焼肉業態は強い。2001年と2003年に発生したBSE(牛海綿状脳症)で大きな影響を被ったが、それが解消してから市場は伸び続けている。また、この業態は地域密着型経営を行っている事例が多いのも特徴で、特定のエリアでドミナント展開をしているところが散見される。

 

食べ放題の大型店でロボット導入も試みる

たき航グループ(本社/横浜市西区、代表/滝航也・冒頭写真)は横浜エリアでドミナント展開している焼肉店を中心とした外食企業で現在直営17店舗、FC17店舗を展開している。同社が「こだわり」と掲げている特徴は大きく3つある。

 

まず、「食材への強いこだわり」。代表の滝氏自身が仕入れを担当し、ブランド牛の一頭買いを行ない、メーカーから各店舗が直接仕入れを行っている。これによって、和牛でメニューを構成しながら単品価格を700~1400円で品ぞろえしている。このワンランク上に「幻の和牛特上焼物」というシリーズを設けて1700円あたりで販売しているほか、貴重な部位のシャトーブリアンを4200円でラインアップするなど、利用動機の幅が広がるメリハリのあるメニュー構成を行っている。

タッチパネルで和牛に特化し、安定して仕入れていることをアピールしている

次に、「お客様への最高のおもてなし」。オーダーはほとんどタッチパネルで行うが、従業員が顧客に接する時間が少なくなる分、従業員は余裕のある対応を行って好感度を高めている。これが、高品質の肉をリーズナブルに食べることができた体験と相まって強烈に記憶に残る。

 

そして、「立地に適した店舗づくり」。同社の店舗は横浜の繁華街から住宅街などさまざまな立地で展開していて、接待や会食に適したように個室づくりでコースメニュー主体の店、ファミリー向けに掘りごたつやソファー席でドリンクバーのある店など、その立地の顧客に適した店づくりを行っている。例えば、横浜元町にある「元町de 焼肉DOURAKU」はMEGAドン・キホーテ港山下総本店の2階にあり、和牛A4以上のカルビを使用した食べ放題でスタンダードコース(120分間)の価格は2980円(税抜、以下同)、プレミアムコース(120分間)3980円をラインアップしている。ここでは配膳・運搬ロボットの実験も行い、その利便性の高さを確認したという。

単品メニューの価格設定が感動的にリーズナブルになっている

23歳から飲食業独立の道を歩む

滝氏は1970年6月生まれ、今宿(横浜市旭区)の出身。独立心が旺盛で21歳から大型トラックを扱い、会社からトラックを買い上げ、受注して仕事をこなすフリーランスのトラックドライバーを行っていた。同時にキックボクシングに親しみ、20歳で実戦デビューを果たしている。

 

飲食業との縁は、この格闘技のジムの会長と出会ったこと。会長はジムのほかに神奈川県大和市内にホルモン居酒屋を営んでいた。滝氏はトラックドライバーとは違う職種で25歳までに独立しようと考えていて、23歳の時に会長の店の手伝いを始めた。

 

しかしながら、その店は7坪と小型であったことから、滝氏はもっと大きな店で勉強をしようと決意し、ファミリーを対象にした焼肉の大型店で修業を始めた。ここで初めて包丁を握り、焼肉の職人としての道を歩むことになった。

 

そして、25歳となり飲食店で念願の独立を果たす。その店はジムの会長が所有していた店で、移転して拡張するということから同店を譲り受けた。月商130万円からスタートして、2年弱の間に300万円に達した。「当時の売上帳は今宝物にしている」と滝氏は語るが、この時の奮闘が次の成長をもたらしていく。

 

独立実質1号店で18坪1200万円を売る

大和市内の店舗規模では売上に限界があると感じていた滝氏は、新しい物件を探すようになり、星川(横浜市保土ヶ谷区)に18坪の店をオープンした。28歳、1999年のことである。月商は400万円でスタートし、その後1200万円の売上を継続している。客単価2500円~3000円である。この成功要因として、滝氏はファミリーをターゲットにしたことと語る。客単価を親しみやすいレベルにして、ソフトドリンクをフリードリンクにしたのが地元の顧客から大いに歓迎された。

 

星川の店がオープンして以来、出店はしばらく行わなかった。そして2005年に横浜駅西口に「ちからや」をオープンした。10坪の店だった。滝氏はこう語る。

「私が実質1号店の星川の店を繁盛させてからしばらく店を出すことができなかったのは、自分の仕事を他の従業員に任せることができなかったからです。人を育てることができなかったのですが、でも多店化をしたかった。『ちからや』は初めて当社の従業員に任せた店です。これが月商500万円を売りました。人に任せてこれほどの売上を達成できるんだと自信が付きました」

ホルモンは味付けのバラエティを豊富にしている

2008年2店舗、2010年1店舗、それ以降毎年2店舗新規出店するペースで進んできている。

今では同社の技術者を育てていく傍ら、多店化する体制が整っている。教育店舗はみなとみらい de 焼肉DOURAKU(70坪100席)、桜木町 de 焼肉DOURAKU(70坪100席)があり、また前述の元町の店は週末型となるが、この忙しくなる時間帯に店に入ってもらい、教育を施している。

 

2018年以降、出店ペースが上がった。これはFCを手掛けるようになったから。ある機会に大阪の経営者と知己を得た。この人物のほかに経営者同士の交流を通じてFC店舗は増えていった。

 

新規事業としてグランピングの構想を練る

たき航グループとしての店舗展開では、飲食店の他に貸別荘を事業化する構想が膨らんでいる。この内容の概略を述べると「無人化的な貸別荘」。貸別荘は無人で(管理人は存在する)、室内の冷蔵庫の中にはたき航グループが得意とする肉や野菜が十分に収納されている。近年Glamping(グランピング)の人気が著しく高まっているが、これはグラマラス(魅力的な)とキャンピングを掛け合わせた造語で、テントの設営や食事の準備などの煩わしさから旅行者を開放したレジャーである。会社の事業として、焼肉店を横展開していくのではなく焼肉店のノウハウを生かして時代の趨勢(すうせい)に乗った事業を展開するということは得策ではないか。

 

店舗展開についてはFCでこそ関西圏で広がっているが、直営では県をまたいでの出店は考えていない。以前、東京・中目黒に焼肉店を擁しているが、「自分の眼が行き届かない」という理由で譲渡した経緯がある。

貴重なメニューをラインアップしていることがリピーター獲得につながっている

同社が多店化するようになったきっかけは従業員を育て任せることで業績が上げられることを実感してからと述べたが、現在年間2店舗のペースで出店している理由は、新規店舗がオープンして同時に滝氏も店舗に入り、店のオペレーションが安定してから従業員に店を任せるという仕組みを作り上げ、それを遵守しているからである。

 

最新の直営店では、この6月中旬にJR大船駅の大型商業施設「GRAND SHIP」内に出店した(74坪94席)。地元の顧客からは、神奈川県下で育った外食企業として、大手企業が出店したということとは趣の異なった歓迎のされ方を受けることとなるであろう。

 

店舗情報

店舗名 元町de 焼肉DOURAKU
エリア 横浜
URL https://www.takikou-group.co.jp/

運営企業情報

企業名 株式会社たき航グループ
URL https://www.takikou-group.co.jp/

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