「ひとりでも多くの人を串カツで笑顔に!」を標榜する株式会社串カツ田中ホールディングス(以下串カツ田中HD、本社/東京都品川区、代表/貫啓二)では、2020年2月22日に株式会社みたのクリエイト(本社/沖縄県中城村、代表/田野治樹)とブランド譲渡契約を締結し、「鳥と卵の専門店 鳥玉」を展開することとなった。

 

そして、3月16日に株式会社セカンドアロー(本社/東京都品川区)を設立した。同社の代表に就任したのは串カツ田中HDで取締役IT戦略部長を務める大須賀伸博氏(冒頭写真)である。セカンドアローは「鳥玉」の本部となり、沖縄県以外での展開権を有する。沖縄県内での「鳥玉」は、みたのクリエイトが行うというものだ。この4月末現在で「鳥玉」は全国に8店舗、うち沖縄県外は3店舗となっている。

横浜市営地下鉄・センター北駅に隣接するモザイクモール港北・都筑阪急1階のフードコートに出店

居酒屋「串カツ田中」とは全く異なる食事業態

串カツ田中HDは串カツの居酒屋「串カツ田中」の単一業態で店舗展開を行ってきた(2021年4月末現在、285店舗)。そこで業態に多様性を作るために「串カツ田中」のブランドはそのままで、立ち飲みや郊外ロードサイド型といった店舗を展開してきた。

 

それが「鳥玉」に注目することになったのは、業態として「串カツ田中」と重なる部分がまったくないこと。「鳥玉」は居酒屋の「串カツ田中」と異なり食事が主体であること。また、沖縄のフードコートに出店する「PARCO CITY店」が月商1000万円をクリアしていてフードコートとの親和性が高いことから、串カツ田中HDが今後商業施設の立地を開拓していくことを想定する上で有望な業態であると判断したようだ。

 

串カツ田中HD代表の貫氏と、みたのクリエイト代表の田野氏はかねてより親交があったが、2019年の暮に貫氏が田野氏より「鳥玉」の存在を伺う機会があった。そこで興味をあつくするようになり、すぐに大須賀氏は副社長の田中洋江氏とともに沖縄の現地を訪問、3月の会社設立に至った。この間の動きは俊敏である。串カツ田中HDにとって「鳥玉」を有望な事業に育てていきたいという熱意が読み取れる。大須賀氏は、これまで「串カツ田中」の新業態を立ち上げて推進してきた人物である。

 

大須賀氏は、1990年9月生まれ、2011年5月に串カツ田中HD(当時ノート)に入社。以来、店舗マネジメントの才を発揮し、翌年に店長からスーパーバイザーに昇進、2015年12月執行役員に就任し、取締役営業本部長を務めた。現在は、セカンドアローの代表と串カツ田中HDの取締役IT戦略部長を兼任する。筆者はこれまで貫氏の記者会見や、同社の新しい試みを取材する機会があったが、そのたびに大須賀氏は貫氏の考え方を具体的に披露する役目として同席していた。同社営業部門の新しい試みを担っていく存在であろうと認識していた。

 

さて、筆者は今回のインタビューに備えて3月28日に横浜・都筑区の港北ニュータウン「モザイクモール」のフードコートにある「鳥玉」を訪ねた。

筆者にとって「鳥玉」を体験するのは今回が初めてではなく、2016年5月末に、みたのクリエイトが1号店をオープンしたばかりの沖縄本島の店を訪ねている。筆者は同席していた同社代表の田野氏に、「新事業の食材に鶏肉を使用するのはなぜか?」と尋ねたところ、田野氏は「世界の中で鶏肉は食の禁忌が最も少ないから」と語った。同社は東南アジア地区での展開に実績をつくっていた。また、今日唐揚げの店が続々とオープンしているが、5年前にこのような現象も直感的に感じ取っていたのであろう。

ショッピングセンターの周辺は、徒歩圏の住宅街になっていてテイクアウト需要も多い

 

