店であるが、従業員に日本酒のテストは課していない。その代わりに月に一度充実した試飲会を行っている。「ここで自分が好きになった日本酒を探してね」と伝えるのだが、このような日本酒と巡り合うとお客さまに伝えたくなる。そこでお薦めして飲んで楽しいと感じたお客さまから褒められる。このような経験をすると、日本酒についてもっと勉強しようと意欲が湧いてくる。こうして、コミュニケーション能力は磨かれていくという。

 

企業活動としては、フォーラムの「NCL(日本酒原価酒蔵チャンピオンズリーグ)」、蔵元や、酒販店に協力を仰いだ「日本酒セミナー、試飲会」、「BBQ大会」、社員の家族をもてなす社員限定特別割引の「Thanks Family Dinner Ticket」、「蔵元訪問」、「蔵元と共同で商品開発」、「酒造り」などを行っている。日本酒の学ぶ機会が充実している。

 

店長評価は「短期目標」の達成を見える化

店長評価はすべて数字で見える化している。昨対の数値、原価や人件費が守られているか。提出物の遅れはないか――これらを毎月ランキングにして公開している。

これらの加点項目、原点項目は以下のような内容だ。

 

■加点項目

・予算達成率

・アプリアンケート

・アプリ/二日酔い防止取得率

・オススメフード販売単価

・360度評価

・週報/1on1

・FB獲得

・社員紹介/AS紹介/試飲会実施

 

■減点項目

・フード原価率23%オーバー

・目標労働時間オーバー

・衛生検査

・タイムカード打刻漏れ

・食材実費購入

・レジ金ずれ(金額/回数)

・期限切れ回数

 

項目の全ては短期的目標である。店長本人の意志と行動によって自在に変わるものだ。この中に「売上」を入れていないのは、立地に左右される要因があるからだ。中村氏はこう語る。

「ここでの点数が低いということは、『店長自身の努力が足りない』という見方ができます。このような場合、店長への指摘は『やれることを、やっていないじゃないか』という一言で済ませることができて、評価する側も楽です」

このような仕組みが出来上がる以前は、店長から「売上を上げるためにどうすればよいか」という質問を受けた時に、それに答えることが難しかったという。しかしながら、短期的な目標をつくり、それを着実にクリアしてくことによって、店の体質は強くなっていくことに気付いた。

 

ちなみに、社員の採用は中途採用を止めて新卒採用に切り替えた。2019年は年11人採用、2020年6人採用となっている。

店舗展開について尋ねたところ「影響力」という言葉が出てきた。中村氏は「店舗が存在する意義は、客数を追求すること」という。だから、同社がこだわるのは「コミュニケーション」であり「リピーター」なのである。「では店数は?」とあえて尋ねると、「立ち飲みの店を開発したりすると、一都三県に100店舗は可能ではないか」という。

 

このような同社の展望に加えて、フードサービス業の近未来についてこう述べた。

「居抜きで出店する時代は終わりに近づいていると感じています。かつては居抜きの店はコミュニケーションや提供商品を充実させることによって勝つことができました。業界の人間はこういうことに気付いてきて、皆コミュニケーションのレベルが高くなってきた。そうするとまたハードを重視する世界に戻っていくのではないか。そこでハード面で競うようになると投資回収のスピードの競争になる。バックグラウンドの仕組はチェーンストア理論でつくるが、表面は個店のようにする必要があるのではと考えています。」

フードメニューも従業員が日本酒に合うものをキチンと説明してお薦めする

 

結局「飲食店は人」ということか。この原稿を書いていて、新宿東口店で筆者に対応してくれたショートカットの女性従業員のことを思い出した。心地よいコミュニケーションの記憶は「また会いたい人」となるものだ。

店舗情報

店舗名 日本酒原価酒蔵
エリア 新橋
URL sake-genkabar.com/shop/shinbashi.html

運営企業情報

企業名 株式会社クリエイティブプレイス
URL sake-genkabar.com

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