アイキャッチの人物は「マグロと炉端 成る」の代表、宮﨑元成氏である。1991年5月生まれで、店は2021年3月にオープンした。30歳を目前にして起業を果たした。

 

同店は錦糸町駅の南側で徒歩7~8分の場所に位置する。その場所を伝えるときに「大きな病院の向かい側」「ラブホテル街の中」と両方の言い方ができるが、その通りで伝わりやすい。実際に店にたどり着くとのれんが大きく間口が広く、堂々とした店構えに感動する。店内の中心に炭焼き台が設けられて、それを取り囲むように客席を配している。炭焼き台がステージで客席がそれを取り囲むという感覚だ。

錦糸町の駅から徒歩7~8分、大きなのれんが存在感をアピール

父の背中を見て育ち飲食業の道へ

宮﨑氏が飲食業に親しむようになったのは、父が鮮魚の卸業を営んでいることがきっかけである。現在の店で独立する前は内山正宏氏が率いるMUGENに勤務していた。それは父が内山氏と交流があったことからの縁である。父は、内山氏が前職のてっぺんに勤務していた当時から交流をしていた。

 

宮﨑氏は学生時代より飲食業でアルバイトをしていて、父に「もっと厳しい環境で飲食の仕事を学びたい」と相談したところMUGENを紹介された。そこで大学3年生の時から同社でアルバイトを始めた。大学卒業後は2年間海外生活を体験、そしてMUGENに就職し、横浜、丸の内と主にビルの飲食フロアにある店舗を経験してきた。同社の海外事業で香港での勤務も経験した。

 

幼い頃から父の背中を見て育ってきたことから、将来は「経営者」になるものと思い込んでいた。「厳しい仕事」ということでMUGENを紹介されて飲食業で働いてきたが、それによって生産者とお客を結ぶ仕事を天職と感じるようになった。そして父に取引業者となってもらうことで親孝行をしたいと考えた。30歳までには独立しようと目標を定めて、コロナ禍であったがそれを実現した。

 

「地元を自分の力で盛り上げたい」

出店場所を錦糸町に定めたのは、宮﨑氏にとってこの街は「地元」という意識があったから。実家は南砂町(江東区)にあり、錦糸町は幼い頃から身近な繁華街であった。そこで地元を自分の力でもっと楽しい街にしたいと考えた。

 

店舗は路面で18坪40席、店内36席、テラスが4席。見事に正方形の物件である。この形は宮﨑氏自身のこだわりがあった。それは「どこに立っていても、お客様、スタッフとすべての人の表情が見えるから」ということだ。MUGENの「なかめのてっぺん」で食事をしているとお客に対する従業員の気付きに感銘を受けるが、そのような職場で学んだことを生かしたいと考えていた。

 

店づくりについては師匠であるMUGEN代表の内山氏の教えが大きく反映されている。コロナ禍のさなかにオープンしたことも内山氏から「どんな時代でも商売を起こす人間が存在する」と背中を押してもらった。宮﨑氏はこう語る。

 

「内山さんは空気を読む天才。仕事の処理のスピード、周りに対する提案がものすごく速い。そして常にお客様目線に立っている。お客様同士のつなげ方やお客様とのコミュニケーションをとることが秀逸。内山さんから『現場力』というものの大切さを学んだ」

 

従業員は社員3人、アルバイトの登録が15人程度。グランドオープンの前には店のことを理解して安心していただくために、真っ先に従業員の親御さんを招待した。

店内は炭焼き台が舞台で、客席がそれを取り囲むといったイメージ

 

メニューに表現される食材への愛情

マグロの壁画が店内のアクセントとなっている

メニューのメインとなる炉端について、宮﨑氏は「そもそも自分が大好きな飲食店の仕掛け」と語り、MUGENの「なかめのてっぺん」で学んだことを存分に生かしている。魚のほかに「信玄どりもも塩焼き」「厚切り牛タン」といった特徴のはっきりとした肉をラインアップしている。「どんこ椎茸」「赤茄子」などの野菜もあり。バラエティに富んでいる。

 

もう一つのメインとなるマグロについては「地元の人はマグロ好き」と真っ先につながったから。「名物マグロぶつてんこ盛り」、「本マグロの希少部位盛り合わせ」、「豪快‼骨付き中落ちトロたく」など1400円から1800円あたりに設定し、迫力のある“映える”盛り付けが特徴的だ。父が社長を務める会社はマグロの仕入れに強く、同社とのパイプが看板メニューに生かされている。

 

筆者は「豪快‼骨付き中落ちトロたく」を食べた。これは刺身用の肉を取った後のマグロの中骨を丸ごと出したもので、お客はそこに残っているマグロの肉をそぎ落とすという趣向。そぎ落とすものがスプーンではなく貝殻で、店側の魚介類に対する愛情と遊び心を感じた。同時にご飯と海苔、たくあんの細切りが添えてあり、中落ちを手巻きずしにして食べることができる。

 

アルコールについては「ヒトツブノムギサワー」(鹿児島・西酒造の麦焼酎「一粒の麦」を使用)、「ピンクサワー」(鹿児島・小正醸造の赤ワイン酵母を使用した芋焼酎「蔵の師魂」を使用)など、本格焼酎のソーダ割をあえて「サワー」とネーミングして親しみやい存在にした。グラスには知り合いに描いてもらったという魚介がモチーフのかわいいイラストがあしらわれていて、フードメニューも併せてSNSに投稿したくなる品ぞろえとなっている。実際に初めて来店するお客は「SNSで見た」というパターンがほとんどだ。思いがけなくユーチューバーが発信してくれた時には、それを「見た」という新規のお客がにわかに増えて、ユーチューバーの発信力を改めて感じたという。

 

客単価は4200円あたり。客層は地元の30代~50代のリピーターが主要で同店のクオリティの高さを納得しているようだ。

看板商品の「豪快‼骨付き中落ちトロたく」は中落ちを貝殻でそぎ落とすという趣向

 

「10人で100店舗」のグループを目指す

宮﨑氏にはMUGENの「内山イズム」というものが浸透している。コロナ禍で行ったエピソードとしてこのようなことが挙げられる。

 

「マグロと炉端 成る」の取引業者が、賞味期限切れが間近に迫ったそばを200食ほど保有していた。それを全品仕入れて低価格で店内で販売して賞味期限前に売り切った。

「このような考え方はMUGENで学んだことです。MUGENの企業理念は『すべての人の「幸せの力」に‼』ということ。こうすることによって業者様との信頼関係が深まり、われわれにも『売る力』が付いてくる。結果的にプラスのことしか生まれない。MUGENの教えに心から感謝しています」(宮﨑氏)

 

宮崎氏に「10年後どのようになっているか」を尋ねた。

 

「仕事としては、錦糸町という町が楽しくなっていること。会社は大きくしていくのではなく『経営者輩出企業』の存在感で、このような仲間たちとグループで活動したい。10人で100店舗といったイメージ。社内では給与や休暇制度を充実させて飲食業の社会的地位を高くしていきたい」

 

このように話す言葉の節々に「内山イズム」が感じられる。目標とする企業の在り方も具体的に存在していることから、その道にぶれることなくまい進していくことであろう。

店舗情報

店舗名 マグロと炉端 成る
エリア 錦糸町
URL https://maguro-robata-naru.com/

運営企業情報

URL https://maguro-robata-naru.com/

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