2030年を達成期限として、持続可能な社会をつくることを目的に採択された国際目標のSDGs(持続可能な開発目標)。貧困や環境など、さまざまな問題の解決を目指し、計17個の目標が設定されています。この目標の中に、飲食業界の協力が必須なものがいくつかあります。今回はそのうち「目標2.飢餓をゼロに」に関して考えていきます。

 

「目標2.飢餓をゼロに」とは

目標2は「飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する」と定められており、全17の目標の中でも飲食業との関連性がとても強いものです。少し難しい文章ではありますが、世界中で飢餓をなくし、全ての人が栄養ある食事を十分にとれることを主な目的としています。

実は、2021年は東京で各国のリーダーが討論を行う東京栄養サミットが開催される予定です。本来は2020年の予定でしたが、新型コロナウイルスの流行に伴い2021年に延期されました。東京栄養サミットでは、SDGs達成に向けての栄養改善の仕組みについても議題となるようです。

 

UNICEFなどの国際機関が2020年に発表した「世界の食料安全保障と栄養の現状報告書」によると、世界中で約6億9000万人が飢餓状態にあると推定しています(2019年時点)。
その数は2014年以降増加傾向にあり、2019年までの5年間で約6000万人も増えているそうです。世界の人口に合わせて、飢餓も増加している現状を伺えます。また、飢餓状態ではないものの健康的な食事をとる余裕がない人は世界で30億人以上おり、大きな要因は栄養価の高い食品が高価だということです。もちろん、安価で栄養価の高い食品はありますが、高価なものが多く、経済的に余裕がない人にとっては十分な量を確保できない事情があるようです。

 

日本でも世界と同様、経済的な余裕のなさから健康的な食事を取れていない方がいます。厚生労働省が毎年公表している「国民健康・栄養調査報告」の令和元年版では、健康な食習慣の妨げとなっている設問に対して、約5%の人が経済的に余裕がないことを理由に挙げています。

「栄養改善」は世界共通のテーマで、SDGsでも関連する目標がいくつか定められています。中でも、目標2は強く影響を与えるテーマで、前回の記事で紹介した「目標1.貧困をなくそう」も関りが深い目標です。毎食、栄養バランスが良く、栄養価の高い食材・食事を取ることは両方の目標達成に密接に関わっているからです。前回は毎日の食事を取ることが難しい人・子どもへの具体的な支援活動として、子ども食堂やフードバンクを紹介しましたが、これらの取り組みは目標2の達成にも貢献してくれます。飲食店にとってもスタートしやすい取り組みです。

前回の記事はこちらSDGsへ飲食業界ができること-目標1.貧困をなくそう-

小さな取り組みから食品ロスを削減する

前述したように、世界には約6億9000万人が栄養不足の状態にあります。そんなに食料が不足しているのかと感じますが、実は地球上には、全人口が十分な栄養を取れるだけの食料があるそうです。

国際連合食糧農業機関(FAO)が2011年7月に行った調査の結果、世界で人が消費するために生産された食料の約3分の1(約13億トン)が廃棄されているということが分かりました。この10年間で改善されていることを望みますが、2021年1月時点で最新の調査結果は発表されていないため未知数です。ただ、日本では農林水産省と環境省が2017年までの毎年、食品ロスの推計データを公表していました。

 

農林水産省が2020年に発表した「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」によると、国内で年間612万トンの食品ロスが発生しており、これは日本人一人当たり1年で約48kg、毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てているのとほぼ同等の量になります(2017年時点)。この612万トンの内、約21%に当たる127万トンが外食産業からの廃棄です。一刻も早い対策が必要です。

 

飲食店がすぐにでも簡単にできる食品ロスの削減方法は、下記のようなものがあります。

①作り置きの量を減らす

注文から提供までのスピードを短縮できるため、作り置きをしている店舗も多いかとは思いますが、確実に使いきれる量のみに留めておきましょう。

②食べ残しの持ち帰りを提案する

食べ残しのあるお客様に持ち帰りを提案してみましょう。直接お客様にお伺いするのがはばかられる場合は、メニューや店内ポスターなどで持ち帰り用パックの用意がある旨を明記するという方法もあります。

③食材の再利用をする

デザートとして提供する生のフルーツの賞味期限が近い場合は、加熱して他のスイーツに使用するなど、食材を再利用する方法も検討しましょう。同一の食品を複数のメニューで使用できるように変更、または開発することで食材をより無駄なく活用できます。

 

①と③に関しては原価率低減も見込めるので、飲食店にとっては有益な方法です。

食品ロス削減の強い味方「フードシェアリングサービス」とは

食品ロスを防ぐ方法として、「フードシェアリングサービス」というものがあります。このサービスは、まだ食べられるのに廃棄予定の食品を消費者のニーズとマッチングさせて消費につなげます。予約のキャンセルが出た場合、煮崩れた魚など味や品質に問題はないけれど見た目から販売できなくなった商品、新メニューの試作品といった、さまざまな理由から廃棄する食品・料理をフードシェアリングサービスのアプリや掲示板、WEBサイトに通常よりも安価で掲載します。すると、それを見た消費者がアプリやサイトから予約購入し、店舗で受け取るという流れです。

 

前回の記事で取り上げたフードバンクと似ていますが、フードシェアリングサービスは利用者が直接飲食店を訪れて料理を受け取るため、配送費が不要です。安価で料理を提供するため、消費者にとってもメリットが高いサービスと言えます。飲食店にとっては食品ロスの削減になるだけでなく、廃棄予定のものを販売することでプラスの利益を生み出せます。加えて、店舗の認知度向上も期待できそうです。

食品ロスの削減は、すでに紹介したとおりSDGsのさまざまな目標に関連する取り組みです。目標達成と店舗利益をかなえる一石二鳥の取り組みなので、積極的に実施してはいかがでしょうか。

道を歩けばレストランやカフェなどの飲食店が並び、スーパーマーケットにはたくさんの食料品が販売されている日本では、「飢餓」や「栄養不足」と言われても、いまいちピンと来ない人が多いと思います。しかし、前述したように低所得世帯では栄養不足に苦しんでいる現状があります。地球上には全人口をまかなう十分な食料があるにもかかわらずです。食料を無駄なく全ての人々に行き渡らせてSDGsの目標2を達成するためにも、飲食業界には食品ロスの削減が求められています。作り置きを減らすといった誰もができる小さな取り組みや、フードシェアリングサービスで食品ロスを削減して、飲食業界から世界を元気にしましょう。

 

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