フードコートに次ぐ店舗展開の構想

横浜の「鳥玉」のメニューや店舗の雰囲気は5年前の1号店とは全く異なっていた。5年前の店は「鶏肉と玉子料理の定食屋さん」といったイメージだったが、横浜の店はメニューが洗練され、売上をつくるチャンスが多様化していた。目立ったポイントを上げると、ガチャガチャのおもちゃ付きの「お子様セット」530円(税込、以下同)に加えて、「たまご屋さんのロールパンケーキ」750円や「平飼いたまごの濃厚プリン」460円といったテイクアウトや外販につながる商品もラインアップされていた。

 

中でも印象深いのは、“平飼い”を強調した「井上養鶏場の朝どれ新鮮たまご」をアピールしていることだ。この養鶏場は神奈川県相模原市にあり品質には定評がある。これを「鳥玉」のクオリティの象徴と位置付けて、2020年12月にオープンした「ららぽーと柏の葉店」(千葉県柏市)、2021年3月にオープンした「イオンモール新利府 南館店」(宮城県利府町)でも採用している。

神奈川県相模原市にある井上養鶏場の“平飼い卵”を「鳥玉」のクオリティの象徴として位置付けている

店舗展開について、これまでフードコートにこだわってきた理由について尋ねた。大須賀氏はこう語る。

 

「フードコートは『鳥玉』との相性がいい。客層は老若男女ファミリーでどこも共通しているが、女性客が7割近くを占めるようになった。当社のスタートはコロナ禍と重なったが、年商が200億円を超えるショッピングセンターであれば集客もさほど困らないのではと考え、商業施設に出店することを念頭にして物件を探していった」

 

今後の出店に際しては、郊外型ロードサイドも想定しているという。都心の場合は住宅街に寄った立地を検討している。食事だけではなく、メニューを増やしてカフェのような構成も考えられる。立地を含めて「鳥玉」の可能性は脈々と広がっていると言えるだろう。

 

アルバイトが中心となったマネジメントを想定

会社が立ち上がったばかりで、出店場所が、神奈川、千葉、宮城と広域に及んでいることについて、現場のマネジメントが大変ではないかと尋ねた。それに対して大須賀氏はこのように語った。

 

「トライアンドエラーを繰り返していますが、私は従来から正社員に依存する経営はしたくないと思っていました。飲食店のマネジメントは社員や店長を基点に考えられていますが、この体制は絶対に必要なのだろうか。アルバイトの中には優秀な人材が多いことから、情報を社員に集約させるのではなく、店に情報をしっかりと与えることで遠方に構えても店が自走できるような形を想定しています」

 

具体的なイメージは以下の通り。店舗の営業開始から営業終了まで社員がいる必要はないのではないか。1店舗に店長一人、副店長一人ではなく、3店舗に一人くらいのエリアマネージャーという働き方ができれば収益的に改善できるのではないか。――今、このような状態に向けた取り組みを行っているという。

 

そこで現在、アルバイト採用の面接をするときに、「当社ではアルバイトと正社員という分け隔てをしない」と伝えているという。現場のマネジメントはアルバイトが中心になるが、正社員を挟まないことによって情報のワンクッションがなくなり、全員に本部の意向が速く正確に行き渡ると考えている。大須賀氏はこう語る。

 

「セカンドアローのミッションは、純粋に『串カツ田中』と違うもう一つの軸をつくるということ。『鳥玉』がある程度出店できたら成功ということは考えていない。『串カツ田中』に次ぐチェーンモデルをしっかりとつくっていきます」

 

会社は立ち上がって丸一年を経たばかりである。商品、オペレーション、マネジメントというチェーン店づくりのあらゆる要素の可能性が広がっている。これまで串カツ田中HDの新しい取り組みを切り開いて来た大須賀氏にとって、新しい飲食業の基盤をつくることに大いにやりがいを感じていることであろう。

「鳥玉」はフードコートとの親和性が高く、主要な出店立地に位置付けている

 

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店舗情報

店舗名 鳥と卵の専門店 鳥玉
URL http://toritama.com/

運営企業情報

企業名 株式会社セカンドアロー
URL https://second-arrow.co.jp/