コロナ禍が落ち着いてきて都内の繁華街、全国の観光地はコロナ前のにぎわいが戻ってきた。東京・渋谷も同様、世界的に珍しいことなのであろうスクランブル交差点で一斉に人が行き交う光景を熱心に動画に収める外国人がたくさんいる。この光景を見ると「東京は国際的な観光地なんだな~」と思いを新たにする。

 

こんな渋谷の裏通りに2月20日に「タートル」という酒場がオープンした。場所は渋谷マークシティと並行する急な坂道の中腹で、明らかに目的来店の店である。井の頭線渋谷駅から徒歩1分と至便であるが「知る人ぞ知る」的な存在感がある。だから、店には同じようなテイストの人が集まっていて、和やかな空気感が漂っている。

 

千歳烏山で地元客から愛される

経営するのはplow。「耕す」という意味で、代表の久我耕輔氏(42)の名前から名付けられた。久我氏は東京都の出身、19歳で飲食業界に入った。その会社はエイジアキッチン、渋谷、三軒茶屋、そしてホノルルで飲食店を展開している。代表の吉崎英司氏は多店化志向ではなく店を磨き込んで育てていくタイプの経営者である。

 

久我氏は「吉崎さんから居酒屋のイロハを教わった」と語る。それは「礼儀」「人として」に始まり、チームづくり、お客様との向き合い方等々。中でも、当時学んだセンスの磨き方は久我さんが現在経営する飲食店に十二分に発揮されている。

 

前職の会社ではホノルルに店舗を構えていて、海外で商売をすることを身近に感じることができた。これに限らず社員旅行で海外に行く機会が多く、台湾、韓国、香港、タイ、ロサンゼルスと行く先々でさまざまに感銘を受けてセンスを磨いていった。

 

前職には14年間務めて2014年に独立開業した。場所は京王線千歳烏山駅から4分程度で22.5坪。「我―喰う(がーくう)」という店名は自身の「久我」からとったもの。魚介類をメインにしたメニュー構成で、地元客に愛されるようになった。コースメニューでは2.5時間、3時間の飲み放題をメインにしていて、お客本位の姿勢が表れている。客単価は4500円。

 

2号店も千歳烏山で駅から2分程度。店名は「酒場アカボシ」。大衆酒場の雰囲気でフードメニューもこれらに倣った。客単価は3000円。フードメニューのクオリティが高いことで知られ、また深夜営業をしていることから地元のお客がエリアを回遊して〆を楽しむという利用も定着している。

 

コロナ禍にあって「カラフル」に目覚める

千歳烏山で商売を始め、5年間がたった2019年の当時。会社の人材が育ってきていることを感じるようになってきた。また、新規出店を勧める人も現れるようになった。こうして出店の次のステージとして渋谷を意識するようになった。

 

久我氏はこう語る。

「千歳烏山での成功パターンは、うちで育った子が狙える市場です。そして、渋谷は私を飲食の世界で鍛えてくれた街で、自分の次のステージとして憧れていました。そして、渋谷には海外のお客様も来店して、このような勉強から海外での商売を視野に入れることができる」

 

そこで、渋谷への思いを熱くしていくのだが、コロナ禍に見舞われる。久我氏は従業員の雇用を守りながら、渋谷での物件を探した。心が折れそうな環境の中でも、心の中では「お客様には店の中で楽しい気分に浸り、明るい気分で帰っていただきたい」という思いを抱きながら店づくりの発想を練り込んでいった。そこで浮かんだキーワードが「カラフル」。ここから店のデザインやメニュー構成を組み立てていった。

店のコンセプト「カラフル」を彷彿とさせるテーブル席。店の中の至るところにストーリーがある

 

この店「タートル」の前に立ってまず目を引くことは、全面ガラス扉から見えるスタンド席とテーブル席を配したエリア。気候が暖かくなるとガラス扉を開けて開放感のあるテラス席になる。その内側にあるもう一つのガラス扉をくぐると、オープンキッチンのライブ感を楽しむことができる大きなカウンター席とテーブル席の構成。店の中にさまざまな空間が構成され、リピーターにとって気分や用途を変えた席を利用することができる。よく考えられた客席構成だ。

店の空間は3つのスタイルに分かれてリピーターを飽きさせることがない

 

アートによってストーリーを充実させる

フードメニューでは、日本料理の料理人である浅倉鼓太郎氏をフードアドバイザーとして迎えた。一品一品に特徴が練り込まれている。

 

「タートル」の推しのメニューを挙げると以下の通り。

 

「Karasumi-唐墨春雨」1320円(税込、以下同)

春雨にネギソースを和えてうっすらと緑色に彩り、たっぷりの唐墨を合わせた。お酒も進む。

「Lamb-生青椒肉絲」(3個)1320円

ラムユッケを生ピーマンに詰めたフレッシュな青椒肉絲(チンジャオロース)。

「よだれカンパチ」968円

麻辣ソースでピリ辛に仕上げたカンパチの刺し身。

「エビパントースト」858円

エビのすり身とガーリックを塗ってトーストした。既存店の「酒場アカボシ」で人気。

「焼きポテトサラダ」660円

これも「酒場アカボシ」で人気。シンプルなポテトサラダにチーズをのせて焼き上げたもの。

「石焼きフカヒレおこげ」2750円

香ばしいおこげに熱々のあんをかけて、フカヒレを使った一品。

フードメニューは既存の居酒屋メニューとは異なったオリジナリティが高いものをラインアップ

そしてユニークなのがグラスのイラスト。肩を露わにした女性が何かを語りかけているような雰囲気。このような絵柄が「酒場」の中にストーリーを生み出してくれる。これは新進気鋭のイラストレーター、AZUSA IIDA氏(32)が描いたもの。描くものは人物を主な対象として、実験的な表現方法によって独特の「AZUSA IIDAワールド」をつくり上げている。ちなみに従業員のTシャツにもAZUSA IIDA氏の作品が描かれている。このようなアートの要素が店の中に二つとない「タートルの世界観」をつくり上げている。

AZUSA IIDA氏のイラストが店の中に物語の要素を醸し出している

オーナーの久我氏はかねてAZUSA IIDA氏のファンで、彼女の作品を集めていた。共通の知人がいて会う機会を持ち「タートル」の構想を打ち明けたところ意気投合。個展と個展の合間で時間的余裕もあったことから「タートル」の中に作品を寄せることに快く応じてくれた。AZUSA IIDA氏は「渋谷の日常の中で、私の作品が人目に触れるということはとても楽しみだ」と言ってくれたという。

 

「タートル」を体験してみて「店づくりは一筋縄ではいかない」ということを改めて感じた。飲食店の利用を楽しむ顧客は経験値が著しく高くなっている。店舗設計、デザイン、調度品から、フードメニュー、ドリンクメニュー、そして接客の在り方等々。「タートル」はこのような感慨を新たにしてくれる。

店舗情報

店舗名 タートル
エリア 渋谷
URL https://www.hotpepper.jp/strJ003433533/?vos=evhpppg0007&pog=mt(b)ti(kwd-2026508425637)dv(c)cr(649499794472)fi()gi(149221652529)ci(17559560127)lc(1028825)ps()nw(g)&gclid=CjwKCAjw6vyiBhB_EiwAQJRopnGhSU-HvHKYLQsgUpRXwP41QUpQxTtKEvEFJsjnGcrmvtC6_sJGPxoCaOwQAvD_BwE&gclsrc=aw.ds

運営企業情報

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