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  3. 西新宿の「店長」から、西新宿地元密着の「経営者」へ
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本連載の8月1日付で株式会社絶好調代表取締役の吉田将紀氏のことを紹介し、その中で同社では「業務委託制度」を行っていることを述べた。これは一般的には社員独立支援制度とされているもので、絶好調の場合は同社の社員で実績があり、建設的な姿勢を持つ人材をこの制度によって独立を支援している。絶好調が持っている物件を業務委託して毎月一定額を収めてもらうという仕組みで、社員の研修などは絶好調主催のものを合同で行っている。

今回紹介する株式会社國屋(本社/東京都新宿区、代表/國利翔)は絶好調の業務委託制度を活用している。現在業務委託店1店、直営店1店の計2店を経営している。同社代表の國利翔氏は1985年10月生まれで33歳、全身から誠実な人柄が伝わってくる。

株式会社國屋、代表取締役の國利翔氏

取材した日は同社の店舗の近くにある氏神様の熊野神社に従業員全員で参拝する日であった。これは毎月行っていることで、一カ月無事に営業ができたことに感謝を伝えている。そこで同社では「感謝参り」と呼んでいる。これは國利氏が絶好調に勤務していた当時に定例行事となっていたことで、それを國屋でも踏襲している。このように國利氏が今日飲食業に打ち込んでいることは、絶好調の吉田氏と出会ったことで決定づけられた。

人生を変えたてっぺん総店長吉田将紀氏との出会い

國利氏は山口県下関市の出身、家庭の事情で祖父母に育てられた。高校は青森市の青森山田高校に進み、全国大会出場常連のサッカー部に所属し、寮生活をしてサッカーに打ち込んだ。高校卒業後、実母が生活する神奈川県茅ケ崎市に赴き、横浜の大学に進学した。

大学4年生の時、東京・渋谷の「てっぺん女道場」で当時てっぺんの総店長を務めていた吉田氏と出会った。2007年6月のことであった。
國利氏は当時就職活動がうまくいかないなど悶々とした日々を過ごしていて、先輩が「元気をつけよう」と連れて行ってくれたのが同店であった。そこで店内をまとめ上げていた吉田氏のポジティブなオーラに國利氏は衝撃を受けた。
國利氏は吉田氏からこのように言われた。
「君は飲食業に向いている。今度独立するから一緒にやろう」

2007年11月東京・新宿の歌舞伎町に絶好調の創業店舗である「絶好調てっぺん」はオープンした。國利氏は「学生社員」という立場で入社して運営に参画した。筆者は、当時の初々しい立ち上げメンバーのことをよく覚えている。以来12年の歳月が流れたが、今や、それぞれが独立して飲食業の代表を務め、また絶好調の幹部として活躍している。

本のタイトル風に言うと、國利氏は「社会人として重要なことは全て絶好調から学んだ」という。

吉田氏から教えられた中でも鮮明に記憶にあることは、食事に誘われていった時に「箸の持ち方」を丁寧に教えてくれたことという。
「翔は箸の持ち方をちゃんと知っているか?」
「いやきちんとは知りません」
こんな具合に他愛のない会話から始まったのだが、この瞬間吉田氏に家族のような情愛を感じ取った。こうして吉田氏は、「商売とは何か」「売上の上げ方」ということ以上に、生きていく上で最も身近にあることを丁寧に教えてくれた。

國利氏は2011年7月に「絶好調てっぺん」の店長に就任した後、10月に総店長に就任。そして、4年後の2015年に独立することになる。この総店長時代に経験したことを國利氏はこのように語る。
「吉田さんのカリスマ性は圧倒的なものです。そこで、自分は吉田さんの思いを現場に落とし込み、現場の思いを社長に伝え、理念の浸透に努めました。吉田さんの思いを現場に分かりやすく伝えることに自信がありました」
そして、いつしか吉田氏流ではなく自分なりの表現をしたいと思うようになった。

そのチャンスは絶好調の会社の仕組みの中に存在した。同社では「店長プレゼン」という従業員が皆の前で建設的な主張を行う機会を設けていて、ここで優勝した人物が店長に就任するという仕組みをつくっていた。

立ち上げ店長の店で独立を果たし業績を伸ばす

そこで、2012年3月にプレゼンを行った國利氏は見事に優勝した。ここから國利氏の立ち上げ店長となる日々が始まる。
吉田氏より「西新宿に物件を探してくるように」と言い渡された國利氏は、自転車に乗りながらこの一帯の物件事情を調べて回った。
そして、西新宿の高層ビル群を目前とする現在の物件を見つけることができた。そこから、國利氏は自分が思い描いている店のイメージをデザイナー伝え、メニューをはじめとした店を構成するあらゆることを、吉田氏以下、料理人を含めて喧々諤々話し合い組み立てていった。店はスケルトンからつくり上げるという、会社が設立して日の浅い同社にとって大きなプロジェクトとなった。

そして、2012年8月、地下1階に「ろばた翔」がオープンする。20坪42席であるが、それよりもゆったりとした雰囲気と臨場感がある。店名には國利氏の名前が付いているが、「これから絶好調が世界に羽ばたく」という意味も込められた。

