「蔵出し味噌 麺場 壱歩」「Espresso D Works」「肉野菜炒め ベジ郎」「焼肉ホルモンたけ田」――ここに挙げたブランドはいずれも今日その業態力を発揮している。それぞれの看板商品は「味噌ラーメン」「パンケーキ」「野菜炒め」「焼き肉」、実に多彩だ。これらを短期間で立ち上げて同時に運営できるのはフランチャイズ加盟店ならではのメリットである。これらを運営しているのはmove(本社/東京都東久留米市)でアイキャッチの人物が同社代表の河井俊輔氏である。

独立して店舗展開をはじめた「麺場 壱歩」の入間店。豪快な外観がロードサイドでひときわ目を引く

ラーメン店の会社のニューヨーク要員となる

河井氏が飲食業のフランチャイジーになったきっかけは、アメリカで2年間の留学から戻って飲食分野の展示会を運営する会社に就職したこと。同社で開催したFCショーでトライ(現、トライ・インターナショナル)を担当したことから、同社の代表、田所史之氏の人間性に大きく引かれるようになった。2004年のことである。同社は前年に立ち上がり、みそラーメン専門店「麺場 田所商店」を展開、この時FCを立ち上げたばかりであった。河井氏は田所氏から「これからどんどん展開していきたいんだ、海外にも」と事業拡大意欲の情熱を浴びた。そして「田所商店」の法被(はっぴ)を着て、来場のお客に同チェーンへの加盟を呼びかけた。

 

河井氏は田所氏から誘われトライに入社する。それはニューヨーク出店の要員としてであった。早速、千葉・武石インターチェンジの店舗の立ち上げから運営を担当することに。ここで現場仕事に没頭する中で、ニューヨークに行くよりもこの仕事で独立したいと思うようになった。そこで田所氏に「田所商店」の加盟店として独立することを申し出た。なぜこの業態に注目するようになったのか、河井氏はこう語る。

入間店の店内。15時でもこのような人気ぶり。ファミリーの利用も多い

「当時加盟店は十数店舗ありましたが、各店舗とも売上が上がったり下がったりしない、季節変動もない。武石の店もオープン景気から落ちることがなかった。ラーメン店のお客は20代30代だと思っていたが、40代が多い。オープンしてしばらくして『あの人は先週も来ていた』という現象が起きていた。『これは強いぞ』と思い、この業態で事業を展開していこうと考えた」

 

そこで2011年に「田所商店」ののれん分けという形で「麺場 壱歩」を東久留米にオープンする。その後、武蔵村山、入間、所沢、東大和と展開していく。

「麺場 壱歩」の人気メニューの一つ「信州味噌 味噌漬け 炙りチャーシュー麺」1177円(税込)。味噌ラーメンの味噌は、信州、北海道、伊勢、九州麦から選ぶ

初の自社開発、自社ブランドに挑戦

2020年1月、西武線所沢駅から徒歩5分程度、所沢プロぺ商店街に65坪の物件が出た。路面の新築で家賃80万円。「ものすごく条件がいい」とここを確保して“横丁”を運営しようと考えた。施設内は焼き鳥、おでん、大衆酒場、オリエンタル系など8店舗で構成、これらのパースも出来上がった。

 

しかし、コロナ禍である。3月25日小池都知事が緊急記者会見で「感染爆発の重大局面」と述べてから、翌日横丁に出店を予定していた全店がキャンセルをした。ここで700万円程度を損失。しかしながら、この物件に縁を感じて“横丁”は諦めても別な商売で活路を切り拓こうと考えた。

「夜営業が駄目でも、昼のお客様はいらっしゃるだろう」ということで、初めて自社ブランドのカフェを立ち上げた。自家焙煎でおいしいコーヒーを出す。サンドイッチ、カレーといった軽食で地元のお客の憩いの場所、というコンセプトで2020年10月にオープンした。

 

この店は「居心地がいい」ということでたちまち評判を呼ぶ。550円のコーヒー一杯で5時間滞在しているという利用が普通となり、地元では「あの店、いつも込んでいるね」と思われていても、回転していないというのが実態だった。そこで「2時間制」を導入することに。するとお客はぱったりと来なくなった。そこで河井氏はこのような考えを巡らすようになった。

 

「私は自分でブランドを立ち上げるのではなく、誰かがつくったブランドで商売をして、それを磨き上げていくことが性に合っているのではないか」

 

