アイキャッチの人物は株式会社ポッカクリエイト代表取締役の上野修氏である。店舗運営に新しい試みを次々と展開している数々が注目に値する。

 

同社はDPEショップ(※)のFC展開を進めていた株式会社プラザクリエイト(当時)と飲料メーカーの株式会社ポッカコーポレーション(当時)の共同出資によって1994年10月に会社設立、同年11月愛知県名古屋市にカウンターサービスのコーヒーショップである「カフェ・ド・クリエ」1号店を出店した。

 

このスタイルのコーヒーショップは1980年4月よりドトールコーヒーショップが展開を始めたもので、テーブルサービスの喫茶店に対しコーヒーの価格は半分程度と低く、お客様が自分の席に商品を持っていくというトレードオフの業態。後にさまざまなチェーンが誕生するようになり今日では街の中で当然のように存在している。「カフェ・ド・クリエ」は2021年12月の段階で196店舗となっている。

 

(※)DPEショップとは写真の現像やプリント、焼き増しなどを行う店舗のこと。

 

ストーリーが豊富な“映える”メニュー

ポッカクリエイトの最大の特徴はその発信力である。『PR TIMES』では1週間を開けずにニュースをリリースしている。そのほとんどは、ドリンク、フード、スイーツの新作が出たといった商品に関すること。「カフェ・ド・クリエはいつも何かが新しい」ということだ。上野氏によると「新作はかつて年間120品目リリースしたこともあり、現在では75品目に減らしている」というが、商品はみな“映える”形で紹介され、ストーリーが存在している。同チェーンは「女性客約65%」ということだが、このような商品サイクルによる新しさがもたらしているのだろう。

 

例えば、コロナ禍で旅行を控えることが強いられていたさなか、2020年秋に「クリエで旅するin北海道」というフェアを開催、北海道の牛乳や夕張メロンなどの食材を使用したドリンク、スイーツ、フードなどあらゆるメニューで展開した。このノウハウを生かして2021年は10月に「クリエで旅するin九州&沖縄」を開催。福岡のブランドいちご「あまおう」を使用したラッシーがSNSで話題になった。また、観光客が減ったことで影響を受けている沖縄の菓子メーカーとともに1年がかりで商品化した「沖縄紅いものモンブランタルト」がヒット、これによって若い女性客を引き寄せた。

 

2020年11月からオンラインショップを開設して店内での外販とともに販売チャネルを開拓した。

キャンペーンメニューの新作がSNSで話題にのぼる。写真左はあまおうのラッシー、右はあまおうソースを添えたアイスティー

病院内での出店で利便性を広げる

メニューでは2021年から新しい試みを行っている。

まず、「からだハピネス」というキャッチで健康に配慮したメニューを訴求。野菜がメイン、発酵食品、植物性食品、新鮮な果物、糖質オフ麺、雑穀米などをラインアップすることで、目的来店をもたらしている。次に、「クリエのサブスク」。月額6000円(税込)で対象ドリンクを1日2杯まで飲める定額制サービス。これは月に20回以上利用しているヘビーユーザーが存在していることから発案されたことだ。

 

新業態としては、店内の居住性を高めた「メゾン・ド・ヴェール」を2013年4月東山動植物園(名古屋市千種区)に出店し、目的来店の動機を生み出した。現在は商業施設を中心に7店舗展開、女性関連の売り場のコーナーに出店しているセレオ国分寺店では女性客比率が80%となっている。

 

「カフェ・ド・クリエ」は病院内での出店ケースが多いということも特徴だ。総店舗のうち2割となる40店舗が病院内にある。この端緒となったのは2011年8月国立がん研究センター(東京都中央区)に出店したこと。同病院には全国の医療機関から医師や事務局などの医療従事者が研修に訪れることから、同病院での「カフェ・ド・クリエ」の利便性が評価されて、地元の病院のリニューアルのタイミングで導入されるパターンが多い。病院内では医療従事者や職員の利用が多く、常にメニューラインアップで新しさを発信していることがリフレッシュ効果をもたらしている。2021年4月には慶應義塾大学病院内に100席の店舗を構えて医療従事者や病院利用者の利便性を広げている。

 

“次世代型カフェ・ド・クリエ”を展開開始

さて、ハード面での話題が大きく二つ挙げられる。

まず、「カフェ・ド・クリエ グラン」の誕生。これは同社が“次世代型カフェ・ド・クリエ”と標榜しているもので、その1号店を167坪という同チェーン最大規模のサンシャイン通り店を改装し2020年11月にオープンした。

「カフェ・ド・クリエ グラン」は次世代型を標榜した目的来店のカフェ

この業態を発案した背景について、代表の上野氏はこう語る。

「規模が大きな店だが稼働率が6~7割という状態だった。それをもっと効率のよい客席構成にして特別感のあるメニュー構成を考えた」
改装に際して250席あった客席を210席に減らしたが、テーブル数を減らしていないことから、改装前以上のお客数を確保している。

客席空間はお客の利用目的をとらえて「仕事に打ち込めるワークエリア」「ゆったりとくつろげるラウンジエリア」「カジュアルに休憩できるカフェエリア」と3つのゾーンに分けた。店内は全面禁煙で喫煙ルームを2か所設置、Free Wi-Fi環境を整え、ワークエリアにはコンセントを増設している。BGMでは新しい試みとしてお客の利用状況をAIが判断して、その雰囲気にふさわしい音楽を自動選択している。

サンシャイン通り店の中に構成された「仕事に打ち込めるワークエリア」

 

ドリンクはプレミアムなものを提供、キッチンをオール電化にしてフードはオーブンを使用したものを多彩にし、スイーツはチルド品もラインアップしている。これらで客単価は「カフェ・ド・クリエ」に対し120%となっている。

 

「カフェ・ド・クリエ グラン」はサンシャイン通り店のほかに現在、クイーンズスクエア横浜店、渋谷桜丘スクエア店がある。

 

個室の「RemoteworkBOX」(リモートワークボックス)サービスを開始

さらに、2021年12月15日から店内で個室が利用できる「RemoteworkBOX」サービスを開始。Free Wi-Fi環境を一層充実させているほか、リモート会議など声を発することや、3密を避けたいという需要に応えている。オフィス街にある渋谷桜丘スクエア店と日比谷通り内幸町店で1室ずつスタート、これを全国12店舗に広げていく予定だ。

店内の個室の「RemoteworkBOX」は12店舗での導入を計画していて、今後の展開を検討する

「RemoteworkBOX」は「New Normal Acceleration~いつかの未来を、いつもの日々に」をコンセプトに掲げるピアズグループの2Links株式会社が展開している。利用客は「カフェ・ド・クリエ」のドリンクなど商品を購入することが必須で、利用料金は15分間125円、事前にスマホなどで日時を予約して利用することができる。今後は12店舗での稼働状況を見ながら設置店舗を検討していきたいとしている。

 

喫茶店の世界は、「純喫茶」から「カフェ」と呼ばれるようになってからより多様性を見せるようになっている。この点、ポッカクリエイトの試みはメニューから店舗づくりのさまざまな場面に新しい試みを推進することで、フードサービスの世界に新しい可能性を引き出している。

店舗情報

店舗名 カフェ・ド・クリエ
エリア 池袋
URL https://www.pokkacreate.co.jp/crie/index.html

運営企業情報

企業名 株式会社ポッカクリエイト
URL https://www.pokkacreate.co.jp/

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