絶好調の「ろばた翔」は2012年8月にオープン。國利氏はここを業務委託に独立を果たした

店が軌道に乗るに従い、國利氏はこの店で独立したいという思いを募らせていった。
そして、「ろばた翔」がオープンして3年が経過したある日、國利氏は独立することを決意して、吉田氏に願い出た。「資金や物件など当てがあったわけではなかった」と國利氏は当時を語るが、吉田氏から「ろばた翔」を業務委託するという提案があった。

「ろばた翔」の特徴は、日本酒と「鮮魚の一本売り」である。これは一尾200~300g相当の魚を塩焼きか煮つけにするかというチョイスをお客様に選んでいただくとうものだ。こうして同店は客単価3800円で始まったが、現在は5000円で推移している。
独立する前の月商は800万円程度であったが、独立後は1000万円を超えるようになった。12月になると毎年1500万円を超えている。
「吉田さんにもよく言われることですが、自分のことになると頑張ることができる」と國利氏は語るが、独立した事業者ならでは奮闘・努力の証である。

直接店にやってくるお客様の満足を大切にする

やがて人材も育っていき、独立した2年後には2号店の必要性を感じるようになった。「ろばた翔」の人気は日増しに高まり、連日100人ほど入店をお断りするような状態も続いた。月間で3000人、実に1500万円相当のチャンスロスをしていたことになる。

2号店の「ろばた結」は今年の3月にオープンした。店名の「結」とは「ろばた翔」の店長を務めた國利氏の夫人の名前である。オーバーフローの続く店舗の真上というこれ以上のない立地である。

冒頭で紹介した通り、國利氏は自分が商売をしている地縁をとても大切にしている。「ろばた翔」の店長となってから町内の清掃活動に積極的に参加していたが、このような國利氏のことが知られるようになり、町内会との結び付きが深くなった。

これらの関係者から「ろばた結」となる物件の話をいただくようになる。それが去年の6月で、契約は12月に行った。物件は24坪、細長い物件である特徴を生かして、物件の縦の端から端までを長いカウンターで構成することを考えた。これが同店の特徴であるカウンターだけで約50席という客席構成を生み出した。

國利氏は、お客様が「ぶらり」と立ち寄るような雰囲気をつくりたかったという。そこで、電話番号を非公開にし、ホームページにも非公開にするなど、同店に直に立ちよるお客様のみで商いをしている。これらで1日約60人程度のお客様が定着している。

國屋にとっての2号店は、最初の店の真上にオープンすることができた

なぜ、同店は店のアピールを行わないのだろうか。國利氏はこう語る。
「こうすることによってお客様の数は増えるかもしれません。店のイメージとは、人間の初対面と一緒です。今は来ていただいている目の前にいるお客様に喜んでいただくオペレーションや魅力づくりに力を傾けることが重要だと考えています」

現状は客単価4000円で推移している。「ふらり」と来店するイメージであるが、実際のお客様は「ろばた結」の魅力をゆったりと楽しんでいる。

お通しを刺し身にして「魚」に対する自信が高まる

お通しは刺し身を提供している。「ろばた翔」は5種盛りで500円(税込、以下同)、「ろばた結」は3種盛りで300円としている。一方、グランドメニューには刺身を入れていない。お通しをこのようにすることによって店全体の料理の食材がフレッシュであることのイメージが浸透する。また、提供する鮮魚の量を推し量ることが可能になり、高い鮮度の刺し身を提供することができる。そして、さらに大きな副次効果があると國利氏は語る。

「一人前のお通しが刺し身5切れとすれば、5回包丁で切ることになります。1日お客様が100人であれば500回になる。1カ月30日となれば1万5000回になる。こうして刺し身を切る技術は日々向上し、魚の目利きが鍛えられていき、魚に対する自信が圧倒的なものになる。このお通しは自分が魚に対して自信がなかったところから始まったことですが、これを継続することによって従業員にとって良い効果をもたらしています。

「居酒屋」のおなじみのメニューが木札で掲載されている
テーブルの上に置かれたメニューはフォントがスマホと同じ程度になっている

 

二つの店が上下で隣り合わせになっていることから大きなメリットを享受している。それは特に人材の面、そして食材の面である。これらに過不足があると二つの店でサポートし合って解決している。

さて、國利氏は西新宿の居酒屋の店長から、西新宿の飲食業の経営者となった。この都会の飲食店街に地元密着を心がける情愛は深まっている。

「ここには高層ビルが立ち並んでいますが、町内会で交流を深めていくと西新宿は下町なのだと強く感じます。町の人たちはまさに兄弟で生まれる前から知り合いのような感覚。このような関係の中から西新宿を盛り上げていきたい」
そして、國利氏は町内のお神輿で責任ある役目をいただくようになったことを、眼を輝かせて実に誇らし気に語ってくれた。

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店舗情報

店舗名 ろばた結
エリア 西新宿

運営企業情報

企業名 株式会社國屋

業態別 カテゴリー

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