バイタリティのある経営者と交流

ここで誰かのFacebookで、赤塚元気氏(DREAM ON代表取締役社長)がカフェのFC展開をはじめるという話題を投稿していたことを思い出した。「居酒屋のスーパースター、元気さんがカフェをやるとは、すごい店になっているだろう」と、早速茨城県鹿嶋市にオープンしたばかりの「Espresso D Works」を視察しに行く。この店は田舎街のロードサイドにある。しかしながら、高齢の夫婦が若者たちと同じようにパンケーキを食べている光景を見て感銘を受けた。この時に感じた、商品力、空間力、接客力をもって、この業態を所沢で営業したいと考えた。

 

すぐに赤塚氏にメールを送った。しかしながら、赤塚氏によると「まだFC募集はしていない」という。「お話だけでも」と河井氏は交渉するきっかけをつくり「Espresso D Works」の加盟店になることができた。自社ブランドのカフェを営んでいる65坪の物件にオープンすることを想定していたが、先に神奈川県鎌倉市の七里ガ浜での出店が決まった。相模湾を見渡す風光明媚な場所。2021年12月ここにオープンし、所沢店は2022年4月にオープンした。

埼玉・所沢プロぺ商店街にオープンした「Espresso D Works」は集合住宅に囲まれた一角にある

「Espresso D Works」をオープンしたことから、同店の野菜の仕入れ先であるフードサプライ代表取締役の竹川敦史との知己を得た。竹川氏はコロナ禍にあって、一般消費者に路上でまとまった量の野菜を購入していただくという「ドライブスルー八百屋」を考案したバイタリティのある経営者である。同社では野菜炒め専門店の「ベジ郎」を渋谷と池袋で直営店を展開していて、想定以上に好調だった。

 

河井氏は竹川氏と飲食を共にする機会があり、「ベジ郎」のFC展開について話をして大いに盛り上がった。竹川氏が「でも『ベジ郎』の最初の加盟店となる人は勇気がいるだろうな」と話したところ、河井氏はすかさず「うちにやらせてください」と申し出た。こうして「麺場 壱歩」東大和店を「ベジ郎」に切り替えた。2022年10月にオープン。同店は38坪、これまで10~20坪の規模で都心に展開してきた「ベジ郎」にとっては初の大箱、ロードサイド立地となる。「ベジ郎」がこれからの展開を見通す上で重要な役割を担うことになった。

 

さて、コロナ禍にありながら業績が安定していた業種がある。それは焼き肉。「短時間で店内の空気が入れ替わる」ことを標榜して安心・安全をアピール。調査機関が発表した消費者のアンケート調査結果である「コロナ禍が落ち着いてから真っ先に行きたい外食は焼き肉」という情報を打ち出したことも大いに受け入れられた。

 

中でもテーブル上にサワーのタップを取り付けて、お客が自由にサワーを飲めるようにした焼き肉店は大いに人気を博し出店が続いた。

 

このトレンド業態の一角をなす「焼き肉ホルモンたけ田」を展開するミナモト代表、細田源太氏とは埼玉県の経営者交流会で知己を得て、かねて情報交換をしていた。そこで「麺場 壱歩」所沢店をこの業態に切り替えることにして、2022年11月に「焼き肉ホルモンたけ田」所沢店をオープンした。これも同業態としては稀なロードサイド店。「ベジ郎」と同様、今後店舗展開をしていく上で重要な役割を担っている。

 

このコロナ禍にあって、moveでは業態再編を行い、4つの強いブランドで邁進するようになった。このようにブランドを開拓していく狙いについて河井氏はこう語る。

 

「それは創業者であるオーナーさんが大好きだ、ということ。田所さんも、元気さんも、竹川さんも、細田さんも。こういう関係性から商売の感動を分かち合っていきたい」

 

経営者同士がリスペクトしている環境にあって、それぞれの加盟店で働いている人にもそのような関係性が浸透していることであろう。それが醸し出す空気感がお客にとって「感じのいい店」として伝わっていく。

所沢の「Espresso D Works」は65坪の店内に段差を設けるなど工夫を凝らして飽きさせないデザイン

店舗情報

店舗名 麺場 壱歩
エリア 入間
URL https://move-move.co.jp/

運営企業情報

企業名 株式会社move
URL https://move-move.co.jp/

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