味の民芸フードサービス株式会社(本社/東京都立川市。以下、味の民芸FS)の代表、大西尚真氏(冒頭写真)とお話をさせていただいて、チェーンレストランの王道を感じた。そして、改めてQSCの大切さを認識した。

 

筆者は20代の時に、「チェーンレストランとはuniformity(=均一)」だと学んだ。全国どこでも同じ商品が同じ価格で提供されなければならない、ということだ。しかし、和風ファミリーレストランが登場して「季節感」が重要な要素として加わった。その試行錯誤が、チェーンレストランの全体を豊かにしていったと認識している。

 

昨年の秋ごろに筆者の友人が「味の民芸」の料理の画像をFacebookに投稿していたのがきっかけとなり、しばらくぶりに同店を訪ねたところ、クオリティの高さもさることながら、プライスコンシャスの高さを感じた。納得のお値打ち感ということである。

関東圏をメインに約50店舗を展開する「味の民芸」

 

季節メニューを充実させ、産地開拓に努める

この度、大西氏にお会いすることが決まってから北浦和の店舗を3、4回訪ねたが、コアな「味の民芸ファン」の存在を感じた。コロナ禍で時短営業を強いられている中で、休日には17時ぐらいからウエーティングができている。客層は中高年が多いが、子ども連れの若い家族もいる。

 

メニューでは「しらす」や「桜海老」がふんだんに盛り込まれた季節メニューが目に付く。これらが好評で売上の10%以上を示しているという。これもファンの期待値にきちんと応えている証であろう。

旬の食材をふんだんに使用し、得意とする麺を加えて彩りのある季節メニューを提供

その点、大西氏は産地開拓に努力を重ねてきたことを語る。志布志湾(宮崎県)の黒瀬ブリ、境港(鳥取県)の秋鮭、宇和島産(愛媛県)の鯛などなど、これまで取り組んできたブランド品を次々と挙げた。

季節メニューは45日サイクルで、年間8回導入している。そのうち2シーズンは新しい分野に取り組むことを課しているのだという。

 

季節メニューではないが、うなぎに戦略的に取り組んでいるという。鹿児島産のうなぎを一尾のせたうな重にうどん、酢の物などが付いた「うな重セット」は2980円(税別、以下同)とお値打ちである。これは原価率が45%となり、人気定番メニューとなっている。ちなみに全体では33%。お値打ち感の高さが全体に漂っている。

浜名湖ではなく鹿児島産にこだっているうなぎのメニュー

「『味の民芸』の主要なエリアは関東圏であるから、うなぎは浜名湖が近いのになぜ鹿児島産にこだわるのか」――このようにフードマイレージの議論が常につきまとうというが、覆面で食べ比べをすると鹿児島産に軍配が上がるのだという。

 

山梨県甲府市に店舗があることが縁で、2017年に同県笛吹市とのコラボメニューと題して、甲州富士桜ポークを使用した生姜焼きや、シャインマスカットのデザートをラインアップした。しかし、店舗を展開している岡山(周辺地域の店舗を含む)では近隣にシャインマスカットの産地があることから、そちらを使用したという。メニュー開発に地元密着の配慮が行き届いている。

 

長野・軽井沢のアウトレットに「びんむぎ」という小型のうどん専門店を出店する際に、地元産のアメーラトマトを使用した「トマトの黒酢酸辣うどん」950円を商品化したところヒット商品となり「味の民芸」でも定番化した。さらに「びんむぎ」は昨年7月千葉県印旛郡酒々井町のアウトレットに出店した。産地開拓の努力がヒット商品を生み、業態展開にも結び付いた。

軽井沢に出店した小型店舗で、地元産のアメーラトマトを使用した「黒酢の酸辣湯うどん」をつくったところヒット商品となった

大西氏が語る「味の民芸」が挑戦してきたことは、ことごとくがプラスの効果をもたらしている。

 

商品改革を重ねて生まれたプラスの循環

味の民芸FSは名古屋市に本拠を置くサガミチェーン株式会社(現株式会社サガミホールディングス、以下、サガミHD)の事業会社となっているが、元々日清食品グループの外食企業で、2014年1月にサガミHDの傘下となった。

 

当時大西氏は、サガミチェーン株式会社の常務執行役員を務めていて、2014年10月味の民芸FSの取締役副社長に就任した。以来、大西氏は商品の改革に力を入れた。

 

