食のトレンドで「ガチ中華」がにぎわうようになった。これは日本人の味覚に迎合しない、中国本土のものと同じ中国料理のことである。これによってコロナ禍で中国に旅行ができなくても中国現地でグルメを楽しんでいるような気分に浸ることができる。

店名の読み方も日本に迎合せず漢字の通り、看板の色使いも中国現地そのまま

上野エリアはそんな「ガチ中華」が多いとされているが、2022年12月に上野広小路に「孫二娘潮汕牛肉火鍋」がオープン。「孫二娘」は「そんじじょう」、「潮汕」は「ちょうさん」と読む。上野エリアのガチ中華をよりディープにした。「潮汕料理」とは聞き慣れないが、それもそのはず同店は日本で初めて「潮汕料理」を扱っている飲食店なのである。

 

同店を経営するのはFANG DREAM COMPANY(本社/東京都中央区、代表/孫芳)。アイキャッチの人物が代表の孫氏である。

 

 

日本在住の中国人でたちまち満席

同店の看板メニュー「潮汕牛肉しゃぶしゃぶ(潮汕牛肉火鍋)」は牛骨を3時間煮込んで取ったスープにとうもろこし、大根、セロリ、クコの実が入り、部位ごとにスライスした牛肉をしゃぶしゃぶで食べる。店内にはさまざまな調味料や薬味を備えたコーナーがあり、お客は自分で好みにブレンドしてつけダレをつくる。

これまでブームの「火鍋」とは異なり、あっさりとした味わいが新しいトレンドを感じさせる

同店の従業員が教えてくれたおすすめのつけダレは「沙茶醤」(サーチャージャン)というもの。ピーナツバター、パクチー、ゴマを合わせたものだ。ほかに、ニンニク、しょう油、オイスターソース、パクチー、万能ネギ、タイ唐辛子、黒酢を合わせたタレも紹介してくれた。こんな具合に、タレの味わいは無限大につくることができる。

 

一緒に鍋に入れる特徴ある食べ物として「潮汕牛肉団子」が挙げられる。これは牛肉を棒で叩いてペースト状にして塩と牛脂だけでつくる。かむと弾むような食感が印象深い。

 

ほかにワタリガニや車エビなどの海鮮をしょう油・白酒(バイジュウ)・紹興酒・ニンニク・レモンなどに漬け込んだもの、魚の「ハタ蒸し」、「旬の野菜蒸し」など一品料理もそろっている。客単価は5000円程度。

潮汕料理は中国の南部、広東省東部に位置するエリアの料理のこと。中国料理で「鍋」と言えば「火鍋」に象徴される辛くてコクのあるスープのイメージがあるが、潮汕料理の鍋はあっさりとしている。これまでにない食味に新しさを感じる。

 

同店は「日本初の潮汕料理」とあって、それを聞きつけた日本在住の中国人からにわかに注目されるようになった。ランチ、ディナー帯ともに営業しているが、ディナー帯は完全に予約が必要となっている。最近ではガチ中華ファンの20代の日本人も増えてきた。新幹線を利用して同店を訪れる人もいる。

オリジナルメニューの一つ「潮汕牛肉団子」はかむとゴムボールのような食感が特徴

 

これからはやる中国料理を探し求めて

FANG DREAM COMPANY代表の孫氏は1983年11月生まれ、中国の河南省で飲食業を営む家庭で育つ。子どもの頃から日本のアニメやポップスなどに親しんで、2002年2月に留学生として来日し、以来日本での生活が大好きになった。

 

大学卒業後、本社が中国の日本にある会社に就職し、通訳・翻訳の仕事に従事していた。中国の実家での経験から「いずれは自分も飲食店を営むもの」と考えていて、2013年10月に現在の会社を設立、2014年1月に創業の店である中国料理の「銀座芳園」をオープンした。1号店を銀座にした理由は、海運会社に勤務していた当時に接待で銀座の飲食店を利用する機会が多かったから。そこで「人が集まる町の銀座は素晴らしい」と思うようになった。同店は広東料理で客単価は1万5000円程度と、銀座としては親しみやすい価格の店だ。料理長は、中国人の経営者のコミュニティで知ったホテルの料理長の紹介。この料理長はさまざまな業者とのつながりがあって、幸先よくスタート。テレビをはじめ、さまざまな媒体で紹介されるようになった。

「孫二娘潮汕牛肉火鍋」の店舗は2階と3階。基本的にグループ客に対応した客席構成で、3階は半個室になっている

2016年8月、2号店となる「銀座夜市」を同じ銀座にオープン。客単価5000円程度で居酒屋づかいもできる店。「銀座芳園」よりもカジュアルで利用パターンも豊富でこの店も大層繁盛するようになった。

 

孫氏はこのようなヒットを続ける中で「日本でこれからはやるカジュアルな中国料理はないか」と考えるようになった。そこで中国本土での食べ歩きを続けた。そして初めて潮汕エリアに赴き潮汕料理の「鍋」を食べた。「これは火鍋の次の新しい人気をつかむことができる」と確信。魚介類のメニューが多いことも日本で親しまれると考えた。そこで日本で広めようと準備をしていたらコロナ禍になってしまった。2020年春の話である。

 

しかし、コロナ禍となり孫氏は出店攻勢をかける。一時期消極的になったが、いい立地で家賃が低い物件を紹介されるチャンスに恵まれ、不動産業者の人が「頑張ってください」と背中を押してくれるようになった。

 

そこで2020年9月、銀座7丁目に「神戸牛炭火焼ステーキ 銀座 煌(ふぁん)」をオープンする。隠れ家的なレストランで客単価2万円あたり。ここから同社の店舗展開は加速していく。

 

「ガチ中華のファストフード」も開発

孫氏が東京・銀座で飲食店を繁盛させているという評判は中国でも知られるようになって、新しいチャンスが巡ってきた。

 

「火鍋」は中国でも人気を博すようになり本店が四川省にある「賢合庄」という店が大きく隆盛、世界7カ国に約1000店舗を構えるようになった。

 

そしてコロナ禍にあって、孫氏は同チェーンの本部から「日本で『賢合庄』を展開してほしい」とオファーを得た。同チェーンは中国のタレントなどが共同で起こした火鍋のブランドで店舗の内装や商品構成は若者向けのセンスにあふれている。2021年2月高田馬場にオープン、このエリアは中国人の留学生が多く、たちまち狙いどおりに中国人の若者に親しまれる繁盛店となった。

 

新規出店に際しては、中国人料理長のつてで中国人の料理人が集まってくる。このような人員の体制によって中国現地の店のような雰囲気が醸し出されてガチ中華をより魅力的にしていく。

 

そして、孫氏はこの間新しい業態をつくった。それは「乾杯500酒場」。卓上にレモンサワーとハイボールのタワーを設置して、どちらかを60分間550円(税込)で楽しむことができるというもの。フードのメインは焼き鳥だが、鮮魚や牛ステーキもある。この装置のある店は焼き肉・ホルモンの店が多いが、「乾杯500酒場」の登場でこのジャンルが多様化してきている。この業態は新橋、神田、船橋に出店した。

 

さらに「孫二娘」ブランドで麺をメインとしたファストフードの展開に着手、高田馬場と船橋に出店した。

 

こうして、孫氏のFANG DREAM COMPANYは2020年9月から2023年1月まで8店舗を新規出店。全体で10店舗となりビフォーコロナとは異なる新しい体制で事業に邁進している。

店舗情報

店舗名 孫二娘潮汕牛肉火鍋
エリア 上野
URL https://sunerniang-ueno.owst.jp

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