まず、味の民芸のアイデンティティであるうどんの小麦にこだわり、品質を向上させた。大西氏はこう語る。

「私はサガミで育ち、味の面でサガミはほかに負けてはいない、という自信を持っていました。そこで、サガミグループに入ったことのシナジーとは『どこにも負けない商品をつくること』だと確信していました」

 

次に、ランチメニューの改革を行った。ランチタイムの客数は多く、メニューのアイテム数が多かったために提供時間が長くなっていた。

大西氏は「ランチタイムに最も大切にしなければならないおもてなしとは『スピード』と『飽きさせないこと』」だと考えて、ランチタイムのメニュー数を絞った。グランドメニューをランチタイムから外し、ランチサービスメニューと季節メニューだけにした。こうしてランチタイムでは1000円を超えるメニューをなくした。

一方で、ディナータイムのメニューで和食を充実させた。そして、前述した通りの季節メニューの年間8回コンプリートと産地開拓に取り組んでいくのである。

 

それに伴って客単価が1040円から1140円へと上昇した。同時に客数も増えていった。現在はテイクアウトメニューが増えているが、それでも客単価は1340~1350円となっている。この著しい変化は「業態が変わった」と言っても過言ではない。サガミHD傘下になって以来、コロナ禍となるまで売上は上がり続けた。

 

大西氏は「現場の皆さんが頑張ってくれたおかげです」と謙虚に語るが、「品質の高い食材を扱うようになると、大切に扱ってくれるようになる」と付け加えた。季節メニューを導入する際にはパートタイマーを含めて試食会を行っているが、ここでの感動体験が店の中にプラスの循環をもたらしている。

 

コロナ禍で学び、新たに取り組んだ数々

大西氏はこう語る。

「コロナ禍となって『止血』をテーマに掲げました。そこでメニューアイテムを減らし、季節メニューを行う店、行わない店を設定しました。チェーンレストランは、全店が同じ売り方をするものではないという時代がやってくるのではないでしょうか。季節メニューは終売を覚悟しています。実際にお客様へのお薦めが巧みな従業員がいる店では毎日売切れです」

 

「お客様のことを大切に考えてご準備した商品が毎日すべて売り切れるということは、それだけ喜んでいただいているということ。すると、明日は2食増やそう、4食増やそうと、増えて行きます。つまり、現場の店長がそれだけ責任感を持って商売をしてくれているのです。このようなことはコロナ禍でわれわれが勉強したことです。現場が成長しました」

 

この度のコロナ禍で出店は停滞したが、これからは居抜きでの出店にこだわりたいとしている。その一方で、将来のあるべき店舗の姿として、省人化、機械化を考慮したパイロットショップもつくる意向だ。

 

デザートは単品としても存在感がある。こちらは「プレミアムいちごパフェ」1280円

2021年2月、東京都練馬区の平和台駅近くに宅配専門のサテライト店舗を出店した。きっかけは同エリアで営業していた「味の民芸」の大型店を昨年9月に閉店したこと。それに対して地元のロイヤルリピーターから本社宛てにたくさんの悲しみの声が届いたという。

 

そこで、イートインができなくても「味の民芸」の商品を届けようと、既存のテイクアウトメニューを提供する店をつくった。店舗はキッチンのみで、自転車2台、バイク2台を擁して自社便でデリバリーを行っている。既存直営店50店舗のうち、デリバリーを行っている店は45店舗、うち自社便は14店舗で行っている。これらのノウハウを充実させて、この業態を来期(2021年4月~2022年4月)は5店舗出店する計画だ。

 

大西氏はこれからの商品開発に意欲を燃やしている。「さらに目的来店につながる話題性のある商品を出していきたい」という。「糖質制限」をはじめとしてさまざまなプランを温めている。

 

「デザートが本当によく売れるようになりました。女性のお客様が定食を食べて、その後に食べていただくパターンが増えました。女性のメニュー開発担当者がデザートに取り組むことになった効果の表れです。おいしさにエンドレスはない。求め続けて行かなければなければなりません」

 

このように語る大西氏から、商品と人材を大切にする企業文化を感じた。

 

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店舗情報

店舗名 味の民芸
エリア 立川
URL http://www.ajino-mingei.co.jp/

運営企業情報

企業名 味の民芸フードサービス株式会社
URL https://www.sagami-holdings.co.jp/